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これで何度目の記憶喪失?元ボクサー俳優リーアム・ニーソンに“ハードボイルド”なオヤジ役がハマるワケ

  • 2026.10.11

実力派俳優としての演技力と190cmを超すほどの体躯から放たれる無骨な存在感を活かし、50代半ばからアクション俳優へと転身したリーアム・ニーソン。タフで渋い男として無双状態のニーソンの最新作『ハードボイルド』が10月9日より公開された。裏社会に生きる男の最後の正義を体現する本作は、これまでも数々のハードボイルドなキャラクターを演じてきたニーソンだからこそ演じられるようなタフさと哀愁が漂うまさにハマり役。ここではその説得力の裏側を、過去作やパーソナリティとのリンクからひも解いていきたい。

【写真を見る】“ハードボイルド”な魅力が光る元ボクサー俳優リーアム・ニーソン

【写真を見る】“ハードボイルド”な魅力が光る元ボクサー俳優リーアム・ニーソン [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.
【写真を見る】“ハードボイルド”な魅力が光る元ボクサー俳優リーアム・ニーソン [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.

ハンス・ペテル・モランド監督との再タッグで人生を顧みる男に

雪深い田舎町を舞台に、息子を殺された模範市民のオヤジがブチギレて、犯罪組織を血祭りに上げていく佳作『スノー・ロワイヤル』(19)でも相性のよさを見せつけたハンス・ペテル・モランド監督との再タッグとなる『ハードボイルド』。近年、繰り返しアクション映画からの引退を示唆しているニーソンにとって一つの集大成とも言える本作は、裏社会に生きてきた一匹狼が自らの信念を貫き、人生の落とし前をつけるため最後に立ち上がるというクライムアクションだ。

ハンス・ペテル・モランド監督との初タッグとなった『スノー・ロワイヤル』 [c] Summit Entertainment : Courtesy Everett Collection
ハンス・ペテル・モランド監督との初タッグとなった『スノー・ロワイヤル』 [c] Summit Entertainment : Courtesy Everett Collection

ボクサーだった経験を活かし、拳一つでボストンの裏社会で成り上がってきた運び屋の男は、徐々に記憶が失われる残酷な病に蝕まれていた。これまでの暴力にまみれ、家族を蔑ろにしてきた人生の贖罪として、すべてを忘れる前に正しいことをしたいと願うようになった矢先、長年の友人の裏切りを知り、残された命を懸けて善行をしようと立ち上がる。

明るくすてきな彼女もできるのだが…(『ハードボイルド』) [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.
明るくすてきな彼女もできるのだが…(『ハードボイルド』) [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.

元北アイルランドチャンプの経験を活かし、元ボクサー役を熱演!

『ハードボイルド』では、月末に懇意のジムに顔を出し、若手相手のスパーリングで小遣いを稼いだり、疎遠だった孫にボクシングを仕込んだり、巨体の男を拳一撃で沈めたりとボクシングの要素が随所に登場する。記憶が失われていく自分に苛立ち、家の壁を手が血まみれになるまでリズミカルに殴り続ける様子など、拳を繰りだす姿からは抜群の説得力が漂っているがそれもそのはず。

初めて存在を知った孫との交流も描かれる(『ハードボイルド』) [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.
初めて存在を知った孫との交流も描かれる(『ハードボイルド』) [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.

役同様にニーソン本人も子どもの頃からボクシングを嗜むと、11歳の時には北アイルランドのチャンピオンになったという実力者。俳優になる前は一時、アマチュアボクサーとしても活躍したという。

また38歳の時に出演した『スピリット/傷だらけの栄光』(90)では炭鉱の閉山をきっかけに、闇ボクシングの世界に足を踏み入れる主人公も演じており、トレーニングから試合まで、ボクサーが出来上がっていく変身をナチュラルに体現した。

記憶を失う役もお手のもの!

