２０代の頃のヒロイン像とはまるで別人… 北川景子が新ドラマで見せた“新境地”

4月21日（月）22時から放送が始まった『あなたを奪ったその日から』。食品事故によって、3歳の女の子が亡くなったところから始まるヒューマンサスペンスだ。第1話は北川景子の子を失った故の悲しみが爆発した狂気に目が奪われた。

アレルギーによる食品事故が生んだ悲しみと憎しみ

この物語は、1年前の食品事故から始まる。北川景子が演じる主人公・中越紘海は娘・灯（石原朱馬）を育てながら、保育園の調理師として働いていた。幸せな灯の3歳の誕生日パーティー。しかし、そこで口にしたピザパンによって、灯はアナフィラキシーショックを起こして、亡くなってしまう。そのピザパンを購入したのは、近所の惣菜店だった。

紘海は、ピザパンのアレルギー情報をしっかりとチェックしていた。にもかかわらず原因不明の混入が起きたのだ。ピザパンを購入した惣菜店の社長・結城旭（大森南朋）は、会見で紘海の責任だとも取れる言葉を口にする。自分がピザパンを食べさせていなければ。紘海は絶望のどん底に突き落とされる。

事件から1年たち、紘海は職場では平気なフリをしていた。しかし、その心の中には結城への恨みがくすぶっていた。離婚して引っ越した先の家は空っぽ。無気力な表情で質素な食事を摂る紘海。くすぶった恨みは、結城の情報を集めることへの情熱へと変わる。

紘海は、結城が通っている料理教室を特定し、結城と接触。そこでも感情を逆なでするような言葉をぶつけられた紘海は、包丁を持って結城の自宅へ。しかし、そこに通行人が現れ、殺人の計画を断念。

紘海は、車で自宅に帰ろうとしたとき、結城の娘・萌子（倉田瑛茉）が車内にいることに気付く。萌子は、結城の家で一人でかくれんぼをして遊んでいたときに、外に停まっていた紘海の車に隠れていたのだ。思いがけず萌子を誘拐してしまった紘海。萌子を殺そうとするが、その幼い姿が灯と重なり、手を下せない。紘海は謝罪と共に、泣き崩れる。紘海は、萌子からの「もえのママ？」という言葉を受けて、偽の母親になることを選んだのだ。

別のフェーズへと進んだ女優・北川景子

北川景子と言えば、20代の頃は、『ブザー・ビート〜崖っぷちのヒーロー〜』や『謎解きはディナーのあとで』『HERO 第2シリーズ』でヒロインを演じた。まだ成長途中にある未熟で可愛らしいヒロインを数多く演じてきた。

30代になった北川は、代表作の一つ『家売るオンナ』で主演を務め、役柄の幅を一気に広げる。これまで演じてきた無邪気なヒロイン像とは真逆のカッコよく、きびきびと働く女性像も演じられることを世間に示した。その後は、2018年の大河ドラマ『西郷どん』に出演。同年には、スペシャルドラマ『フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話』でも主演を務め、フェイクニュースの真相を追う強い矜持を持った女性記者を熱演。

近年は、『リコカツ』『女神の教室〜リーガル青春白書〜』と民放ドラマで主演を務めているが、どちらも前向きに仕事へ向き合うしなやかな働く女性の役柄だった。30代の北川はお仕事ドラマがとてもよく似合う。成熟し人を導きながらも、自身も葛藤している大人の女性ならではの繊細さがリアルに伝わってくる。

プライベートでは、結婚をし二児の母になった北川。『あなたを奪ったその日から』は、第二子出産後はじめての連続ドラマ主演となる。そんな彼女が演じるのが、娘を亡くし悲しみと憎しみに覆われながらも、復讐のために殺人を犯すことはできずに、結城の娘を誘拐してしまう役柄なのだ。

正直、母として演じるのはものすごくつらい役どころだろう。一方で、母だからこそ紘海の悲しみに満たされ絶望した表情、結城を恨み、強い殺意を滲ませる表情には、凄まじい引力があり、片時も目が離せなくなる。作中で、紘海の心情がセリフで詳しく語られることはほとんどない。セリフなんかいらないほど、紘海の表情が悲痛な胸の内を叫んでいるからだ。

もちろん今後も北川にはかっこよく働く等身大の女性像を演じてほしいものだが、子を思う母親という役柄を演じる北川の今後にも期待してしまう。まずは、女優として新たなフェーズへ進んだ北川の迫真の演技を見届けたい。

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カンテレ制作・フジテレビ系列 ドラマ『あなたを奪ったその日から』 毎週月曜よる10時

ライター：古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。X（旧Twitter）：@k_ar0202