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ドラマ『ブリジャートン家』の世界へ。週末だけの英国貴族体験「ビーバーブルック」宿泊記

  • 2026.9.30
Courtesy of Beaverbrook Estate

ヨーロッパを旅するなら、大都市の中心部に宿をとるのが最も手軽で便利な選択肢だろう。観光名所や街の賑わい、交通の利便性はもちろん、レストランやショップの選択肢も実に豊富だからだ。

しかし一方で、イギリスの閑静な田園風景は、ジェーン・オースティンの小説からテイラー・スウィフトの楽曲『ザ・レイクス(the lakes)』時代を超えて人々の心を魅了してきた。摂政時代(まさにドラマ『ブリジャートン家』の世界観そのものだ)には広大な敷地を誇る貴族の邸宅が次々と建てられたが、現在も個人邸として残っているものはごくわずか。とはいえ、憧れの贅沢なカントリーライフを味わうために、タイムトラベルをしたり、大金をはたいて自ら館を所有したりする必要はない。少なくとも週末のひとときであれば、誰もがその特別な世界観を楽しめるのだから。US版「ハウスビューティフル」より。

Courtesy of Beaverbrook Estate

ロンドン中心部から南へわずか1時間、サレーのなだらかな丘陵地帯に佇む「ビーバーブルック・エステート」は、まさに理想のカントリーリゾートを体現したような場所。チェックインを済ませると、荷物はすぐさま手際よく運ばれ、一杯のコーヒーとともに本館(マナーハウス)のガイドツアーを提案された。歴史ある建築の荘厳さに圧倒されていた私は、迷わずその誘いを受けた。

イギリスの個人邸宅としては初となる本格的な映画試写室には、なんとエンパイア・ステート・ビルから移設されたという壁付け照明が灯る。そこから、かつてビーバーブルック男爵夫人が二方向から差し込む希少な自然光を活用して絵を描いていたというモーニングルームまで、館内を丁寧に巡っていく。自分の客室に入る前にこの邸宅が紡いできた豊かな歴史と背景に触れられたことで、今回の滞在はいっそう特別なものとなった。

日常から離れて羽を伸ばしたい人はもちろん、英国カントリー調のライフスタイルやインテリアのインスピレーションを探している人のために、予約前に押さえておきたい「ビーバーブルック」の魅力を余すことなく紹介しよう。

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ビーバーブルックの歴史

1909年に大規模な改修が施されたこのホテルは、かつて初代ビーバーブルック男爵ことマックスウェル・エイトケン卿が所有していた邸宅だ。新聞『サンデー・エクスプレス』を創刊し、後に『イブニング・スタンダード』のオーナーにもなった彼は、新聞業界が絶頂期を迎えていた時代に、自身のステータスシンボルとしてこの館を購入した。

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シアタールーム

館内のあちこちに、当時の華やかな面影が今も散りばめられている。大階段にあしらわれた当時のままの金属製の手すりや、英国の個人邸宅として初となったスイミングプール、そして政治的にもプライベートでも親交が深かったウィンストン・チャーチルをはじめ、ケネディ家など時代の要人たちとビーバーブルック卿が肩を並べる額入りの写真が、その栄華を雄弁に物語っている。

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バーラウンジ

気品あふれる本館には、かつてこの館にゆかりのあった人物の名を冠した18の客室が揃う。本館でのエレガントな滞在も魅力的だが、広大な敷地を存分に巡るなら「ガーデンハウス」や、2023年12月に誕生したコテージスタイルの新エリア「ザ・ヴィレッジ」に宿をとるのもおすすめだ。

敷地と客室

周囲を囲む豊かな森を散策するための自転車や電動バギーが自由に利用できるほか、私のように自分のペースでじっくり風景を味わいたい人のために、ウォーキング用の散策マップも用意されている。

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客室のインテリア

ニコル・ハーディングがデザインを手がけた「ガーデンハウス」は、心安らぐ隠れ家のような空間だ。趣のあるシッティングルーム(小リビング)は食前酒を楽しむのに格好の場所であり、飾らない廊下を抜けると、そのまま隣接する野菜畑へと導かれる。デザインスタイルは極めて伝統的な英国調。本物のコテージにふさわしい、洗練された「コテージコア(田園風インテリア)」の世界観が広がる。客室は全11室で、「コージー」が4室、「コンフィー」が6室、そしてテラスルームが1室。柄と柄を組み合わせたファブリックやフリンジ装飾、プリーツシェードのランプが、空間全体にクラシカルな温もりを添えている。

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客室のインテリア

客室デザインも、一般的なチェーンホテルのような画一的なものとは一線を画す。私が滞在した部屋は、壁面から造作家具に至るまで軽やかな淡い青緑色で統一され、ブルーのピンストライプ柄のヘッドボードがキングサイズベッドを主役として引き立てていた。周囲の瑞々しい緑と調和するインテリアは、「ガーデンハウス」の名通りボタニカルな情景にあふれ、繊細な植物図案のイラストや庭園をテーマにしたアンティーク本が飾られている。室内のカラーパレットはすべて敷地内の豊かな自然から抽出されたものであり、随所に配されたアンティークが、この邸宅の古き良き面影を今に伝えている。

