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ノルウェー王室に何が起きている? 新国王ホーコン8世を揺るがす「5つの問題」

  • 2026.9.15
Patrick van Katwijk / Getty Images

「国民の祖父」と慕われたハーラル5世の国葬が執り行われ、新たな時代へと舵を切ったノルウェー王室。しかし、新国王ホーコン8世とメッテ=マリット氏新王妃が率いる新体制のもと、王室を取り巻く数々の問題が、今改めて厳しく問われている。王妃の連れ子による有罪判決と国葬参列をめぐる波紋をはじめ、過去のエプスタインとの交友関係、そして命に関わる王妃の健康不安まで。親しみやすいオープンな気風で知られてきたノルウェー王室が、世代交代のいま直面している「5つの切実な問題」を改めて読み解く。

※敬称は現在のものを使用。

Patrick van Katwijk / Getty Images

有罪判決を受けた長男マリウスが国葬へ。王室の「特別扱い」と身内びいきに批判集中

新体制へと移行したノルウェー王室に対し、今国民から最も激しい怒りと不信感が突きつけられているのが、メッテ=マリット王妃の「連れ子」である長男マリウス・ボルグ・ホイビーをめぐる一連の対応だ。

批判の根底にあるのは、彼が引き起こした前代未聞の刑事事件である。2024年8月にオスロ市内で元交際相手への傷害容疑で逮捕されたことを皮切りに、その後の捜査で過去のパートナーへの暴力や薬物所持、性的暴行など計38件の罪状で起訴され、2026年6月15日にはオスロ地方裁判所が禁錮4年の実刑判決を下している。現在は控訴中で、足首に電子監視モニターを装着した状態での自宅軟禁下に置かれている身だ。

さらに、社会的な反発を一層大きくしたのが、ハーラル国王の逝去に伴い、彼に対して相次いで与えられた特例の外出許可だった。

Ole Berg-Rusten

2026年8月下旬の危篤に際して病室へのお見舞いが許可されると、国王の棺を王宮へと運ぶ車列の行列への参加が認められ(写真)、9月9日に行われたオスロ大聖堂での国葬にも正式に参列したのだ。ダークスーツを纏い、ロイヤルメンバーと肩を並べて厳かに祈りを捧げる姿が生中継されると、国内では「明らかなVIP待遇だ」と批判が殺到した。

重大な性犯罪で実刑判決を受け、司法の管理下にある人物が、特例措置によって国葬に参列したこと。司法の判断とはいえ、彼を他の孫たちと同列の親族席に迎えた王室の姿勢は、一般市民との処遇の差や身内びいきとして厳しく問われている。

Rune Hellestad - Corbis / Getty Images

「王妃の資格なし」と世論は反発。エプスタインとの関係と長男の罪に揺れる新王妃

ハーラル国王の逝去に伴い、夫ホーコン8世の即位とともに「王妃」の座に就いたメッテ=マリット王妃。しかし、国中が深い悲しみに包まれるなか、新たな王妃を迎える国民の反応は極めて厳しいものだった。ソーシャルメディア上には「王室の尊厳にふさわしくない」「王妃(クイーン)を名乗る資格などない」という声が溢れ、「納税者は、レイプ犯の息子を持つエプスタインの友人に税金を払い、甘やかしているのか」といった辛辣な批判まで飛び交う事態となっている。

人々の不信感を煽っている最大の原因は、性犯罪者ジェフリー・エプスタインとの過去の深いつながりだ。2019年に面会の事実が報じられた際、「知人の紹介で数回会っただけ」と釈明していた。しかし、2026年1月に米司法省が公開したエプスタイン・ファイルによって状況は一変。ファイル内で王妃に関する記述や言及は1000回以上に及び、親密な私的交流の数々が明るみに出たのだ。

Rune Hellestad - Corbis / Getty Images

流出したメールからは、2011年に「あなたの評判はあまり良くないようね」と相手の前科を冗談めかして触れていたことや、2013年にフロリダ州パームビーチにあるエプスタイン所有の別荘をプライベートで利用していた事実が判明。さらに世間を呆れさせたのが、当時15歳だった長男マリウスのPC壁紙について「サーフボードを持った裸の女性の画像を提案するのは、母親として不適切かしら?」とエプスタインに相談していたやり取りだ。2026年に入り、王室を通じた謝罪声明に続いて公共放送NRKの単独インタビューで「彼に騙され、操作されていた」と涙ながらに語ったものの、失われたモラルへの信頼を取り戻すには至っていない。

さらにこの逆風に拍車をかけているのが、前述したとおり、連れ子である長男マリウス・ボルグ・ホイビーによる性的暴行の実刑判決だ。王妃自身の倫理観が問われるなか、身内による前代未聞の凶行に対しても毅然とした態度を示せていないと受け止められ、世論の苛立ちは頂点に達している。かつてシングルマザーからロイヤル入りを果たし、“現代のシンデレラストーリー”と称えられていたが、新王妃としての第一歩は、かつてないほどの厳しい視線に晒されている。

