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「だから、着てないって言ってるじゃない」汚れたシャツを持ち込んだ客。困った私と店長が代わって変わった空気

  • 2026.9.16

レジの前で、声が少しずつ大きくなった

アルバイトを始めて半年たった、平日の夕方だった。

そのとき、レジに立っていたのは私ひとりだった。

紙袋を提げた男性がやってきて、中からシャツを一枚取り出した。襟の内側には、白っぽい汚れが薄くついている。袋の中には、切り取った値札も入っていた。

「これ、家で見たら汚れてたんだけど。返品したいんだよね」

「申し訳ありません。商品を確認させていただいてもいいですか」

シャツを明かりの下で確認したが、その汚れがいつついたものなのか、私には判断できなかった。

「すみません。私だけでは返金の判断ができないので、責任者を呼びますね」

すると男性は、少し眉をひそめた。

「いや、最初からこうだったんだよ。俺がつけたみたいに言われても困るんだけど」

「疑っているわけではないんです。ただ、私の判断だけでは返金できなくて…」

「だから、着てないって言ってるじゃない」

男性の声が少し大きくなった。

私はもう一度頭を下げた。

「申し訳ありません。責任者に確認しますので、少々お待ちください」

責任者を呼んだあとも、男性はレジの前でシャツを手にしたままだった。

「こんなの、買ったときに気づくわけないだろ」

「はい。お話は責任者にも伝えます」

「最初からこうだったんだよ。本当に」

何度説明しても、男性は同じところへ話を戻した。

その間にも会計を待つ客が増え、私の後ろには四人、五人と列ができていった。待っている人たちを見るたび、胸のあたりが落ち着かなくなった。

「お待たせして、申し訳ありません」

列の客へ頭を下げると、男性がこちらを見た。

「まだ俺の話、終わってないよね?」

「はい。責任者が来ましたら、続きはそちらで伺います」

強く言い返すこともできず、私はそれ以上何を言えばいいのか分からなくなっていた。

店長が代わると、ようやくレジが動いた

しばらくして、店長がレジまで来た。

「お待たせして申し訳ありません。ここからは私が伺います」

男性はすぐに店長のほうへ向き直った。

「これ、最初から汚れてたんですよ。さっきからそう言ってるんです」

店長はシャツを受け取り、汚れを確認した。

「分かりました。こちらで確認します。ほかのお客様のお会計もありますので、あちらのカウンターでお話を伺ってもよろしいでしょうか」

男性はまだ納得していない様子だったが、「じゃあ、ちゃんと見てくださいよ」と言って紙袋を持ち直した。

店長と男性が接客カウンターへ移ると、レジの前から大きな声が消えた。

私は一度息を吐き、列の先頭へ頭を下げた。

「大変お待たせしました。次のお客様、どうぞ」

自分でも驚くほど、いつもの声が出た。

止まっていた列が少しずつ進み、バーコードを読み取る音がまた鳴り始めた。

しばらくして、品出しから戻ってきた同僚が隣のレジへ入り、小声で聞いてきた。

「さっき、ずいぶん声してたけど…大丈夫?」

私は思わず肩の力を抜いた。

「うん。『最初からこうだった』って何度も言われて。店長に代わってもらうまで長く感じたよ」

「それはきついね。こっちは私が開けるよ」

同僚はすぐに隣のレジを開けた。

「次にお待ちのお客様、こちらへどうぞ」

列が二つに分かれると、ようやく人の流れが戻っていった。

その後も店長と男性のやり取りは続いていた。男性が店を出るまで含めると、最初にレジへ来てから30分近くたっていたと思う。

会計を終えた女性客が、商品を受け取りながら私に声をかけた。

「大変だったね」

「お待たせして、本当にすみませんでした」

「いいのよ。あなたも困ってたでしょ」

女性はそれだけ言うと、袋を持って出口へ向かった。

接客カウンターを見ると、店長がシャツを確認しながら男性と話していた。

結局、返品がどうなったのかを私は知らない。ただ、さっきまで声が響いていたレジの前に、いつもの音が戻ってきたことだけは、妙にはっきり覚えている。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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