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「第一印象は変な映画!」「いつ爆発するかわからない心理的恐怖」吉田恵輔監督が人間の業をあぶり出す『mentor』を観た映画ファンによる感情カオス体験をレポート!

  • 2026.10.13

『ヒメアノ〜ル』(16)や『空白』(21)、『ミッシング』(24)など、観る者の心に鋭く切り込む“人間描写の鬼”吉田恵輔監督の最新作『mentor』が10月16日(金)より公開される。花火遊びが原因で近隣のアパートを全焼させてしまった2人の少年と、その火事によって最愛の妻と子を失い、自身も全身に大火傷を負った男。15年後、3人は再会を果たし、憎んでも憎み切れない存在であるはずの元少年たちを、男は赦し、その胸に強く抱きしめる。すべてを包み込む男の言葉にほだされる一方、“優しすぎるアドバイス”が2人の運命を不気味に侵食していく…。

【写真を見る】火事で妻を失い、自身も大火傷を負いながら、原因を作った少年たちを赦すことができた埜本

果たして、男の言葉は「導き」なのか、それとも「支配」なのか…。火事の罪の意識を封印し、アーチェリーに打ち込む龍之介を磯村勇斗、止まった時間を取り戻すように、前向きな思考にのめり込む拓海をAぇ! groupの末澤誠也が演じ、綾野剛が火事の被害者でありながら慈愛に満ちた男の得体の知れなさを体現する。全編にわたって観客の感情を揺さぶる新感覚エンタテインメントとなっている本作。ジャパンプレミアの参加者からも、「これまで見たことのない狂気に満ちた芝居が見られた」(30代・男性)や「狂気ももちろん、『ここで!?』という笑いの量も質もとてもよかった」(30代・女性)、「なんとも言えないざらついた感じが残りました!」(40代)といった戸惑いと興奮、ある種の充足感に満たされたという感想が湧き上がっていた。なにがここまで観客を引きつけたのか?その理由に迫っていきたい。

「“優しすぎる”態度が底知れぬ狂気や違和感を生みだす」タイトルの“mentor”が秘める不気味さに慄然

15年前に花火遊びで近隣のアパートを全焼させてしまった龍之介(磯村)と拓海(末澤)。以来、拓海は大きな罪悪感を抱えながら生きてきた。そんな彼の前に現れたのは、火事で大火傷を負い、妻子を失った埜本(綾野)。恨んで当然の相手なのに、土下座して涙ながらに詫びる拓海を優しく包み込む。その不思議な包容力に感化された拓海は、埜本を“メンター"として慕い急速に距離を縮めていく。

一方、拓海と共に火事を起こした龍之介は、アーチェリー競技と出会い、オリンピック日本代表になるという夢を追いかけていた。いまの龍之介にとって拓海や埜本との再会は、平穏を揺るがしかねない。そして、埜本との出会いを機にかつての被害者たちに謝罪して回る拓海にも、不気味なほどに優しすぎる埜本の態度にも違和感を拭えない龍之介。やがて事態はまさかの方面に転がり、歪な三角関係が狂っていくなか、物語は誰も想像しなかった結末へと向かっていく…。

痛ましい火災事故と、それによって人生が狂ってしまった3人。その再会によって、それぞれが過去と向き合い、人生を前向きに生きていくようにも見えるが、物語はどんどん不可思議な方向へと突き進んでいく。観客からも、「前向きな言葉やハグがこれほど人を変えていくとは思わなかった」というような感想が続出。居場所のない人間の隙間に入り込む“メンター”の不気味さや加害者と被害者の歪な関係性に大勢が戦慄していた。

「優しさはあまりにすぎると狂気。ありのままの人間の感情は悍ましいけれど、埜本の押しこらえてるのかわからないほど本気で人に優しく振る舞う行動と嘘らしさが微塵もない言い方がなによりも怖かった」(30代・女性)

「前を向くためには依存的に信じるなにかが必要で、またそれによって狂わされて…。必死に生きていこうとする登場人物たちの健気さとは裏腹に、苦しみから本当の意味ではなかなか解放されない残酷さがとても苦しかったです」(30代・女性)

「“優しすぎる”態度が逆に底知れぬ狂気や違和感を生みだし、いつ爆発するかわからない心理的な恐怖で常に煽られました」(40代・男性)

「最初から最後まで、埜本が優しく拓海に寄り添う姿が、穏やかそうなシーンであっても背後に不気味さを感じる感覚がした」(40代・女性)

埜本に再会した拓海は、彼の優しさに触れて抑えていた感情があふれ出す [c]2026「mentor」製作委員会
埜本に再会した拓海は、彼の優しさに触れて抑えていた感情があふれ出す [c]2026「mentor」製作委員会

