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ハマり役だった“呉服屋の娘” 10年ぶりの新シリーズで“若手俳優を支える屋台骨”に…!新ドラマ『ちはやふる-めぐり-』

  • 2025.7.8

夏ドラマ『ちはやふる-めぐり-』に、実写映画『ちはやふる』の瑞沢高校のキャストが出演することが発表された。主人公たちが10年後にどのような成長を遂げているのかを見られるのは、それぞれのキャストがそれぞれの場所で芝居の技術を磨き、確固たる地位を築き上げているからに他ならない。なかでも、『ちはやふる-めぐり-』の主人公・藍沢めぐる(當真あみ)を支える大江奏の活躍と、奏を演じる上白石萌音の芝居に注目したい。

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(C)SANKEI

古典文学好きの少女が古文の先生に

原作、実写映画で、奏は主人公・綾瀬千早(広瀬すず)に誘われて、競技かるた部の設立メンバーとして入部することになる人物だ。競技かるたは初心者であったが、古典文学が何より好きで、実家が呉服屋であることから着物も好きな少女。和歌の知識が乏しい千早に、それぞれの和歌の意味を教えることもあった。好きなものを前にした時の勢いはすさまじく、穏やかな声で捲し立てるように喋る様子は、奏の魅力の一つでもある。

一方で、奏は誰よりも状況を俯瞰して見られる人物でもある。実写映画の中では真島太一(野村周平)から千早への恋心に誰よりも早く気づき、優しく見守っていた。また、太一に思いを寄せる花野菫(優希美青)に、寄り添う場面もあった。

上白石自身の持つ温和ながら強さもある雰囲気は、好きなものを前にした時の勢いと包み込むような優しさを持つ奏にぴったりでハマり役だったと言える。

そんな奏は、現在梅園高校の古文非常勤講師で、競技かるた部の顧問をしているようだ。原作では、全国にわずか7名しかいない最上位ランクのかるた読手である専任読手を夢に見つつ、実家の呉服屋を継ぐために進路に悩んでいた。ドラマでは非常勤講師として勤めていることからも、夢を諦めずに自分の道を突き進んでいるのかもしれない。

新世代俳優のサポート役に挑戦する上白石

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(C)SANKEI

第7回『東宝シンデレラオーディション』で審査員特別賞を受賞して、芸能界入りを果たした上白石。2016年に公開された『君の名は。』では、ヒロイン・宮水三葉の声優を務めて、注目を集めた。その後コンスタントに映画ドラマに出演し、中でも『恋はつづくよどこまでも』は、社会現象になるほどの人気っぷりだった。恋愛ドラマ枠としても名高いTBS火曜22時枠では、2度ヒロインを務めており、おっちょこちょいで不器用なキャラクターを真摯に演じてきた。

2021年には『カムカムエヴリバディ』のトリプルヒロインの一人として、朝ドラに初出演。時代に翻弄され、絶望しながらも周りを愛する健気な役柄を演じる上白石の、周囲で起きた出来事一つひとつに丁寧に反応する表情からは、戦前戦後の悲惨さが強く伝わってきた。作中、最も辛い経験をするヒロインであったが、だからこそ英語や和菓子、ジャズといった『カムカムエブリバディ』全編に通じる嗜好品とそこからつながる絆の尊さが際立っていた。

2022年からは舞台『千と千尋の神隠しSpirited Away』では、Wキャストで千尋役を務め、2024年には映画『夜明けのすべて』で、日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。幅広い作風と役柄で、物語の中心に立つ人物を力強く演じてきた。彼女の目線から物語を見つめたい、そう思わせる女優の一人だ。

『ちはやふる-めぐり-』では、競技かるた部の顧問として、生徒たちを導く役柄を務めることになる。展開に翻弄される役柄というより、葛藤し思い悩む生徒たちに手を差し伸べる役柄だ。元々、全体を俯瞰できる奏が、どのような大人に成長しているかを丁寧に表現してくれることだろう。キャスティングの面からも、若手俳優を支える屋台骨として存在していることが感じ取れる。主演として作品を背負ってきた上白石が、一歩引いた立場としてどんな存在感を見せるのか楽しみだ。


ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
X(旧Twitter):@k_ar0202