Courtesy of Beaverbrook Estate

館内施設とサービス

中でも特に心を奪われたのがバスルームだ。壁と床は様々なトーンのゼリージュタイルで彩られ、窓辺にはヴィンテージのテラコッタの水差しが置かれていた。広大な敷地をじっくり散策した後は、猫脚のバスタブに浸かって旅の疲れを癒やすのが至福のひとときだ。

ゴルフコースやスパ棟、スポーツコート、さらには映画試写室まで備えたこの邸宅は、単に「羽を休めるための宿」にとどまらない。散策路をのんびり歩き、冷水風呂やスチームルーム、サウナが揃うサーマルスパでリフレッシュするのもよし、電動バギーで丘を登ってピックルボールに興じるのもおすすめだ。

Courtesy of Beaverbrook Estate

エンターテインメント

本館では1日に3回映画が上映されており(他のゲストと重ならなければ好みの作品をリクエストすることもできる)、お好みに応じてカクテル調合のマスタークラスや、ワイン・日本酒のテイスティングプログラムに参加するのもよい。ホスピタリティはまさに5つ星クオリティで、何か要望があればメッセージひとつでゲストリレーションズに繋がる。客室には無料のミニバーが用意されているほか、リクエストに応じてランドリーやルームサービスも利用可能だ。

また、ゴルフクラブの会員やレストランの利用客ではなく、「宿泊客だけ」に許された特別なプライベート空間として「ライブラリー」と「モーニングルーム」の2つがある。英国らしいあいにくの雨の日、モーニングコーヒーを片手にボードゲームを楽しむには最高のロケーションだ。私も客室の準備を待つ間、ライブラリーで仕事をすることにしたが、その温もりのある空間は、残したタスクを心地よく片付けるのにうってつけの場所だった。

Courtesy of Beaverbrook Town House

ロンドン市内にタウンハウスも

都市の中心部での滞在を望むなら、「ビーバーブルック」はそのリクエストにも応えてくれる。ロンドン・チェルシー地区の中心に位置する「ビーバーブルック・タウンハウス」だ。都会的でコンパクトなロケーションでありながら、本館と同じ上質なホスピタリティを提供しており、4つのフロアに広がる客室はわずか14室(うち2室のスイートは繋げて2ベッドルームスイートとしても利用可能)。すべての部屋には、ロンドンを象徴する劇場の名が冠されている。私が滞在したのは「シェイクスピアズ・グローブ」。ウォークインクローゼットと専用バスルームを備えたシングルルームだ。

こちらもニコル・ハーディングがデザインを手がけており、客室のほかバー、レストラン、プライベートダイニングルームを併設する。デザインの方向性は本館と共通しつつも、よりエッジの効いたアーバンな仕上がり。共有エリアはパステルカラーではなく、深みのあるシックな色調で彩られ、客室名や壁に飾られたヴィンテージの演劇ポスターなど、至る所にロンドンのナイトライフへのオマージュがちりばめられている。すべての客室にコンパクトなシーティングエリア、ミニバー、デスクが完備。私の部屋は淡いピンクの壁パネルが施され、バスルームには床から天井まで美しいエメラルドグリーンのタイルが敷き詰められていた。だが、このホテルの醍醐味は一室として同じ部屋がないことにある。ベルベットの天蓋付きベッドや、カーテンをあしらった4柱式ベッド、あるいは市松模様のタイルなど、訪れるたびに異なる表情を楽しめる。

Courtesy of Beaverbrook Town House

レストラン&バー

レストラン「フジ・グリル(The Fuji Grill)」は、日本のデザイン美学とロンドン中心部の洗練された雰囲気が融合した、心安らぐ空間だ。アボカドグリーンの壁に沿ってレザーのベンチシートと上質な木製テーブルが配され、中央には華やかなピンクのボックス席が連なる。各テーブルにはポータブルテーブルランプが置かれ、ムードある明かりを添えている。

一方で、ホテル内の「サー・フランクス・バー(Sir Frank’s Bar)」に足を踏み入れると、一転してより隠れ家的な温もりのある空間が広がる。とりわけ目を奪われたのは、コバルトブルーのタイルで飾られた柱と立体的なモールディングの壁パネル。ほの暗い照明、ベルベットのソファ、そしてハイグロス仕上げの艶やかなカウンターが、ジョージア調の歴史ある邸宅(実際には2軒のタウンハウスを統合したもの)を、大人のための洗練されたナイトスポットへと鮮やかに生まれ変わらせている。

Original Text: KATE MCGREGOR

>>US版『House Beautiful』のオリジナル記事はこちら

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