「喜怒哀楽のすべてを経由して着地した、出会ったことのない感情」笑いと恐怖が交錯し感情がカオス!1分先すら読めない予想不能な映画体験

自らの存在を否定して生きてきた拓海が、埜本と出会ったことで少しずつ前向きになっていく姿には感動を覚える。一方で、埜本の物事を肯定的に捉える言動にはやはり違和感が拭えないし、2人を警戒する龍之介の感覚はもっともだろう。そんなふうに緊張感を保ったまま、3人に対する見方もどんどん変化していく。感情が迷子になるジェットコースターのような怒涛の展開、吉田監督ならではの不謹慎なブラックユーモアに対し、「泣けばいいのか笑えばいいのかわからない」という感想が寄せられている。

「観終わったあとの一番強い感情は変な映画!途中までは丁寧な人間の感情描写に共感していたのですが、狂ったエンディングを見せられてそう来たか!と思った一方、納得の気持ちもありました」(20代・女性)

「率直に述べるのなら、わからなかった、が私的には正解。一部に共感し、恐れも抱き、腹も立ち、笑い、喜怒哀楽のすべてを経由して着地したのは出会ったことがなく形容しがたい、しかし確実に人間のなかに潜んでいた、名のない感情だった」(30代・女性)

「土下座の時の腰の角度や龍之介の発狂などに笑い、拓海がメンターの考えに取り憑かれていく様に狂気を感じ、埜本のずっと感情を押し殺して生きてきた悲しさに共感し…。感情が入り乱れ、ハラハラした」(30代・男性)

埜本と再会したことで龍之介のアーチェリーの成績にも影響が!? [c]2026「mentor」製作委員会
埜本と再会したことで龍之介のアーチェリーの成績にも影響が!? [c]2026「mentor」製作委員会

「まだこんな顔を隠し持っていたか」磯村勇斗の葛藤から末澤誠也の覚醒、綾野剛の静かな狂気まで!火花散る怪演合戦

過去の事件によって歪な絆で結ばれた龍之介、拓海、埜本。この3人を演じた磯村、末澤、綾野らキャスト陣の圧巻の演技合戦も観客の記憶に強く刻まれた。例えば、龍之介は彼なりに過去と折り合いをつけ、アーチェリー競技と出会ったことで夢に向かって突き進んでいる。それだけに拓海も埜本も邪魔な存在でしかないのだが、彼にもまた押し殺してきた感情があることが見え隠れする。

「過去に囚われないようにしようと必死に感情を殺そうとしているが、微妙な心の揺らぎや感情の起伏が時々出てしまう姿を上手く演じられていてすごくよかった」(50代・男性)

「拓海から埜本に会ってほしいと言われて、まったく乗り気ではないのに適当に話を合わせる様子など、細やかな表情や仕草で心の動きが伝わってきてすばらしかった」(40代・女性)

過去と折り合いをつけ、現在はアーチェリーでオリンピック出場を目指している龍之介 [c]2026「mentor」製作委員会
過去と折り合いをつけ、現在はアーチェリーでオリンピック出場を目指している龍之介 [c]2026「mentor」製作委員会

拓海は良くも悪くも素直。埜本と再会する以前の彼は常にうつむき、伸ばしっぱなしの前髪で顔を隠している。ところが、埜本を自身の“メンター”と仰いでからは、その言葉一つひとつを吸収し、彼のような人格者に近づけるようにと邁進していく。一方で、少しでも否定的な言葉を投げかけられると、それが拓海を想っての言葉だとしても、自身が拒絶されたと感じ、必死に謝ってすがりつこうとする。

「末澤さんの表現力に驚いた。特に謝罪をすることに酔い始めたころの拓海の常軌を逸した様子は本当に心配で、親の気持ちでハラハラと目で追ってしまった」(40代・女性)

「“罪悪感に苛まれている自分”を被害者が優しく受け入れてくれた成功体験からそれをアイデンティティとして昇華しようと奮闘する拓海の姿が本当に滑稽で恐ろしかったです」(20代・女性)

「自分自身を許容するための偽善と、他人を許容するための偽善との差が様々な場面での表情や行動、空気感から伝わってきて印象に残った」(10代・女性)

火事以来、罪の意識から自身のすべてを否定し、日陰で生きてきた拓海 [c]2026「mentor」製作委員会
火事以来、罪の意識から自身のすべてを否定し、日陰で生きてきた拓海 [c]2026「mentor」製作委員会

そして、なんといっても埜本。あれだけの経験をしながら、どうして憎しみを乗り越えられたのか?拓海や龍之介に向ける優しさは本心からなのか?彼が2人に対して親身になるほど、その人間力の高さに感心すると共に、様々な疑念が湧いてくる。そんな複雑なキャラクターを綾野が見事に演じ切っていた。

