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どんなに腹が立っても、この言葉は使ってはいけない…優しい夫が結婚30年目にキレた「一発アウトな妻の言葉」

  • 2026.10.29

熟年離婚では、妻が夫に別れを切り出すことが多いが、逆のケースもある。公認心理師で夫婦問題研究家の岡野あつこさんは「妻に暴言や暴力をせず、家族のために懸命に働く夫が、ある日、『もうこの人とは生きていけない』と心が折れてしまうことがある。原因のひとつは、妻が一線を越えた言葉を吐いた場合だ」という――。

熟年離婚する“おとなしい夫”の共通点

「もう、妻とは一緒に暮らせません」

そう言って離婚相談に訪れた男性は、声を荒らげることもなく、淡々と話しはじめた。妻との間に激しい喧嘩があったわけではない。暴力を振るったこともなければ、大声で怒鳴り合うような夫婦でもなかったという。

それなのに、なぜ今、離婚なのか。

厚生労働省が2026年9月30日に公表した「2025年人口動態統計(確定数)」によると、年間の離婚件数は17万9073組。前年より6831組減少している。

【図表】離婚件数および離婚率(人口千対)の年次推移
出典=厚生労働省「令和7(2025)年 人口動態統計月報年計(概数)の概況」

ところが、同居20年以上の夫婦が離婚全体に占める割合は24.2%。過去最高の水準となり、離婚した夫婦のおよそ4組に1組が、20年以上連れ添った夫婦ということになる。

【図表】同居期間別にみた離婚件数の年次推移
出典=厚生労働省「令和7(2025)年 人口動態統計月報年計(概数)の概況」

夫婦問題の相談現場でも、熟年離婚に関する相談は後を絶たない。

なかでも気になるのが、普段は穏やかで、妻に強く言い返すこともない夫が、ある日突然「もう無理です」と離婚を決意するケースだ。前出調査では、熟年離婚を宣告するのは妻が7~8割で圧倒的に多いものの、残り2~3割は夫からの三行半ということになる。

筆者は、これまで多くの夫婦問題に向き合ってきたが、妻へ最後通告をする夫には共通点があると感じている。それは、彼らが総じて「働き者」で「おとなしい人」ということ。無論、家庭内暴力をするわけでも、働かず遊び呆けているわけでもない。そのため、相談時にも怒りを爆発させるというより、「妻への期待を静かに手放す」という印象が強い。静かだが、決心は固い。

では、長年連れ添った夫が「もうこの人とは生きていけない」と感じる瞬間とはどんなものか。3組の夫婦の実例から、その心理を考えてみたい。(※登場された方のプライバシーに配慮し、実際の事例を一部変更、再構成しています)。

これからもATMとして生きてください


【CASE1】「あなたはお金だけ入れてくれればいい」 結婚30年目、夫が旅行を誘わなくなった理由

「これからは二人で、少し旅行でもしようか」

結婚30年目を迎えたA(59歳)が、専業主婦の妻のB(55歳)にそう提案したのは、2人の子どもが独立して間もない頃だった。Aは口数が少なく、感情を表に出すのが得意ではない。仕事では責任ある立場を任され、帰宅はいつも遅かった。

子どもが小さい頃も、運動会に行けなかったことがある。家事や育児を妻に任せきりだったという自覚もあった。だからこそ、子育てが一段落した今、これからは夫婦二人の時間を大切にしたいと思ったのだ。

ところが、Bから返ってきたのは、予想もしなかった言葉だった。

「今さら二人で旅行して、何が楽しいの?」

Aが黙っていると、妻はさらに続けた。

「あなたはお金だけ入れてくれればいいの」

Aは「そうか」とだけ答えた。

怒鳴ることも、言い返すこともなかった。

ところが、その夜から、妻に老後の話をすることはなくなった、という。休日にどこへ行きたいかも聞かない。定年後に何をしたいかも話さない。

Bにしてみれば、いつも夫に小出しにしている愚痴の延長のつもりだった。だが、彼女が本当に伝えたかったのは、「今まで私がどれだけ一人で苦労してきたと思っているの?」という思いだったのかもしれない。

しかし、Aが受け取ったのは別のメッセージだった。「妻に必要なのは、私ではなく、私の収入だったのか」と。妻の側に言い分があったとしても、「お金だけ稼げ」は明らかに一線を越えたもので、Aの心が折れてもおかしくないかもしれない。

ATMの操作をする女性
※写真はイメージです
何が夫の心にとどめを刺したのか

夫は「生活のために必死で働いた」 妻は「家事も子育ても一人で頑張った」

ここで見逃してはいけないのは、夫婦のどちらにも、長年の苦労があったということだ。夫は家族を経済的に支えるために働いた。一方、妻は夫の不在を埋めるように、家事や子育てを担ってきた。つまり、二人とも「家族のために頑張った」と思っている。だが、互いの苦労を十分に認め合ってこなかったのは事実。

