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「家じゃない」と送った私に、「そっか」「今日、会える?」と返した彼が、ベンチで見せた2部屋の間取り図

  • 2026.10.4
ハウコレ

返せなかった代わりに送った短い言葉に、彼は一言だけで応えました。駅前のベンチで彼が鞄から出したものを見て、私は自分の鞄の口を握ったままでいました。

不動産屋のカウンターに置かれた間取り図の隣で、スマホの画面が、今日10回目の同じ短いメッセージを映していました。

「今どこ?」に「家」と返す毎日

彼から届くのは、いつも「今どこ?」でした。付き合って二年、決まった時刻があるわけでもなく、仕事中でも休みでも、1日に10回は届きます。私はそのたびに「家」「会社」「スーパー」と打ち返してきました。返さないでいると、同じ言葉がもう一度届く。それだけのやりとりが、いつのまにか私の1日の区切りになっていました。

その日、私は初めて、彼に言っていない場所にいました。駅から少し離れた不動産屋で、1人用の部屋の図面を眺めていたのです。別れると決めていたわけではありません。ただ、誰にも居場所を聞かれない部屋がどんなものか、確かめてみたかっただけでした。

「家」と打って、消した

担当者の説明を聞きながら、私は膝の上で画面を開きました。「家」と打ちかけて、送信の手前でそのまま消しました。今までなら考えるより先に送っていた言葉が、その場所では嘘になります。図面を折りたたんで、店を出ました。

帰り道、もう一度「今どこ?」が届きました。私は「家じゃない」とだけ送りました。既読はすぐに付きましたが、返事はなかなか来ません。信号を2つ渡ったころに、ようやく「そっか」とだけ届きました。続けて「今日、会える?」。私は「駅前のベンチ」と返して、そこに向かいました。

ベンチで開かれた1枚の紙

先に着いていた彼は、私が隣に座ると、鞄から折りたたんだ紙を取り出しました。

「1日に10回、どこにいるか答えるの、もうやめたい」

私が先に言うと、彼は紙を膝の上に置いたまま答えました。

「ごめん。場所が知りたかったわけじゃないんだ」

広げられたのは、2部屋ある間取り図でした。私が見てきた部屋の、ちょうど倍の広さです。

「一緒に住みたいって、どう言えばいいか分からなくて」

彼の言葉を聞きながら、私は自分の鞄の口を握ったままでいました。中には、1人用の図面が入っています。

そして...

「私は、1人で住む部屋を見てきたところ」

そう言って、私は鞄から自分の図面を出しました。彼は自分の図面をたたみ、こう続けました。

「じゃあ、その部屋の話から聞かせて」

2枚の図面は、まだどちらの鞄にも戻していません。どちらの部屋を選ぶかはまだ決めていませんが、私たちはようやく、「今どこにいるか」ではなく「これからどうしたいか」を話し始めました。

(20代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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