「最初は一番理解できない不気味さがありながらも話が進むにつれ、実は一番人間らしく、共感できるキャラクターになりました。綾野剛さんの演技はやはり真に迫るものがあり、作品全体の緊張感を上げていたように思います」(20代・女性)

「埜本が2人の少年を労り、心配して赦す言葉はどうしたって嘘っぽく裏があるように聞こえてしまう。そんな状況で、彼の言葉がいっさい違和感なく感じられて圧巻だった」(40代・女性)

「綾野剛…!まだこんな見たことない顔を隠し持ってたかと度肝を抜かれました。きちんと主演のお2人も引き立てていてすごい役者さんだなと改めて、さらに好きになってしまいました」(30代・女性)

【写真を見る】火事で妻を失い、自身も大火傷を負いながら、原因を作った少年たちを赦すことができた埜本 [c]2026「mentor」製作委員会
【写真を見る】火事で妻を失い、自身も大火傷を負いながら、原因を作った少年たちを赦すことができた埜本 [c]2026「mentor」製作委員会

「人間そんなに強くない。綺麗事だけでは生きられない」“人間描写の鬼”吉田恵輔監督による歪んだ共依存と業を描く演出の凄み

『ヒメアノ〜ル』、『空白』、『ミッシング』などで人間の嫌な部分、みっともなさを描いてきた吉田監督。本作でも、これらをユーモアや毒っ気で包み込む“ならでは”の演出美は健在。善人に思える人だって時に信じられないような暴言を吐くこともあるだろうし、それは決してスクリーンのなかだけの出来事ではなく、誰もが覚えのある感情だからこそ、観客はどこか気まずい気持ちになってしまう。映画ファンを唸らせる脚本、目の付けどころが深い人物描写への称賛の声も多い。

「人間はそんなに強くない。綺麗事だけでは生きられないことを、吉田監督は非常に繊細に巧みに表現してくださると感じています」(30代・女性)

「怒りの終局や再生に帰結するように見せて、最後にタイトルを回収する流れに、吉田監督の人の悪さが全開に発揮されて笑うしかなくなった」(40代・男性)

「出てくる人物すべて、善人か悪人か区別することができないあまりにも人間らしいところや、こうなりたくないと思いつつ共感してしまうような人間描写が本当にすばらしく、吉田監督らしさを感じた」(10代・女性)

「普通なら映さないような汚い部分や格好悪い部分まであえて隠さずに描くことで、登場人物をきれいに見せるのではなく、感情を持った一人の人間として生々しく描いているように感じました」(10代・女性)

龍之介に埜本に会うように促す拓海 [c]2026「mentor」製作委員会
龍之介に埜本に会うように促す拓海 [c]2026「mentor」製作委員会

「この作品がきっと誰かの“mentor”のような存在に」観終わったあと、きっと誰かと語りたくなるはず!

『mentor』は“赦し”や“贖罪”をテーマに物語の幕が開けるが、そこからなにかにすがらないと生きていけない“共依存”、アイデンティティの不完全さまで掘り下げられ、人間の真理をシニカルに突いていく。そして、脳裏に焼き付いて離れない衝撃的なラストシーン…。観終わったあと、必ず誰かと語りたくなることからも、「とにかく観てほしい」という熱量高いコメントが数多く確認できた。

「過去に囚われている人にも前を見ている人にもお勧めできる作品かなと思う。龍之介、拓海、埜本、どの視点に立って観るかで色が変わる作品だと思うし、そうすることで何度でも楽しめる作品」(20代・女性)

「いつも感情を押し殺してしまっている方、周りを気にかけすぎてしまっている方、自分の感情との付き合いに悩んでいる方は、この映画を観て感情をさらけ出してみてほしいです。おかしいと思ったら周囲を気にせずに笑ってください。歪な関係で緊張感あるシーンがずっと続きますが、観終わったあと、不思議とさっぱりします」(30代)

「誰が観ても、登場人物の人間らしさや心の揺らぎ、態度の変化のどこかに共感して、自分を顧みてしまう作品な気がします。なので、どんな人でも観てみてほしいし、お勧めしたいです。人間は完璧じゃないし、でもそれでも生きていけるし、明日は来る。この作品自体がきっと誰かの“mentor”のような存在になると思います」(40代・女性)

警戒しながらも埜本の言葉にほだされていく龍之介 [c]2026「mentor」製作委員会
警戒しながらも埜本の言葉にほだされていく龍之介 [c]2026「mentor」製作委員会

文/平尾嘉浩

※吉田恵輔の「吉」は「つちよし」が正式表記

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