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【戸畑区】木版画復興への思い「THE 新版画 版元・渡邊庄三郎の挑戦」

  • 2026.10.2

みなさんこんにちは。リビングふくおか・北九州Web地域特派員のゆぅとぉんです。

今回は、北九州市立美術館で11月8日(日)まで開催される、「THE 新版画 版元・渡邊庄三郎の挑戦」の開会式・内覧会に潜入してきました!昭和のはじめに国内外で巻き起こる“新版画ムーブメント”の火付け役となった、渡邊庄三郎の「新版画」にかける熱い思いを、展示されている作品や3代目社長である渡邊章一郎氏のギャラリートークから感じ取ってきたので、その様子をご覧ください!

開会式の様子、渡邊章一郎氏「庄三郎のスピリットはいまだ健在」

開会式では、展覧会主催者や来賓の方々が登壇していました。まず北九州市立美術館 館長・後小路雅弘氏が、「初摺り(しょずり)のみずみずしさが残る作品に、みなさま驚かれると思います。ぜひともご堪能いただければと思います」との挨拶。

渡邊木版美術画舗 代表取締役・渡邊章一郎氏は、「渡邊庄三郎は、渡邊版画店を設立してから53年間で、38人の画家などと協業して約2万点もの作品を制作しました。現在では、3代目として私も浮世絵商として活躍しております。庄三郎のスピリットはいまだ健在であると、自信を持って申し上げることが出来ます」とのことでした。

その後、主催者・来賓の方々によるテープカットが行われました。

出典:リビングふくおか・北九州Web

左から、TVQ九州放送 常務取締役・馬場達夫氏、毎日新聞西部本社 代表・中田卓二氏、渡邊木版美術画舗 代表取締役・渡邊章一郎氏、読売新聞西部本社 法務・広報部幹事の若松健一氏、北九州市立美術館 館長・後小路雅弘氏

開会式を終えると、さっそく内覧会の始まりです。ですが、渡邊庄三郎と新版画について知らない方のために、まずはそちらの説明からどうぞ!

新版画とは、芸術性と品質を高めた木版画作品

渡邊庄三郎(1885-1962)は、17歳で浮世絵商の輸出店に勤め、そこで出会った浮世絵の美しさに魅了されます。その後独立し、1909年に東京・京橋で渡邊版画店(現・渡邊木版美術画舗)を設立。浮世絵の研究や販売を行うなかで、庄三郎はこれまでにない新しい木版画制作、のちの「新版画」を取り組むことになっていきます。

新版画とは、明治以降に衰退の一途をたどっていた浮世絵木版画(錦絵)の復興や、高い芸術性を意識した新しい木版画制作を志した庄三郎と、多くの絵師・彫師・摺師などの協業により生まれた近代美術作品群です。

出典:リビングふくおか・北九州Web

川瀬巴水作「東京二十景 芝増上寺」(1925)

浮世絵は、江戸時代に大衆向けとして制作された、芸術性よりも娯楽性を重視した言わばメディア寄りのジャンルで、少々刷りがずれていたり色抜けがあってもそのまま流布されていたそうです。

それに対し新版画は、美術品としての品質を高めることに重視していて、激しい刷りに耐えるほど破れにくい高品質の紙や、退色しにくい顔料、腕利きの職人たちなどに資金を惜しまず使うことで生み出されました。

また、海外出身の画家とも協力してインドや中国、ハワイのホノルルなどを題材にした木版画を制作したり、わざとバレン筋の刷り跡を残し印象を付け加えたり(この技法は『ざら摺り』といい、庄三郎が命名しました)と、浮世絵を超えた芸術性の高い作品をいかに追求していたのかが、展示会を通して少しわかったような気がしました。

出典:リビングふくおか・北九州Web

チャールズ・W・バートレット作「ホノルル浪乗り」(1919)

渡邊庄三郎の浮世絵にかけた熱意の表れとは

説明はこれくらいにしまして、展覧会の様子をどうぞ。会場にはさまざまな題材の描かれた作品が整然と並んでいました。

出典:リビングふくおか・北九州Web

“Ⅰ「新版画」の誕生” 一部展示スペースの様子

展示スペースに入るとすぐに目に付いたのが、「木版浮世繪大家畫集(もくはん うきよえ たいか がしゅう)」(1915年)です。

こちらは、国内初の本格的な浮世絵版画の画集で、当時人気が低迷していた浮世絵を研究し、普及させようと庄三郎が取り組み出版したものです。浮世絵の歴史や膨大な量の複製版画、各図版の解説がびっしりと記されている、採算度外視の豪華本です。作りの丁寧な、とても大きなサイズの画集で、この展示からすでに庄三郎の浮世絵に対する熱意が感じ取れますね。

出典:リビングふくおか・北九州Web

「木版浮世繪大家畫集」(1915年)

その向かい側には、新版画に詳しくない人でもより楽しみながら鑑賞できるようになる、「『新版画』版画基礎知識」の大きなパネルが掲示されています。制作工程の解説や図解、職人のこだわりや見どころが丁寧に記載されています。パネルの下には制作道具の実物も展示されていて、彫り・刷りの工程がどのように行われているか、イメージしやすくなっていますよ。

出典:リビングふくおか・北九州Web

制作道具(彫り道具・摺り道具)

