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映画『シャドウワーク』吉岡里帆、風吹ジュン、北村匠海らと対峙して――奈緒の心の内「𠮷野監督、薫の役で選んでくれてありがとう!」【ロングインタビュー】

  • 2026.9.17

吉岡里帆と奈緒がダブル主演で挑んだ映画『シャドウワーク』は、女性たちをかくまうシェルター“おうち”を舞台にした、サバイブサスペンス。暴力を振るう夫から逃れ、おうちのメンバーとなった吉岡演じる紀子と、おうちとある不審死とのつながりに気づく奈緒演じる刑事・薫という二人の視点で、物語が進んでいく。

予告篇でも解禁されているように、おうちはただ女性たちを保護するだけのシェルターではない。表向きは農園を営み、つつましやかに暮らしている女性たちが、裏では淡々と組織犯罪を行っているのだ。彼女たちが手を染めている組織犯罪とは、全国に点在するおうちの女性たちと情報を交換し、互いのパートナーを持ち回りで片づける交換殺人だった。

決して一筋縄ではいかないこの物語。おうちの実態に迫る薫だが、実は彼女こそまた警察庁捜査二課に勤めるエリートの夫・晋一(北村匠海)から暴力を振るわれている被害者であり…。強い正義感で事件を追う刑事としての顔と、一人の女性としての脆さを併せ持つ薫を演じた奈緒に、ロングインタビューを実施。作品と役柄への思い、そして共演者との芝居から受けた刺激などをじっくりと聞いた。

『シャドウワーク』は鑑賞後、非常に余韻が残りますし、同時に心もザワつく作品です。奈緒さんは脚本を読んだとき、どのように感じましたか?

戸惑いを覚えました。いつも作品を観終ると、答えやテーマを考える時間を持ちますが、この作品では「あなた自身はどう思いますか?」というのが大きな問いかけとなっていたので、答えは自分の中にあるのだと、とても戸惑ったんです。読んでいる最中から「これは正しい……いや、間違っているかもしれない」といろいろな気持ちが出てきたので、自分自身に問われているように思っていました。作品の中に「思考実験」というものが出てくるんですけど、私自身は思考実験をやったことがなくて、本作に触れたことで初めて得た視点でもありました。

「思考実験」とは「理想的な実験方法や条件を想定し、そこで起こると考えられる現象を理論的に追究すること」、つまり頭の中で結果を考えること、ですよね。

はい。そこに正解があるわけではないので、台本を読み終わったから答えがもらえるわけでもないんですよね。自分の中でずっと思考の疑問が残り続けるので、これは考え続けるもので、自分で自分の選択を決めないといけないんだな、という風に感じました。映画に参加する上で、答えを自分が持てるだろうか、決断できるだろうかと考えさせられるような読後感でもありました。

奈緒さんご自身は思慮深さがあり、ご自身のことを見つめたり考えたりされるのがお好きなのかなと思いましたが、そのあたりはいかがですか?

はい、考えることがすごく好きです。なので、どうしても自分自身が何か問題と直面したときに、事実を先に出して結論を急いでしまうような傾向があります。「なんで私はこう思ったんだろう」、「こうだから、こうだ」という原因みたいなものをいち早く探そうとしてしまうんです。もっと本来の自分自身のそのときに感じた思い……「悲しかった、怖かった、楽しかった、うれしかった」という気持ちも大事なのに、感情に向き合う時間が足りていないな、と感じます。日常生活ではそうやってついつい頭で考えてしまうことが多いけれど、お芝居をしているときは、自分の役の気持ちと一対一になれるんです。普段から、なるべくお芝居をしているときみたいに自分の気持ちに向き合う時間を作りたいな、と最近は感じています。

そして、本作では刑事の薫を演じました。役作りにあたって、何を大事に進めていきましたか?

薫さんのセリフを最初に台本上で読んでいるときに、さりげないセリフに見えるんですけど、そこに何十%の真実があって、何十%が今この空間で真実にたどり着きたいから発している言葉なのか、わからないなと思ったんです。どこからどこまでが本当のセリフなんだろう?、と。そこは𠮷野監督ともお話をしましたし、セリフをまず疑うところから始まったので私自身とてもスリルがありました。そして、薫さんの中には彼女自身が抱えている大きな影もあるので、本当にすごく揺れ動く役だなと思っていました。やり終わった後に、精神的な疲労感がすごく大きい役だったなと、思い返して今感じています。

奈緒さんから見て、薫はどのような人物だと受け取っていたんでしょうか?

一つ大きな薫さんの軸となっているのは、警察官を仕事として選んでいるということでした。誰かを守り、また一つの大きな正義の中で生きることを選んだ人だと思うので。そうやって誰かを守りたいという正義感を持っている人が、傷つけられてしまうという。きっと薫さんの中では思ってもみなかったようなことが起きて、傷ついた自分を救いたいと、どこかで願って今ここにいる人なんじゃないかな、と感じました。なので、睦美さんの事件を他者から見たら執拗に追いかけるのも、純粋な正義感というよりは、そこに自分を投影しているんじゃないかなと。「あの日の自分を助けたい。そうしたら、もしかしたら自分が何か変われるかもしれない」と思っているからではと感じていました。自分の中の大きな影に突き動かされて、今の選択を続けている人のように私の目には映りました。

本作では吉岡さんとW主演を飾りますが、ここまでご一緒しないW主演もあまりないのでは…と思ったりしました。

二つの軸が交差するお話なので、現場ではまるで違う映画を撮っているかのようでした(笑)。

おうちに薫が訪ねるようになってから、皆さんとのシーンが始まりますよね。吉岡さんはじめ、魅力的な俳優が勢ぞろいしていましたが、ご一緒していかがでしたか?

