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災害時の妊産婦・乳児支援、熊本県助産師会による「親子安心ステーション」とは?

  • 2026.10.15

2026年7月に起きた熊本地震を受け、一般社団法人 熊本県助産師会は、震度6強の揺れを経験し、特に被害の大きかった熊本市南区城南町や八代市で、妊婦や1歳未満の子どもを持つ家庭を対象とした「親子安心ステーション」を同年7月31日から開設しました。

利用は無料で、沐浴や授乳に関する相談、育児に関する不安や悩みなどに対し、地元で開業している助産師が協力し合い、寄り添ったといいます。同年9月末に閉所となりましたが、それまでに八代親子安心ステーションはのべ123組、城南親子安心ステーションではのべ16組が利用しました。

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赤ちゃんと家族が安心して過ごせる場所の存在を知っていますか?

2026年7月、酷暑の中で熊本地方を襲った猛烈な揺れは大きな被害をもたらしました。暑さの中で大きな課題となったのは、避難所として開設された学校体育館に冷房設備がないことや、熱中症の危険性など。10年前の4月に起きた熊本地震とは異なる課題も多く浮き彫りになりました。

大規模災害の発生時に開設される避難所は、自宅が被害を受けた際などにはとても有難い存在ですが、多くの方と空間を共にするため、慣れない環境下で大きなストレスを抱えてしまうこともあります。特に、乳幼児のいるご家庭、妊婦さんなどは「皆と同じように」過ごすのが難しいことも。そんな背景もあり、震度5弱以上の地震など、大規模災害に備え、妊産婦や赤ちゃんのいる家庭を対象に自治体が支援体制を整えることがあります。先進的な取り組みとしては、東京都文京区が2012年に全国で初めて私立大学と協定を結び、母子専用の避難所を指定・整備。分娩セットやアレルギー対応粉ミルクなどが備蓄されています。

一方、一般財団法人日本気象協会と株式会社明治が全国1741の地方自治体を対象に共同で実施した調査では、「乳幼児・妊産婦の優先受入れまたは配慮した避難所の有無」について「ある」と回答した自治体は約30%にとどまりました。地域によるばらつきは、依然として大きいのが現状です。

そこで今回は、10年前の熊本地震の際にも母子支援拠点を開設した経験を持ち、その知見を生かして親子安心ステーションを開設した熊本県助産師会 会長の坂梨京子さんに現場で感じたことなどを伺いました。

熊本地震で見えた災害時の母子支援のいまと課題

——開設の経緯を教えてください。

八代の親子安心ステーションは2026年7月31に開設しました。28日に地震が起きて、その後被災地の近くで開業している現地の助産師たちが被災地の避難所を巡回してくれました。そこで、被災地の母子の状況、どんなことに困っているのか、どんなものが足りていないのかを聞き取り、集約して熊本県助産師会に伝えてくれました。その報告事例から「水が出ていないので沐浴ができず、赤ちゃんたちの皮膚の状態を清潔に保つことが難しい。暑い時期にも関わらず避難所にはエアコンの設備もなく、電気が使えないところも多い」ということなどがわかりました。

そこで、八代市内で水が出る環境にあった助産院を拠点に地域の助産師が協力して、まずは八代親子安心ステーションを2026年8月6日まで開設し、沐浴などの支援を始めました。翌7日からは同じ地域にある児童福祉施設に場所を変え、継続しています。もう一つは宇城市に近く、被害の大きかった南区で城南親子安心ステーションを同地区にある助産院を拠点として開設、支援を開始しました。

10年前の熊本地震の時には通常授業が始まるまでの間、小学校の保健室を借りて母子支援拠点を開設し、沐浴や乳房ケアなどを行っていました。その際は、別の場所で母子の宿泊施設も併せて開設・運営していましたが、宿泊の場を開設してみて、家族が離れ離れになってお母さんとお子さんだけで泊まりに来るのは難しいこともわかりました。泊まらなくても母子がケアを受けられる場所がありさえすれば、自宅以外の場所に避難されている方も利用できるしニーズもあるとわかったので、今回は親子安心ステーションのみを立ち上げることにしました。