たとえば、夫が妻に対してしばしば口にする「俺が稼いだ金だ」「誰のおかげで生活できると思っているんだ」という言葉は、経済力を盾に相手を従わせようとするものだ。

一方、妻の「お金だけ入れてくれればいい」は、相手の役割を収入だけに限定し、人としての存在を遠ざける言葉である。

これは、どちらも相手の尊厳を傷つけるものだが、とくに妻から夫への「あなたにはお金しか価値がない」と受け取られる言葉は、夫がこれから一緒に生きていこうとする気持ちまで奪いかねない。

妻が伝えるべきなのは、「お金だけでいい」ではなく、「私は今まで寂しかった」「私の苦労も分かってほしかった」という本音だったのではないだろうか。

「ごめん、俺は疲れたよ」と夫が言ったワケ

【ケース2】「何もしていないなら調べられても平気でしょ」 夫が説明するのをやめた日

結婚32年目の会社員C(58歳)は、同じく会社員の妻のD(56歳)から届くLINEの通知音が、いつしか怖くなっていた。きっかけは、仕事の都合で帰宅が遅くなる日が増えたことだった。

「最近、帰りが遅いけど、誰と会っているの?」

最初はそんな質問だった。Cは、仕事が立て込んでいることを説明した。

ところが、Dの疑いは収まらなかった。午後8時を過ぎると、LINEが届く。

「まだ会社?」
「誰といるの?」
「本当に仕事なら、写真を送って」

会議中で返信できずにいると、今度は、

「返事がないってことは、やっぱり女といるんでしょ」

というメッセージが届いた。

Cは何度も事情を説明した。だが、どんな説明をしても妻の答えは同じだった。

「どうせ嘘でしょ」

ちなみに、このケースでは、夫の浮気を裏づける事実は確認されていない。それでも妻は、夫の説明を信じられなくなっていた。

ある晩、Cが「もう疑うのはやめてくれないか」と訴えると、妻はこう言い放った。

「何もしていないなら、何を調べられても平気なはずでしょ?」

その瞬間、Cは反論する気力を失ったという。

「ごめん、もう説明するのに疲れたよ」

それが、妻に伝えた最後の言葉だった。

女性に詰められている男性
※写真はイメージです
夫を詰め続けた結果の「代償」

夫は「説明をしなくても、信じてほしい」 妻は「説明を聞いて、安心したい」

妻の言動の背景には、夫を失うことへの不安があったのかもしれない。

「本当に私を愛しているなら、きちんと説明して安心させてほしい」

そんな気持ちで、夫を詰め続けたのだろう。

ところが、夫にとっては、説明しても説明しても「嘘つき」と決めつけられる毎日だった。

何を答えても有罪になる。そんな会話を続けていれば、やがて人は説明すること自体を諦めてしまう。

もちろん、夫が実際に不倫をしていたり、嘘を重ねていたりする場合は話が違う。妻が事実確認を求めるのは当然であり、不信感を抱いた妻だけを責めることはできない。問題なのは、確かな根拠がないまま相手を「有罪」と決めつけ、説明を一切受け入れない状態が続くことだ。

夫の帰宅が遅くなって不安なら、「浮気しているんでしょ」と断定する前に、「最近、一緒に過ごす時間が減って寂しい」「帰りが遅い理由が分からなくて不安」と伝えてみてほしい。

不安を伝えることと、相手を犯人扱いすることは違う。夫婦に必要なのは、相手を追い詰めて白状させることではなく、不安を安心に変えるための対話だからだ。

家族の絆を「たった一言」でぶった切り

【ケース3】「子どもたちも、あなたを嫌ってるから」 父親としての居場所を失った夫

「お父さんって、何を考えているかわからないよね」

結婚29年目の会社員E(55歳)は、子どもたちからそう言われたことがあった。

Eはもともと自分の気持ちを言葉にするのが苦手なタイプ。口数も少なく、子どもの進路について相談されても、「お母さんに任せるよ」と答えることが多かった。

一方、妻のF(51歳)は仕事をしながら、毎朝の弁当づくりから学校行事、受験の手続きまで、ほとんど一人で担ってきた。

「夫に相談しても、頼りになる返事がないから」と、いつしかFは、何でも自分で決めるようになっていた。

子どもたちも、日頃から自分たちを支えてくれる母親に相談することが増え、父親との会話は減っていった。

そんなある日、子どもの就職をめぐって珍しく夫婦喧嘩になった。Eが「そういうことは、俺にも相談してほしかった」と言うと、Fの怒りが爆発した。

「今まで何にもしてこなかったくせに、今さら父親ヅラしないでよ!」

さらに、こう続けた。

「子どもたちも、あなたのこと嫌ってるからね」

Eは言葉を失った。妻に責められることには慣れていた。しかし、子どもまで自分を嫌っていると言われたのははじめてだったのだ。

「俺は、この家にいてはいけない人間なのか」

その日から、Eは家族が集まる食卓を避けるようになった。妻に話しかけることも減り、必要な連絡だけをするようになった。

そして、離婚を考えはじめたのである。

窓際でいさかいをしているカップルのシルエット
※写真はイメージです
一瞬にして「家族全員からの拒絶」に

夫は「父親として尊敬されているはず」 妻は「父親の責任を果たしていない」

結論から述べると、夫婦喧嘩に「子どもの気持ち」を持ち込んではいけない、ということだ。

妻が腹を立てるのも無理はない。長年、家事や育児をほとんど一人で担ってきたのだから、「何を今さら」と感じるのはしかたない。夫にも、父親として家族にもっと向き合うべきだったという課題がある。