撮影前はすごくわきあいあいと皆さんとお話をさせていただいているけれど、シーンが始まった瞬間に、すごく緊張感が生まれるんです。やはりどうしても罪を犯しているという背景がおうちのメンバーにはあるので、“自分たちのおうちを守ろうとしている皆さんVS警察”という、対となるような関係性として対峙をするんですね。特に最初におうちに一人で訪ねるシーンのときに、1対6で皆さんと対面しているあの時間は、もう肌で感じるほどの緊張感があって! 本当に刺激的で楽しかったです。一方で、私の心は「今すごく贅沢な時間を過ごさせていただいているな」とワクワクしていました。6人の尊敬する俳優部の皆さんが、全員、私を見ているわけなんですよ!一人一人のお顔を見ているだけでも、私としてはすごく気持ちがぐらぐらと動くような、とても贅沢な時間でした。本当に「𠮷野さん、薫の役で選んでくれてありがとう!」という気持ちになりました(笑)。

今、奈緒さんがお話したようなことは逆におうちの皆さんも感じていらしたんでしょうね。

本当に、そうかもしれないです。というのも、試写を観たときに「こんな時間が、おうちの皆さんにはあったんだ……」と、あの緊張感の答えをまざまざと知ったんですね。試写の後、吉岡さんとお話したときに、「薫さんが一人でこんな風に戦っていたのを今日初めて知った。薫さんとおうちのシーンで対峙したときは気丈に見えたけど、私たちと同じように壊れてしまっているところがあったんだね」と言ってくださったんです。そんなことを、お互いに伝え合っていました。

役を離れたところでは和気あいあいとのことでしたが、皆さんとはどのようなお話をされていたんですか?

お互いのシーンの話は皆さんとはしていなくて、どちらかというと本当にたわいもない話ばかりでした。私を含めて7人がおうちにいることになるので、吉岡さんとさっちゃん(佐月絵美)とは一緒にお菓子を食べたり(笑)。風吹(ジュン)さんは『半分、青い。』からずっとご一緒させていただいているので、とてもお世話になっている先輩なんです。最近の近況報告をさせていただいたりしました。酒井若菜さんもファーストサマーウイカさんとも共演経験がありましたし、スタートがかかるまでは初日から本当に穏やかな時間を過ごさせていただいていました。

薫に暴力を振るう夫・晋一役の北村匠海さんとのシーンにも、非常に緊張感がありましたよね。

晋一さんとのシーンは、怖かったですね。北村さんとは特に事前に何かを話し合うことなくお芝居をしたこともあり、車の中で、薫さんが晋一さんからいつもきっと受けているであろう圧力をかけられるシーンは、本当にただただ怖かったです。その瞬間に薫さんの中でどういった影があるのかが、一気に埋まるような感覚がありました。

ただ、もちろん休憩時間はすごく穏やかな話をたくさんしました。アクションでは私が受けるほうで、北村さんが攻めるほうだったので、「(殴られる時の)受け方が上手ですね」と北村さんが褒めてくださって(笑)。とても自信を持って現場に出ることができたので、感謝しています。

善悪の審議は置いておいて、作品の象徴であるおうちのような場所に救われている人たちも多くいるのではと感じます。奈緒さんは、おうちをどのようにとらえ、感じていましたか?

「駆け込み寺」とよく言いますけど、昔はきっとお寺があって、そこにいろいろな事情を抱えた人たちが駆け込んでいたんだろうと思うんです。今回のおうちという存在は、どこかそこにリンクする部分が個人的にはあると思っています。それで置き換えると、お寺のような場所は自分のことを律する場所でもあると思うので、おうち自体がただ逃げ込むだけではなく、そこで自分自身でこのおうちを出ていけるようにするという場所なんだと思うんですね。自分を律してまた世の中に行けるようにするという場所だったので、私自身はこういう場所があったらいいなと思いました。

人が見守られるということは、社会で生きる上では誰にとっても必要なことだと思っています。自分が見守る側になるときもあれば、当然、見守られる側になるときもありますし、その役目を交換できるような場所があるのは必要なことだと思いました。とはいえ、そういった特別な場所がなくても、社会の中で自然と人を見守り、互いに見守り合えるようになるのが一番だと思います。

最後に、FILMAGAは映画好きが多く集まるサイトなので、最近観た映画やドラマで印象に残った作品をぜひ教えてください。

韓国映画で、ヨン・サンホ監督の『顔 -かお-』です!とても勇気をいただいた一本でした。すごく低予算で作られたと聞いてから拝見したので、日本も映画の制作が簡単ではない状況の中で、低予算だとしてもこんな風に面白い映画、そして深い部分ですごく自分の心情にタッチしてくれるような作品が作れるんだと、とても勇気をいただきました。私ももっと頑張ろうと思いました。

もともとヨン・サンホ監督がお好きでご覧になったんですか?

好きです!たまたま韓国に旅行で行っていたときに、劇場公開されているタイミングだったので韓国の映画館で観ました。「めちゃくちゃ面白い、日本に来ないかな~」とすごく心待ちにしていたんです。今、日本で公開されていますよね?ぜひ皆さんにも観ていただいて、一緒に話したいです。

(取材・文:赤山恭子)

映画『シャドウワーク』は、2026 年9月25日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。

出演:吉岡里帆、奈緒、美保純、酒井若菜、ファーストサマーウイカ、佐月絵美、北村匠海、原嘉孝 (timelesz)/ 風吹ジュン
監督・脚本:𠮷野竜平
原作:佐野広実『シャドウワーク』(講談社文庫)
公式HP:shadowwork-movie.jp
(c)佐野広実/講談社 (c)2026「シャドウワーク」製作委員会

※2026年9月15日時点の情報です。

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