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少しのお酒でも、生涯の月平均飲酒量が多いほど目を閉じて立つ検査の成績が悪い傾向

  • 2026.9.18

風呂上がりの缶ビール1本だけが、今日のごほうび。そんな習慣を何年も続けている人は多いはずです。

お酒は少なければ体にほとんど害はない、と長く言われてきました。

その「少量」の目安は、標準的な1杯に換算して女性で1日1杯、男性で2杯までとされています。

この範囲なら、心臓や血管にはむしろ良いとさえ言われてきました。

スタンフォード大学の研究チームは、その範囲で飲んできた健康な大人を調べました。

すると、生涯に飲んだ量が多い人ほど、手先の器用さと平衡感覚の検査の成績が悪い傾向がありました。

手先では利き手の成績が、平衡感覚では目を閉じたときの成績が、飲酒歴と結びついていました。

対象は、たばこを吸わない21〜69歳の健康な大人83人。

直近の1年や3年にどれだけ飲んだかは、検査の成績と比例しませんでした。

関係していたのは、これまでの人生で積み重ねてきた量のほうでした。

手先の器用さと平衡感覚は、シャツのボタンをかけることから転ばないことまで、年をとってから自分で暮らすのに欠かせません。

研究チームは、どんな人を集めて、何を測ったのでしょうか。

研究内容の詳細は2026年7月20日に『Alcohol and Alcoholism』にて発表されました

目次

  • 「目を閉じて立つ」検査で、飲酒歴との差が出た
  • 「少量なら害はない」という見方は、どこまで正しいのか

「目を閉じて立つ」検査で、飲酒歴との差が出た

「目を閉じて立つ」検査で、飲酒歴との差が出た
「目を閉じて立つ」検査で、飲酒歴との差が出た / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

参加者は、精神や神経の病気や大きな持病を経験したことのない人たちです。

直近の1年に、短い時間で大量に飲む飲み方をしていないことも条件でした。

飲酒歴は、生涯の飲み方を振り返る質問票で聞き取りました。

そこから、直近1年と3年の杯数、生涯の総杯数、生涯の月平均の杯数を出しています。

手先の検査は、小さな棒を、向きがばらばらの穴へ素早く差し込む課題。

利き手と反対の手で1回ずつ行い、かかった時間を測りました。

平衡感覚の検査では、片足のかかとをもう片方のつま先に付けて立ち、腕を胸の前で組みます。

その姿勢を60秒保てるかを、目を開けた状態と閉じた状態で試しました。

目を閉じると視覚に頼れず、体の内側の感覚と耳の奥の平衡の器官だけで立つことになります。

手先の検査で成績と結びついていたのは、年齢と生涯の総杯数をかけ合わせた値でした。

この値が大きい人ほど、利き手の時間と、両手での課題を合わせた時間が長くかかりました。

関連の強さは中くらいで、利き手のほうがはっきりしていたと研究チームは述べています。

平衡感覚のほうは、少し違う形で出ています。

目を開けていれば、全員が60秒立ち続けられました。

目を閉じると、生涯の月平均の杯数が多い人ほど、最後まで立っていられない傾向がありました。

月平均が標準偏差(ばらつきの目安)1つぶん多いごとに、60秒を保ちきれるオッズ(見込みの比)は2.3分の1でした。

男女で成績の違いはありませんでした。

では、「少量なら害はない」という見方は、いま、どこまで揺らいでいるのでしょうか。

「少量なら害はない」という見方は、どこまで正しいのか

「少量なら害はない」という見方は、どこまで正しいのか
「少量なら害はない」という見方は、どこまで正しいのか / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

研究チームによると、その見方は近年、変わりつつあります。

ところが、どんな量でもいくつもの種類のがんのリスクが上がるという証拠が増えている、と研究チームは説明します。

目安以下の少量の飲酒でも、脳のいくつもの領域で構造や血流に異常が見られる、とも述べています。

ただし、見えていたのは脳の画像の上の変化だけ。

その小さな変化が、実際の体の動きの差として現れるのかは分かっていませんでした。

健康でたばこを吸わない大人を対象に、少量の飲酒と手先・平衡感覚の関連を同時に調べた研究は、発表されていなかったといいます。

今回の研究は、脳の画像ではなく、体の動きの検査でその問いに向き合いました。

言えるのは、少量しか飲まない健康な大人でも、生涯の飲酒量が検査の成績の悪さと結びついていた、という関連までです。

飲酒歴と検査は同じ時期に集めたもので、飲酒が原因で成績が下がったのかは、この設計では決められません。

手先で関連が見えたのは年齢と生涯の総杯数の組み合わせで、飲酒量だけの効き目とは分けられていません。

平衡感覚の差が出たのは目を閉じた条件だけで、日常のあらゆる姿勢に差があるとまでは言えません。

飲酒歴は、本人の記憶に頼る質問票で調べたものです。

【これまでの研究】

少量の飲酒と脳との関係は、大人数の脳画像でも調べられてきました。

ウィスコンシン大学マディソン校などの研究チームは以前に、おおむね健康な中高年3万6678人の脳画像を調べています。

登録先は、イギリスの大規模な健康データベース「UKバイオバンク」。

結果をゆがめうる多くの要因を統計で取り除いたうえで、飲む量と脳の構造との関係を見ました。

飲む量が多いほど、脳全体や灰白質(神経細胞が集まる部分)の体積が小さい方向に関連していました。

白質(神経の配線が集まる部分)の細かな構造も、同じ方向でした。

この関連は1日に1〜2単位(酒の量を数える単位)ほど飲む人ですでに見られ、飲む量が増えるほど強くなったと報告しています(関連研究)。

今回の手先と平衡感覚の研究チームは、この結果が今の飲酒の指針や関連する政策に関わってくる可能性があるとしています。

参考文献

Even light drinking is linked to worse hand dexterity and balance as we age (PsyPost)
https://www.psypost.org/even-light-drinking-is-linked-to-worse-hand-dexterity-and-balance-as-we-age/

Associations between alcohol consumption and gray and white matter volumes in the UK Biobank (Nature Communications)
https://doi.org/10.1038/s41467-022-28735-5

元論文

In healthy adults with low-level alcohol intake greater age and lifetime alcohol consumption are associated with poorer manual dexterity and higher lifetime consumption is related to worse postural stability
https://doi.org/10.1093/alcalc/agag055

ライター

天道銀河: 科学、歴史、心理、宇宙、生き物、テクノロジーなど、気になるものにはジャンルを問わず首を突っ込む雑食系ライターです。ひとつの分野を深く極めるというより、さまざまな知識を広く集め、意外なつながりを見つけるのが好きです。専門家ほど深くはなくても、好奇心の広さなら負けません。「こんな世界もあるのか」と思えるような、面白くてわかりやすい話題を届けていきます。

編集者

ナゾロジー 編集部

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