Per Ole Hagen / Getty Images

肺移植を経てなお続く療養生活。新国王の即位式も欠席した新王妃に募る健康不安

相次ぐスキャンダルに加え、新国王を支える公的活動において大きな懸念材料となっているのが、メッテ=マリット王妃の健康不安だ。

王妃が肺の組織が徐々に線維化して呼吸機能が低下していく難病、「慢性肺線維症」の診断を公表したのは2018年10月のこと。投薬治療を続けながら公務に向き合ってきたものの、2026年4月には鼻に細い酸素チューブを装着して公務に出席する姿が目撃されるなど、病状の悪化が目に見えて表面化していた。そして同年6月、オスロ大学病院で緊急の肺移植手術を受ける事態に。手術直前には、公務で日本を訪れていた夫ホーコン王太子(当時)が日程を切り上げて急遽帰国し、シドニー大学へ留学中だった長女イングリッド・アレクサンドラ王女もオーストラリアから急行するなど、緊迫した空気が伝えられていた。

Patrick van Katwijk / Getty Images

手術自体は無事に成功し、7月には退院したものの、体調は万全とは言えなかった。9月1日に行われた夫ホーコン新国王の即位宣誓式では、術後合併症によるドクターストップがかかり、出席を急遽見送る事態に。新体制の門出を祝う場に、王妃の姿はなかった。

9月9日のハーラル国王の国葬には参列を果たしたものの、依然として厳重な療養生活が続いている。体調の波が激しいなか、新王妃としての本格的な公務復帰にはまだ時間がかかりそうだ。

Javad Parsa

繰り返される商業利用とスピリチュアル活動。“シャーマン婚”マッタ=ルイーセ王女に根強く残る「称号剥奪」の世論

新体制へと持ち越されることとなった複雑な課題の1つが、ハーラル国王の長女マッタ=ルイーセ王女と、アメリカ人の自称シャーマン、デュレク・ヴェレットをめぐる問題だ。

王女の型破りな活動は長年物議を醸してきた。独自のスピリチュアルビジネスを展開していた彼女は、2019年にデュレクとの交際を公表後、商業活動で「王女」の称号を使わないことで王室と合意。2022年には公務からも退いたが、称号とビジネスの曖昧な関係は解消されなかった。

その不満が一気に再燃したのが、2024年8月に行われたふたりの結婚式である。ハロー誌やNetflixに独占取材権を売却したことや、ウエディング記念のジンに王女の称号ラベルを使用した問題など、ロイヤルとしてのタイトルを商売に利用する姿勢に国民の怒りが爆発。さらに世論を逆なでしているのが、夫デュレクの言動だ。感染症を防ぐと謳う高額メダルの販売や非科学的な主張をめぐり批判が絶えず、私生活でも2026年3月に新居の無許可増築申請や近隣トラブルで改築工事がストップするなど、話題に事欠かない。

Aflo

2024年9月の結婚直後に公共放送NRKが行った世論調査では、国民の約7割(71%)が「(マッタ=ルイーセ)王女の称号を剥奪すべきだ」と回答した。娘への愛情から称号維持を認めてきたハーラル国王が世を去った今、弟であるホーコン8新国王がこの長年の課題にどう対処していくのか、国民の関心が集まっている。

なお、重い腎不全を患う夫デュレクの体調面にも懸念が残る。2026年8月にオスロ大学病院で腎臓移植手術を受け、術後療養のため前国王の逝去に伴う追悼行事への出席を見送っていたが、9月9日の国葬には王女に付き添われ、公の場に姿を見せた。(写真)。

LISE ASERUD / Aflo

重なるトラブルと愛され国王の逝去。新国王と22歳の若き王女にかかる期待

長男の事件や新王妃の過去と体調、そして王女夫妻のビジネス騒動など、いくつもの問題を抱えたまま迎えた今回の世代交代。2026年初頭に公共放送NRKなどが行った世論調査では、王室支持率が過去最低水準となる60%前後にまで落ち込むなど、すでにシビアな評価に晒されていた王室だが、精神的支柱だった前国王を失った今、これら家族のトラブルに対する世論の批判は、新体制へと直接向けられている。飾らないオープンな魅力で親しまれてきたロイヤルファミリーも、いまやかつてない正念場を迎えているのだ。

とはいえ、新体制の未来が不安ばかりというわけではない。新国王となったホーコン8世自身は、長年気候変動問題や人道支援に情熱を注いできた実直なリーダーとして、国民からの信頼も厚い。

Pool / Getty Images

そして何より、王室のイメージを一新するキーパーソンとして注目を集めているのが、新たな王位継承者となった22歳の長女、イングリッド・アレクサンドラ王女である。15カ月の厳しい軍務をやり遂げ、現在はオスロ大学で国際関係論を学ぶなど、知性とモダンな気品を兼ね備えた彼女は世代を問わず厚い支持を得ている。公務で見せる洗練されたミニマルなファッションや自然体の振る舞いも、新たな時代のロイヤル像として好意的に受け止められている。

家族が引き起こしたスキャンダルの嵐のなかで、誠実な新国王と聡明な若きプリンセスは、失われかけた王室の威厳と信頼を取り戻すことができるのか。新体制となったノルウェー王室の行方に、世界中から注目が集まっている。

Patrick van Katwijk / Getty Images
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