1. トップ
  2. 82歳の防災マスター「何もしてあげられなかった」から作った誰も取り残さないまちづくり

82歳の防災マスター「何もしてあげられなかった」から作った誰も取り残さないまちづくり

  • 2026.9.18

北海道胆振東部地震から8年。「言葉が通じるか」が、災害時に命を守る「分かれ目」になるケースがあります。
立ち上がったのは82歳の男性でした。

【特集】“じぶんごと”防災

「とても動揺した」外国人を襲った災害

言語の不案内な外国人を襲った災害。
「あの日、人生で初めて津波警報を聞いた」と話すのは、アメリカ出身で北海道白老町に暮らすシェルビーさん(41)です。

海辺に住むのは白老町が初めてというシェルビーさんを、2025年、あるできごとが襲いました。
カムチャツカ半島付近で起きた地震。白老町にも津波警報が発表されました。

Sitakke
津波警報発表時の様子(釧路、2025年7月30日)

シェルビーさんは「とても動揺したし、すぐに家を出られる準備もできていなかった」と振り返ります。

白老町には、425人の外国人が暮らしています。10年前は90人、4倍以上に増えています。日本語が不慣れな人も多く、津波から避難できる仕組みづくりが課題です。

何もしてあげられなかった…感じたもどかしさ

高台避難で感じたもどかしさと住民の支え。
「避難したときも、こんなに暑かった」と語るのは、しらおい防災マスター会の民部吉治さん(82)です。

北海道の認定を受けた「地域防災マスター」として地元で啓発活動をしている民部さん。

Sitakke
地域防災マスター(提供 しらおい防災マスター会)

2025年7月、津波警報で高台へ避難したとき、アジア系の観光客とみられる家族と会いました。

民部さんは「『台湾ですか?中国ですか?』と言ったら『中国だ』と。それ以上、話は通じなかった」と明かし、その家族に何もしてあげられなかったといいます。

しかし「別の住民の方が来て流ちょうな英語で子どもと話をして、避難所である学校へ連れて行った。白老町にもいろんな言葉を話せる住人がいることが分かった」と民部さんは振り返ります。

82歳男性の情熱で立ち上がったのは

Sitakke
白老防災通訳会(提供 しらおい防災マスター会)

民部さんは、地元の防災マスターたちとともに立ち上がりました。

しらおい防災マスター会の中村諭会長(69)は、「外国人とコミュニケーションできる人たちを集めようと、民部さんが自分の足で稼いで通訳の人たちを集めた」と話します。

その1人が、アメリカ出身の英語教諭、ヴァージニアさん(47)です。
彼女も、カムチャツカ地震の際、駅で足止めされた外国人観光客を目の当たりにしました。

ヴァージニアさんは「英語と日本語を話せる人が、何が起きているのかを明確に把握し、通訳して彼らを落ち着かせることが必要だった」と強調します。

誰も取り残さない防災へ

Sitakke

そして、2026年5月、民部さんたちが立ち上げたのが「白老防災通訳会」です。メンバーは14人。災害時には「通訳」と書かれたビブスをつけて「見える通訳者」となり、英語・ベトナム語・中国語・スペイン語で対応します。

しらおい防災マスター会の民部さんは、「自分の母国語が話せる人がいれば安心するだろう」と思いを込めます。

言葉の壁を越え、誰も取り残さない防災への一歩です。

【特集】“じぶんごと”防災

取材・文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あま

※掲載の内容は、HBC「今日ドキッ!」放送時(2026年9月2日)の情報に基づきます。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