1. トップ
  2. エンタメ
  3. 10年前、解散した【国民的グループ】ファンへのお礼として生まれた『20年前の名曲』とは

10年前、解散した【国民的グループ】ファンへのお礼として生まれた『20年前の名曲』とは

  • 2026.11.7
undefined
2016年12月、渋谷駅前に掲げられた『SMAP×SMAP』の最終回を伝える広告看板(C)SANKEI

いまこの曲を聴いて胸がつまる人の多くは、5人が別々の道を歩むと決まったあの年のことを重ねているはずだ。ラジオから流れてきたサビに、言えずにいた見送りの気持ちを預けた人もいるだろう。

けれど生まれたばかりのころ、この歌はまったく逆の方向へと差し出されていた。ステージの5人から、客席のファンへ。まだCDになる前の新曲として、ツアー会場でお礼の言葉を届けるために歌われていたのである。

発売から、ちょうど20年。ファンへの感謝として生まれた歌が、10年後にはファンの側から5人へ返される歌になった。同じお礼の言葉が、宛先を入れ替えながら歩んできた歳月が、この1曲にはぎっしりと詰まっている。

SMAP『ありがとう』(作詞・作曲:MORISHINS')ーー2006年10月11日発売

祝いの年に選んだのは祝う側への感謝

もとは2006年の全国ツアーで、未発表の新曲として客席に向けて歌われた曲だった。会場で歌われていたその歌が、ファンの熱い後押しを受けてシングルとして世に出ることになる。

デビュー15周年を記念する、通算40枚目のシングル。節目の1枚に、5人は客席へのお礼をそのまま置いた。記念盤なら、祝われる側の晴れやかな歌を掲げる手もあったはずだ。けれど選ばれたのは、祝ってくれる人へ感謝を告げる歌だった。15年を続けてこられたのは誰のおかげか。その答えを、言葉より先に曲の選び方で示した。

作詞・作曲は、その年にソニーからデビューしたばかりの新人、MORISHINS'。記念の1作を、まだ無名の書き手の言葉に託した形になる。

ジャケットにはメンバーの写真が1枚もなく、香取慎吾が描いた10匹の蟻が並ぶ。「アリが10匹」で、ありがとう。15周年の顔を語呂合わせの絵に預けてしまうあたりに、正面からのお礼を照れ笑いでくるむ5人らしさがのぞく。大まじめに構えない遊び心が、かえって歌の素直さを引き立てていた。

仲間の主演作に寄り添い日本中へ

この曲には、もう一つの大切な入り口があった。フジテレビ系ドラマ『僕の歩く道』の主題歌である。主演は草彅剛。自閉症の青年を演じたこの感動作は、草彅が主演を務めてきた『僕シリーズ』3部作の完結作にあたる。

シリーズ1作目『僕の生きる道』の主題歌は『世界に一つだけの花』だった。草彅の主演ドラマにSMAPの主題歌という組み合わせが、あの曲以来もう一度そろったことになる(ちなみに2作目は稲垣吾郎が変名で歌った&G『Wonderful Life』)。

火曜の夜、物語とともにこの歌が流れる。ツアーの客席で生まれたお礼の歌が、毎週テレビの前の家族のもとへ届くようになった。ライブ会場の特別な歌から、リビングで並んで聴く歌へ。歌の居場所はごく自然に広がっていく。

数え上げた感謝の裏で重なり合う声

歌詞は、感謝の宛先を一人ずつ数え上げていく。くだらないことで笑い合った仲間。涙を見たくない母。分かり合えないまま別れた人。そして自分を愛してくれた人。最後に歌は、そのすべてを「愛する人へ」と定めて閉じる。

どれも特別な誰かではない。誰の人生にもいる顔ぶれだから、聴く側はいつのまにか自分の友人や母親の顔を重ねてしまう。宛先は具体的でありながら、誰のものでもあり得る。この歌があとで何度も別の場面に呼ばれていく理由は、まずこの数え方にあった。

サビの仕掛けも美しい。主旋律が「ありがとう」を繰り返すその裏で、別の言葉が、対旋律となって同時に歌われている。二つの旋律が重なって、ひとつの感謝を両側から支える形だ。REOの温かな編曲に、前嶋康明が書いた流麗な弦が添えられている。

5人の声が、ひとつのお礼を壊さないように手から手へ渡していく。それぞれの声の個性がリレーされていくボーカルワークこそが、この歌のいちばんの泣きどころだ。

年の瀬の大舞台と長寿番組の最後に鳴った歌

発売した年の大晦日、SMAPは『第57回NHK紅白歌合戦』でこの曲を歌った。14回目の出場で、出番は白組の最後から2番目。白組の司会は中居正広が務めていた。

グループの一員が進行役を担う舞台で、1年の締めくくりにお礼の歌が鳴り響く。年の瀬はもともと、世話になった人に感謝を伝える季節でもある。15周年の最後の大舞台に、これほどしっくりくる歌はなかった。

8年後の2014年3月31日、『笑っていいとも!』の最終回。5人はタモリを囲んで、この曲を歌った。ファンに向けて生まれた歌が、ここでは長く昼の顔であり続けた司会者へのお礼を受け持っている。宛先が変わっても、歌の側は何ひとつ書き直さなくていい。

感謝を伝える大きな場面に、この歌は選ばれ続けた。そして、いちばん熱心に呼び続けていたのはファンだった。

お礼を返す番はファンに回った

2011年、震災の復興支援として作られたベスト盤『SMAP AID』は、収録曲をファンの投票で選んだ。この曲は上位に選ばれている。2016年の『SMAP 25 YEARS』でも、ファン投票の上位に入った。数ある曲のなかから自分たちの手で選び直す場で、ファンはこの歌を手放さなかった。

2016年の夏、リオ五輪の中継のテーマに選ばれたことをきっかけに、10年前のこの曲がふたたびランキングに戻ってきた。8月に解散が発表されると、順位はさらに上がる。ファンへの「ありがとう」として生まれた歌は、このとき、見送る側の気持ちを重ねて聴かれる歌にもなっていた。

そして12月30日、解散前最後の放送となった『木村拓哉のWhat's UP SMAP!』。木村拓哉が1曲目にかけたのが、この曲だった。

1曲目に選ぶという行為に、説明の言葉はいらない。何を語るより先に、まずこの歌を流す。それこそがメンバーの側からファンへ向けた、最後のお礼の渡し方だったのではないか。面と向かっては照れくさい言葉を、この歌はいつでも代わりに運んでくれる。

あの日、客席へ差し出された「ありがとう」のバトンは、宛先を変えながら今も誰かの心に届き続けている。リリースから20年。時代が移り変わっても、5人の声が手渡してくれた温もりは色褪せない。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

の記事をもっとみる

注目コンテンツ