記憶を失った男のまさかの正体が明らかになっていく(『アンノウン』) [c]Warner Bros.:Courtesy Everett Collection
記憶を失った男のまさかの正体が明らかになっていく(『アンノウン』) [c]Warner Bros.:Courtesy Everett Collection

さらに、記憶が失われていく裏社会の男という役どころも、これまで何度も演じている十八番。繰り返しタッグを組んでいるジャウム・コレット=セラ監督との初仕事となった『アンノウン』(11)では、交通事故によって記憶喪失になった植物学者かと思いきや、実は凄腕の殺し屋だったというユニークなキャラクターを熱演。記憶が戻らないことに苦しみながらも、体に染みついたスキルで敵を撃退していく様子をニューロティックな演技とハードなアクションで表現した。

失われていく記憶に不安を覚える一幕も(『MEMORY メモリー』) [c]Open Road Films : courtesy Everett Collection
失われていく記憶に不安を覚える一幕も(『MEMORY メモリー』) [c]Open Road Films : courtesy Everett Collection

またマーティン・キャンベル監督がメガホンを握ったその名もズバリ『MEMORY メモリー』(22)で演じたのは、アルツハイマー型の認知症を患い引退を決意した殺し屋。最後の仕事に挑むが、ターゲットがポリシーに反する子どもだったため殺しを拒否。逆に命を狙われながらもターゲットを守るために奮闘する…というニーソン映画あるあるなストーリーだ。どんな強者も恐れず容赦なく鉄槌を下す一方、着々と進行していく病に不安な顔をのぞかせるなど、オヤジの悲哀も背負った姿は説得力抜群だった。

アル中という問題も抱えている主人公の男(『ハードボイルド』) [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.
アル中という問題も抱えている主人公の男(『ハードボイルド』) [c] 2026 TG Movie LLC. All Rights Reserved.

そして『ハードボイルド』では、元ボクサーゆえにパンチドランカーとなってしまい、ボスや子どもの名前が出なかったり、知り尽くしているはずの道がわからず家にたどり着けなかったり…と記憶に翻弄される様子が過去作以上につぶさに描かれる。途方に暮れていたかと思えば唐突にブチギレたりと、病で疲弊していくタフガイを真に迫った表情で体現。あまり見たことがないションボリ顔を交えながら、記憶を失う恐怖や混乱をスクリーンに描きだしている。

ニーソンの敵には人身売買組織くらい悪い奴らがちょうどいい!

そんな『ハードボイルド』では病気をきっかけに自分の人生と向き合ってきた男が、家族のために立ち上がろうとした矢先、ある悲しきトラブルに見舞われると、あれよあれよと人身売買組織の売春宿に踏み込む『タクシードライバー』(76)的な展開が訪れる。

“最後の落とし前”という点など『ハードボイルド』との類似点が多い『MEMORY メモリー』 [c]Open Road Films : courtesy Everett Collection
“最後の落とし前”という点など『ハードボイルド』との類似点が多い『MEMORY メモリー』 [c]Open Road Films : courtesy Everett Collection

人身売買組織をお仕置きするという展開も、ニーソン映画ウォッチャーならピンとくるはず。先述の『MEMORY メモリー』も、政界にまで影響力を持つ巨大な人身売買組織の存在を突き止めていくというものだったが、なによりも無敵のオヤジを印象付けた『96時間』(08)が頭に浮かぶ。

失われていく記憶に不安を覚える一幕も(『MEMORY メモリー』) [c]Open Road Films : courtesy Everett Collection
失われていく記憶に不安を覚える一幕も(『MEMORY メモリー』) [c]Open Road Films : courtesy Everett Collection

危険対処のプロ、ブライアン・ミルズに扮した『96時間』は、ヨーロッパ旅行中に友人と共にさらわれた娘を救出するため、元工作員のスキルを活かして犯人グループの身元を割りだし、追い詰めていくというもので、さらった女性を薬漬けにするという人身売買組織が敵として登場。ヨーロッパにまたがる巨大な組織の売春宿に単身で乗り込むと、組織のボスの息子を拷問にかけて殺してしまったため、続編『96時間/リベンジ』(12)まで因縁が続くこととなった。

このように過去作とのリンクが多い『ハードボイルド』だが、短気で誰彼構わず暴言を吐いたり、ロン・パールマン演じるボスにへこへこしたりと、これまでにニーソンが演じてきた思慮深い人物とは一線を画すキャラクター像など新鮮な一面も。過去作での経験を活かしながら役に深みをもたらしているリーアム・ニーソンのハマりっぷりを劇場で堪能してほしい。

文/武藤龍太郎

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