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動物園のカワウソは人が来ると「テンションが上がる」と判明

  • 2026.8.18

動物園でカワウソを眺めていると、水中をすいすい泳いだり、仲間とじゃれ合ったりする姿につい見入ってしまいます。

しかし、私たちがガラス越しに彼らを観察しているとき、カワウソの側もまた「人間の存在」に反応しているのかもしれません。

オーストラリアの動物園で行われた最新研究から、周囲に来園者がいるときほど、カワウソが活発に動き、人目につく場所にいる傾向があることが判明しました。

もちろん、カワウソが本当に「人が来た!」と喜び、テンションを上げていると確認されたわけではありません。

それでも少なくとも今回の研究では、来園者の存在がストレスとなって隠れてしまうという単純な図式とは異なる結果が得られたのです。

研究の詳細は、豪アデレード大学(Adelaide University)により、2026年6月22日付で学術誌『Journal of Zoological and Botanical Gardens』に掲載されました。

目次

  • 人がいるとカワウソはストレスを感じる?
  • 人がいると活動性が約2倍に

人がいるとカワウソはストレスを感じる?

動物園の動物にとって、大勢の来園者はどのような存在なのでしょうか。

人間側からすると、毎日知らない人に見つめられる環境はストレスになりそうにも思えます。

実際、動物園の研究では、来園者の存在によって動物の行動が変化する「来園者効果」が長く研究されてきました。

そこで研究チームは、アデレード動物園で暮らすコツメカワウソ6頭を約6カ月間観察しました。

研究者たちは、1回約1時間の観察を繰り返し、最終的に146セッションを解析。

その間、60秒ごとにカワウソが泳ぐ、歩く、登る、物を操作する、休むといった行動を記録し、同時に来園者や動物園スタッフが周囲にいたか、鳴き声を発したかどうかも調べました。

野生のコツメカワウソ/ Credit: ja.wikipedia

ここで注意したいのは、研究における「人が多い」という条件です。

これは単純に「観客が何十人いた」という意味ではありません。

研究では、1時間の観察中、少なくとも1人の人間が確認された観察時点が半分以上あるセッションを「More People」、それより少ないものを「Less People」として比較しています。

(たとえば、1時間に60回チェックしたとすると、「60回中40回で人がいた → More People」「60回中20回で人がいた → Less People」という感じ)

つまり調べたのは、観客の人数が増えるほど反応が強くなるかではなく、主に「人が周囲にいる時間が長いとき」と「そうでないとき」の違いだったのです。

人がいると活動性が約2倍に

比較すると、興味深い違いが現れました。

人がいる時間が長い「More People」の条件では、カワウソが泳ぐ、歩く、登るなどの活動的な行動が観察された割合は39.59%でした。

一方、「Less People」の条件では16.36%にとどまり、この差は統計的にも有意でした。

つまり今回観察されたカワウソたちは、人が周囲にいるときほど隠れてじっとするどころか、むしろ活発に動き、人から見える場所にいる傾向を示したのです。

さらに、人が確認された観察時点が多いほど、カワウソが鳴き声を発する割合もわずかに高くなる関係が見られました。

コツメカワウソはもともと非常に社会的で、さまざまな鳴き声を使う動物です。

ただし今回の研究では「鳴いたかどうか」しか記録しておらず、その声が興奮や期待を表していたのか、それとも警戒やストレスを表していたのかまでは分かりません。

また、来園者だけがいる場合とスタッフもいる場合を比べても、鳴き声には明確な違いがありませんでした。

では、カワウソにとって来園者は一種の「娯楽」なのでしょうか。

研究者らは、人間の存在がカワウソにとって刺激となり、環境エンリッチメントのような効果を持つ可能性を指摘しています。

人の存在に注意を向ける動物園のカワウソたち/ Credit: Adelaide Zoo / Klingner et al., 2026, CC BY 4.0

しかし、この研究だけでそこまで断定することはできません。

なぜなら、人が来たからカワウソが活動的になったのではなく、活発に泳ぎ回るカワウソを見て来園者が集まってきただけかもしれないからです。

今回の研究は観察研究なので、この2つを区別できません。

さらに対象は1つの動物園に暮らす6頭だけで、観察者間で行動の判定が一致しているかを検証する観察者間信頼性も測定されていません。

給餌時間や天候など、別の要因がカワウソの活動性に影響した可能性も残されています。

それでも今回の結果は、「動物園の動物にとって人間は迷惑な存在」という単純なイメージに一石を投じています。

私たちが「カワウソを見に行く」と思って動物園を訪れているそのとき、カワウソの側もまた、こちらを興味深い刺激として受け止めている可能性があります。

ガラスのこちら側と向こう側で、本当はお互いに相手を観察しているのかもしれません。

参考文献

Who’s watching who? Otters may find humans entertaining
https://adelaide.edu.au/about/news/2026/who-s-watching-who--otters-may-find-humans-entertaining/

元論文

You Otter Not Talk: A Preliminary Study of Asian Small-Clawed Otter Vocalizations and Activity in the Presence of Visitors and Staff
https://doi.org/10.3390/jzbg7020024

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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