——普段から助産院とつながりのある方の利用が多かったのですか。

普段から利用されている方もいらっしゃいましたし、今回が初めてという方もいました。10年前もそうでしたがSNSで沐浴や乳房ケアが可能なことなど、ここに来たらできることを情報発信していたので、そこで情報をキャッチして初めて来てくださったという方も少なくないですね。情報発信の大切さを実感しました。

——2026年9月末で閉所されましたが、それ以降はどこに行ったらよいのでしょうか。

2026年9月末で、助産師のケアが受けられなくなるということではもちろんありません。それぞれの地域の助産院でも沐浴などのケアが提供できるようになっています。9月末以降はご自身のお住まいの地域にある助産院で産後ケアを引き続きご利用いただければと思います。ぜひ、この機会に地域の助産師とつながって産後ケアサービスを利用するきっかけにしてほしいです。

——実際に開設してみて感じた課題はありますか。

熊本県助産師会の会員助産師の約7割は地域で開業している助産師です。地域の中で産前産後ケアを日頃から行っており、地域の状況もよく把握しています。親子安心ステーションを開設するにあたっても、こういう時には誰に協力を仰げばいいのか、どこだったら安全なのかというような情報をしっかり持っていたおかげで、被災後でもお母さんたちが安心して集まることのできる場所を提供できたのだと感じています。

今回、ステーション開設前に助産師たちが八代や宇城の避難所を巡回して状況把握を行った際、避難所によっては離乳食が足りていない、あるいは用意がないという状況が発生していたことがわかっています。赤ちゃんの月齢により食べられるものも違うので、何をどれだけ備蓄するかというのは難しい部分もあります。今後、自治体と災害協定を結び、そういった部分にも対応できるように動いていけたらと思っています。

また、災害時の備えとして活用されている液体ミルクも40℃以下の常温での保存が原則なのですが、今回は真夏の災害で熊本は40度を超える日も少なくなく、夏場の気温上昇が続く中で保管をどうするのか、ということも課題と感じました。

——妊産婦さんが日頃から備えておくべきものなどがあれば教えてください。

離乳食、ミルク、おむつなどの物資は避難所でも不足してしまうことは、今後も十分起こり得ます。また今回、熊本市内など被害が少なかった地域のドラッグストアなどにたどり着ければ買い足せる状況ではあったものの、道も悪くガソリンの給油が難しいなどの理由で、そこまで買い物に行くことができない方も少なくありませんでした。救援物資が届くまでには、どうしても1週間ほどかかりますので、それぐらいの備えはしておきましょう。

また、災害時にはミルクはあっても水が出ず哺乳瓶や乳首の消毒ができないなど、衛生上の問題も多く発生します。母乳育児が可能な方は、普段からミルクの備えと共に母乳育児を継続しておくことも災害時の対策になり得ると思います。病院で出産したのちも、地域の中で乳房ケアなど母乳育児をサポートしてくれる人とつながっておくと安心できると思うので、地域の中にどんな助産師がいるのか知って出会ってもらえたらと思います。

「いつも」の関係を「もしも」の備えに

日常の中では家族の力で可能なセルフケアも災害時の環境下では難しくなってしまうということは多々あります。そんな時に「助けて」と言える相手や場所があることはとても大切なのではないかと思います。「いつも」の状況を知ってくれている人が「もしも」の時にもいてくれる安心感も普段から備えておける防災の一つかもしれません。子育て中のご家族を支える地域内のサービスにはどんなものがあるのか、普段からアンテナを立てて情報収集をし、つながりを持っておくとよいでしょう。

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<執筆者プロフィル>
水野佳
保健師/オートキャンプ歴9年
学生時代にはバックパックを担いでフィールドワークや旅に出かけ、バングラデシュでの井戸掘りなども経験。旅やアウトドアでの知識や経験を防災活動に繋げる。産業保健師として企業勤務時に、救命講習やBCPなどの企画・運営にも関わった経験も持つ。

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