導入部分を見終わると、さまざまな資料や画家たち、風景画・人物画・花鳥画といった題材などに分けられた作品をじっくり鑑賞していくことが出来ます。

出典:リビングふくおか・北九州Web

“Ⅲ新たな風景画の出現” 一部展示スペースの様子

渡邊章一郎氏によるギャラリートーク&インタビュー

ギャラリートークでは、特別協力として展示される新版画作品の全てを提供しているという、渡邊木版美術画舗 代表取締役・渡邊章一郎氏が、制作当時に庄三郎が残していたメモなどを交えながら、軽快に、かつ分かりやすく作品やエピソードを紹介してくださいました。

出典:リビングふくおか・北九州Web

渡邊章一郎氏がフリッツ・カペラリ作「黒猫を抱く女」(1915)を説明する様子

中でも印象的だったのが、高橋弘明(松亭)作「白猫」(1926年)です。渡邊版画店(現・渡邊木版美術画舗)では代々猫を飼っているそうで、庄三郎は当時「シロ」「アカ」「クロ」の3匹を飼っていたとのこと。こちらの作品は偶然にも、白色、赤色、黒色が使われています。また、描かれている白猫の目は「八方睨み(はっぽうにらみ)」という、どこから作品を見ても白猫がこちらを見ているように感じる技法が使われているそうです。

渡邊章一郎氏いわく、「この白猫は庄三郎ではないかと感じていて、『ちゃんと仕事してるか?ちゃんと真面目に働いているか?』と見張っているような、高橋弘明に描かせた庄三郎の自画像のような気がしてならない」とおっしゃっていました。

出典:リビングふくおか・北九州Web

作品を間近に見ると、真っ黒な背景でポツリと香箱座りをする白猫の、じっと一点を見つめてくる目はなんだか吸い込まれてしまいそうです。凛々しい顔つきのせいもあってか、むしろこちら側が白猫に鑑賞されているように感じます。渡邊章一郎氏が見張られていると感じるのも納得の迫力でした。

また、今回は渡邊章一郎氏にお話を伺いました。

―「新版画」に詳しくない人でも鑑賞して楽しめるポイントをお願いします 「浮世絵と同じく、新版画にも風景画・人物画・花鳥画というようにジャンルがあります。特に風景画は、画家たちが全国をまわって題材を直接目で見てきたり、現地の人たちから聞いた話を元にスケッチを作成、旅のおみやげ話なども盛り込んで作品を作っていました。実体験をもとに制作しているんです。鑑賞する方々の地元の風景や、昔に訪れたことのある景色などを見つけるのも楽しさの一つです。」

―渡邊庄三郎さんのエピソードを一つお願いします 「渡邊庄三郎は、金魚が描かれたとある新版画作品について、こう語っていたといいます。『海外では日本の金魚が人気で輸出されているが、環境が合わず、すぐに死んでしまう。しかし、新版画で描かれた金魚は死ぬことはない。』また、店の売り上げはほとんど、新版画の制作や版画作品の購入に使っていたそうです。高い耐久性と品質を併せ持つ新版画の発展に、常に自信を持ってベストを尽くしていたことが伺えます。」

渡邊庄三郎の新版画への熱量と自信が見て取れるようなエピソードでした。貴重なお話をありがとうございました!

落語会やギャラリートークなどでより楽しめる

会期中には関連イベントとして、落語会やギャラリートークなどがあります。

●「美術館で落語を楽しもう」 日時:10月24日(土)①15:00~/②18:00~(各回約60分) ※24日は20:00まで夜間特別開館(入館は19:30まで) 落語家:林家きく麿(真打 林家木久扇一門) 会場:エントランスホール ※申し込み不要、聴講無料

●学芸員によるギャラリートーク 日時:10月17日(土)14:00~(30分程度) 会場:展覧会場内 ※申し込み不要、本展観覧料が必要

さらに、展覧会期間中に着物などの和装で来場した観覧者は、当日観覧料から500円割引になるそうです(前売り券は対象外)。

残存数の少ない中、初摺りの渡邊版約180点を一度に鑑賞できる機会は、かなり貴重ではないでしょうか。気になった人は、この機会に北九州市立美術館へ行ってみてくださいね。

「THE 新版画 版元・渡邊庄三郎の挑戦」
■会期:2026年9月12日(土)~11月8日(日)
■会場:北九州市立美術館 本館1階企画展示室(北九州市戸畑区西鞘ケ谷町2-1)
■開館時間:9:30~17:30(入館は17:00まで)
※10月24日(土)は20時まで夜間特別開館(入館は19:30まで)
■休館日:月曜、9月24日(木)、10月13日(火)
※ただし9月21日(月・祝)~9月23日(水・祝)、10月12日(月・祝)は開館
■観覧料:一般 1,500円(1,200円)/高大生 1,100円(800円)/小中生900円(600円)
※( )内は前売り券と20人以上の団体料金 ※障害者手帳を提示の人とその同伴者1人は無料(身体障害者手帳については等級が1~4級の場合に限る)
※北九州市在住の65歳以上の人は2割減免(公的機関発行の証明書などの提示が必要)
■公式特設ページ:https://kmma.jp/exhibition/the-shinhanga/
掲載しているすべての作品は、渡邊木版美術画舗版、渡邊木版美術画舗蔵

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