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彼への面接になりかけた実家の食卓で、「それ私にも聞いて」と父に返した私

  • 2026.10.3
ハウコレ

彼が怖がっていたことは、食卓で本当に起きました。箸を持ったまま答えられずにいる彼の隣で、私は父に、同じことを私にも聞いてほしいと言いました。

玄関のチャイムを押す前に、家の中から父の咳払いが聞こえました。

断られる練習をしていた2日間

帰省したとき、父から「一度くらい、連れてこい」と言われていました。3年付き合って、私の部屋には彼の歯ブラシもあります。それでも半年近く言えずにいて、やっと切り出した日、私は皿を持って背中を向けたまま「来月、うちの親に会ってほしいの」と言いました。顔を見ていたら、断られたときに立て直せないと思ったからです。

返ってきたのは「ちょっと、考えさせて」でした。「うん。急がなくていいよ」と返した私は、その一言を断りの前置きに変換していました。

翌日、「無理に返事しなくていいよ」と送りました。逃げ道を用意したつもりで、本当は、断るなら早く済ませてほしかったのだと思います。既読はすぐつき、返事は来ませんでした。職場の休憩の間に、断られたあとの自分を何通りも想像しました。親には何と言うか、歯ブラシはいつ捨てるか、3年を無駄にしたと思わずにいられるか。休憩室の窓から駐車場の車を数えながら、彼が言いそうな断り文句の候補まで代わりに考えていたことに気づいて、自分で少し笑いました。

怖いまま来て、と言ったあとの電話

2日後、部屋に来た彼は、玄関で靴を脱がないまま言いました。

「かっこ悪いけど、今の俺は君の親に会うのが怖い」

私が用意していた断りの、どれとも違う言い方でした。彼が怖がっていたのは、うちの親でも結婚でもなく、親の前に座る自分の姿のようでした。「じゃあ、怖いまま来て」と返して、私はその場で日を決めました。

彼が帰ったあと、父に電話をかけました。

「彼、かなり緊張してるみたい」

「こっちだって緊張する」

父はそう言いながら、「何を出そうか」と当日の献立を何度も変えていました。品定めをする側だと思っていた父も構えているのだと知って、私は少しだけ楽になり、それを彼には伝えませんでした。

彼ひとりの面接ではなくなった食卓

当日、玄関を開けたのは父でした。あの日は私の部屋の玄関でしばらく立ち止まっていた彼が、実家では上がり口で靴を揃えて脱ぎました。天気や仕事の話が一段落したころ、父が湯のみを置きました。

「娘と結婚するなら、生活は大丈夫なのか」

電話の声からは想像できない、まっすぐな聞き方でした。彼は箸を持ったまま、口を開きかけては閉じました。答えに詰まる彼を見て、部屋の玄関で聞いた怖さは、これのことだったのだと思いました。父の目は彼から動きません。私はグラスを置いて、言いました。

「お父さん、それ私にも聞いて」

父が私を見ました。

「私も働いてるし、私にも貯金はあるよ。結婚するの、彼だけじゃないから」

父はしばらく黙り、それから言いました。

「じゃあ、お前はどう考えてる」

そこから先は、彼ひとりの面接ではなく、2人の話になりました。私が答え、彼が足し、父がまた聞く。止まっていた彼の箸が動きはじめたのは、そのあとでした。

そして...

怖いまま来てと言ったとき、私は彼を励ましたつもりでした。それが怖い場所に一緒に立つことだと気づいたのは、父の前で口を開いた私に、彼のほうが驚いた顔をしていたからです。彼はひとりで答えなくていいことまで、ひとりで答えようとしていました。そのことに、父の前でやっと気づきました。

(20代女性・歯科助手)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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