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「間違えてないよ。動物園の、キリンの前」と送った俺→付き合う前から知っていた、彼女とのあの日

  • 2026.11.2
ハウコレ

「誰かと間違えてない?」。そう聞かれて、間違えるはずがないと思いました。20年近く覚えていた顔を、友人の誕生日会で見つけたのですから。それでも、どう伝えればいいのかは分かりませんでした。
「ねえ、覚えてる?」と送ったあと、続きを打つまでに少し時間がかかりました。相手は、付き合って2週間の彼女です。彼女が覚えていない可能性のほうが高いことも、分かっていました。

誕生日会で気づいたこと

彼女と知り合ったのは1カ月前、友人の誕生日会です。自己紹介で名前と出身地を聞いた瞬間、俺は思わずグラスを置きました。
小3のとき、俺は彼女と同じクラスにいたのです。その次の春に家の都合で隣の県へ引っ越し、それきり会うことはありませんでした。
当時の俺は、体が小さくて目立たない子どもでした。彼女が覚えていないのも無理はありません。
それでも、話しているうちに、笑い方があのころのままだと分かりました。昔のことは言えないまま、俺は彼女に連絡先を聞いていました。

遠足の日のこと

小3の遠足の行き先は、動物園。キリンの前で、俺は弁当箱を地面に落としてしまいました。
周りが笑う中、彼女だけが残って、散らばったおかずを一緒に拾ってくれたのです。それから、自分のおにぎりを半分に割って差し出してくれました。
そのせいで2人ともクラスの列からはぐれ、彼女だけが先生に叱られました。泣いている彼女に、俺は「ありがとう」も「ごめん」も言えないまま。
あの日から、俺の初恋は彼女でした。

送ったメッセージ

付き合い始めてからも、いつ話すか迷っていました。気味悪がられるかもしれないと思うと、なかなか切り出せません。
「ねえ、覚えてる?」
「小3の遠足」
しばらくして、彼女から「ごめん、何のことか分からない」と返ってきました。
「やっぱり覚えてないか」
俺はそう返しながら、少しだけ寂しく思いました。次に彼女から届いたのは、こんな1通です。
「誰かと間違えてない?」
「間違えてないよ。動物園の、キリンの前」
これ以上はメッセージで話すことではないと思い、俺は「次に会ったとき、ちゃんと話す」と送りました。
その週末、実家の母に頼んで、遠足の写真を探してもらいました。郵便で届いた1枚の後ろの列には、小さな俺と、まだ髪の短い彼女が写っていました。

そして...

カフェで写真をめくり、後ろの列の端にいる男の子を指さしました。それから、キリンとおにぎりの話をして、20年近く言えなかった「ごめん」と「ありがとう」を伝えました。
彼女は写真を見つめて、「叱られたの、あなたのせいだったんだ」と笑いました。
写真を裏返しのまま置いたのは、見せる前に俺の口から話したかったからです。その裏の隅には、20年近く前に母が鉛筆で薄く書いた「おにぎりをくれた子」の字が残っていました。

(20代男性・公務員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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