ただ、夫婦喧嘩の最中に「子どもたちもあなたを嫌っている」と言うのは、別の問題だ。夫にとって、妻との対立が、一瞬にして「家族全員からの拒絶」に変わってしまうからである。

とくに、子どもを愛しつつも、父子関係が希薄だったことを気にしている父親にとっては、深く傷つく言葉になり得る。

では、夫が妻に言う「おまえは母親失格だ」とは、何が違うのか。

「母親失格」は、妻の親としての能力や努力を否定する言葉である。一方、「子どもたちもあなたを嫌っている」は、子どもを自分の側に立たせ、夫の家庭内での居場所そのものを否定するように響く。「一撃」で打ちのめすパワーを備えている。

もちろん、どちらも許される言葉ではない。そもそも、子どもの気持ちは子ども自身のものである。妻が勝手に代弁してよいものではない。夫に不満があるなら、妻は「私はずっと一人で子育てをしているようで苦しかった」と、自分の気持ちとして伝えるべきなのだ。

おとなしい夫たちが突然キレる前の「沈黙」

ここまで紹介した3組には、ある共通点がある。

それは、夫が最後に怒鳴り返したわけではないということだ。むしろ、妻から見れば、以前より静かになっただけだった。旅行に誘わなくなる、LINEへの説明をやめる、家族との食事を避ける、将来の話をしなくなる……といった変化を、妻は「最近、機嫌が悪いのかな」「そのうち元に戻るだろう」と受け流してしまうことがある。

ところが、夫の心の中では、すでに結婚生活を終わらせる準備が始まっている場合もある。夫婦関係で本当に怖いのは、激しい喧嘩よりも、「もう何を言っても無駄だ」と思われることだ。

ただし、いつも穏やかな夫だからといって、家族への責任を十分に果たしてきたとは限らない。家事や育児を妻に任せきりにしていなかったか。妻が何度も訴えてきた不満を聞き流していなかったか。

妻の一言が決定打になったとしても、そこに至るまでの責任をすべて妻に負わせることはできない。夫婦のすれ違いは、多くの場合、どちらか一方だけで生まれるものではないからだ。

言葉の選び方で相手への届き方は変わる

では、どうすればよかったのか。夫婦喧嘩になったときこそ、相手の「存在」ではなく「行動」について話すことを提案したい。

「あなたはお金だけ入れてくれればいい」ではなく、「私はこれまで一人で家事や育児を担ってきたことが寂しかった」。

「どうせ嘘でしょ」ではなく、「最近、帰りが遅くて不安になっている」。

「子どもたちもあなたを嫌っている」ではなく、「もっと子育てに関わってほしかった」。

伝えたい不満は同じでも、言葉の選び方で相手への届き方は変わるからだ。

夫の側も「我慢することと、夫婦関係を守ることは同じではない」ということを肝に銘じておきたい。何も言わずに耐え続け、ある日突然、離婚を突きつける。それでは妻も何が起きたのか分からないまま取り残されてしまうだろう。

傷ついたなら「傷ついた」と伝える。不満があるなら、小さいうちに話し合う。これは弱さではなく、夫婦として向き合うための大切な行動である。

長年連れ添った夫婦だからこそ、つい「このくらい言っても大丈夫」「言わなくても分かるはず」と思ってしまう。

ところが、30年間一緒にいたからといって、相手の心まで自分のものになったわけではない。どんなに腹が立っていても、相手の存在そのものを否定する言葉だけは使わない。そして、相手が黙っているからといって、傷ついていないと思わない。夫婦の未来を壊すのも言葉なら、もう一度つなぎ直すきっかけになるのも、また言葉なのだ。

「そんなつもりじゃなかった」

そう後悔する前に、今、目の前にいる相手の気持ちに、もう一度耳を傾けてみてはどうだろうか。

岡野 あつこ(おかの・あつこ)
夫婦問題研究家・パートナーシップアドバイザー・公認心理士
NPO日本家族問題相談連盟理事長。立命館大学産業社会学部卒業、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修了。自らの離婚経験を生かし、離婚相談所を設立。離婚カウンセリングという前人未踏の分野を確立する。これまでに35年間、4万件以上の相談を受け、2200人以上の離婚カウンセラーを創出。著書に『離婚カウンセラーになる方法』(ごきげんビジネス出版)など多数。近著は夫婦の修復のヒントとなる『夫婦がベストパートナーに変わる77の魔法』(サンマーク出版)。 離婚救急隊

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