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「DCユニバースの境界を広げるチャンス」ジェームズ・ワトキンス監督が語る、『クレイフェイス』で描かれる“共感”と“恐怖”

  • 2026.10.4

DCコミックスを代表する「バットマン」に登場する悪役の一人を主人公にしたDCユニバース最新作『クレイフェイス』(10月30日公開)。本作でメガホンをとったジェームズ・ワトキンス監督は、DCユニバースの世界観のなかでホラージャンルに挑んだ本作について「DCユニバースの境界を広げるチャンスがあることにワクワクしながら臨みました」と振り返る。

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「人の心の奥に入り込むようなホラーを目指す」

DCコミックスの「バットマン」に登場したヴィランを描く、“ゴッサム・シティ”を舞台にした本格ホラー・スリラー [c] DC Studios. All Rights Reserved.
DCコミックスの「バットマン」に登場したヴィランを描く、“ゴッサム・シティ”を舞台にした本格ホラー・スリラー [c] DC Studios. All Rights Reserved.

「ゴッサム・シティが舞台なので、ニューヨークやシカゴのアナロジーでありながらドイツ表現主義的な雰囲気があり、壁が迫ってくるような圧迫感に、どこか歪んだ感じ、そしてフィルムノワール的な陰影。世界観の構築にはあらゆる可能性がありました。なによりDCコミックは、スーパーヒーローだけでなくホラーコミックスを手掛けていた歴史と伝統がある。そこに立ち返ることができる、非常に興味深く楽しい経験でした」。

本作の主人公はスター俳優のマット・ヘーゲン(トム・リス・ハリス)。彼は事故により美しい顔を失い、世間から“バケモノ”と嘲笑にさらされてしまう。そんななか、かつての輝きを取り戻したいという執念から禁断の治療へ手を伸ばす。元の顔を取り戻したものの、その代償として抑えきれない強烈な怒りの感情に支配され、次第に心も身体も蝕まれていくこととなる。

【写真を見る】まぶたが溶けて目が開かない…ハサミを手に取り切除を試みるが… [c] DC Studios. All Rights Reserved.
【写真を見る】まぶたが溶けて目が開かない…ハサミを手に取り切除を試みるが… [c] DC Studios. All Rights Reserved.

もともとは『ドクター・スリープ』(19)などで知られる現代ホラー映画界の名手マイク・フラナガンが企画を立ち上げ、彼が自ら脚本と監督を務める予定で進行していた本作。しかしスケジュールの都合でフラナガンは監督の座を降り、代わって就任したワトキンス監督は、ドラマシリーズ「マクマフィア」でもタッグを組んだ盟友ホセイン・アミニに、フラナガンの書いた脚本のリライトを依頼したのだとか。

「マイクは主人公が人間から怪物へと変貌していく見事な旅路を描いてくれていました。その構成は実に見事で、すばらしいアクションシーンもたくさんあった。なので、極力それを変えないようにしました」と、ワトキンス監督は説明する。「マイクの脚本のDNAをそのままに、新たなシーンを加えて登場人物の旅路に少し広がりを持たせたり、色合いを少しだけ変えていきました。マイクから受け継いだものを、私たちがごく自然なかたちで発展させていったのです」。

現代ホラーの名手から物語のDNAを受け継いだジェームズ・ワトキンス監督が目指した境地とは?「もっとも深いところにある恐れに触れる」 [c] DC Studios. All Rights Reserved.
現代ホラーの名手から物語のDNAを受け継いだジェームズ・ワトキンス監督が目指した境地とは?「もっとも深いところにある恐れに触れる」 [c] DC Studios. All Rights Reserved.

そのうえで「映画を作るという行為は、ある種の“執着”であり、マーティン・スコセッシが言ったように映画監督の仕事とは“自分の執着に観客を恋させること”」だと語るワトキンス監督は、自身が映画を手掛けるうえで「感情的な側面。すなわち、人間的で共感できるような側面」に“執着”していることを明かす。「ホラーを手掛けるうえでは、ジャンプスケアも欠かせません。ですが、それだけでなく人の心の奥に入り込むようなホラーも目指しています。そのためには、最も深いところにある恐れに触れる必要があるのです」。

「どの瞬間に一線を超えてしまうのか。繊細で興味深い境界を本作では描く」

『バイオレンス・レイク』(08)ではスラッシャーを描き、『ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館』(12)ではゴシック調の雰囲気がただようホラーを、『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』(24)ではいわゆる“ヒトコワ”と、ホラー作品を手掛けるたびに異なるアプローチに挑んできたワトキンス監督。そのいずれにも共通してきた点は、“人間”を描くということ。「そして今回は“ボディホラー”です。自分の体になにかが起こるかもしれないという恐怖は、誰にとっても身近な恐怖だと思います」と、また新たなアプローチに踏み切ったことを明言する。

トム・リス・ハリス演じる主人公マット・へーゲンは、ハリウッド屈指の人気スター [c] DC Studios. All Rights Reserved.
トム・リス・ハリス演じる主人公マット・へーゲンは、ハリウッド屈指の人気スター [c] DC Studios. All Rights Reserved.

「マット・ヘーゲンは懸命に働いてきた男。でもそれが奪われ、すべてを失い、合法的な手段で取り戻そうとしてもうまくいかない。なのでより危険な手段に手を伸ばすことになる。社会にのけ者として扱われることを恐れ、『自分の人生を取り戻そうとしているだけ』と語る彼の必死な道のりに寄り添うことが、大きな共感を呼ぶものだと感じたのです。また、劇中で描かれるような医療科学の革命的な変化は、大きな負を伴う可能性がある。これもボディホラーと親和性が高く、同時にマットのストーリーとつながる掘り下げがいのある恐怖なのです」。

ワトキンス監督は「マットの目を通して物事を見て、彼の旅路を理解してほしい」と、本作を待つ観客に呼びかける。「たとえばデヴィッド・クローネンバーグ監督の『ザ・フライ』では、主人公のジェフ・ゴールドブラムの見た目が変態していっても、観客はずっと彼の内側にいることができました。それと同時に、ジーナ・デイヴィスの視点にも深く入り込むこともできた。本作も同じように、マットとナオミ・アッキー演じるケイトリンの双方に、観客が寄り添える曖昧さと、共感の余地を残しています」。

輝きを取り戻したいという執念から“禁断の治療”に手を伸ばし… [c] DC Studios. All Rights Reserved.
輝きを取り戻したいという執念から“禁断の治療”に手を伸ばし… [c] DC Studios. All Rights Reserved.

そして「超人的な能力を得る過程では、畏怖や驚嘆、喜びがある一方で、強い不穏さもあるものです。正義に生きる可能性も手にするが、どの瞬間に一線を超えてしまうのか。その繊細で興味深い境界を本作では描いています。私が常に重視していることは緊張と緩和。ユーモアが含まれることで、ホラーはいっそう際立つものです。観客の皆さんには、壮大な感情のジェットコースターを体験していただきたい」と、作品への期待感をあおった。

取材・文/久保田 和馬

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