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「もっと上の人はいないんですか」何度説明しても終わらない電話。だが、責任者が応対履歴を伝えた結果

  • 2026.9.16

言い方を三度変えても、同じところに戻ってきた

受電の席に座って二年目の秋だった。午後の波が少し落ち着いたころに電話を取ると、男性はいきなり強い口調で切り出した。

「その決まり、いつからそうなってるんですか。そんな話、聞いてないんだけど」

「お申し込みの際にお渡しした書面にも、同じ内容を記載しております」

「いや、その書面を見た覚えがないんですよ。今初めて聞いたようなものじゃないですか」

声にはかなり苛立ちがにじんでいた。

私は結論から伝えたり、書面の該当箇所を案内したりと、言い方を変えながら三度説明した。

それでも、話は同じところへ戻ってくる。

「だから、納得できないって言ってるんです。もういいです。上の人に代わってください」

私はいったん保留にし、斜め向かいにいる責任者へ手を上げた。

「すみません。同じ内容を何度か説明したんですが、責任者と話したいそうです」

「分かった。履歴だけ確認させて」

それまでの経緯を短く伝え、対応を責任者に引き継いだ。

私は次の入電を取りながら、ときどきそちらを見た。

責任者は声を荒らげることもなく、「はい」「そうでしたか」と相づちを打ちながら、手元に何かを書き留めている。

それでも、ときおり受話器から男性の大きな声が漏れてきた。

「あなたじゃなくて、もっと上の人はいないんですか」

しばらくすると、また似た言葉が聞こえてくる。

電話が切れたのは、それから約30分後だった。

受話器を置いた責任者に、近くの先輩が振り返った。

「…長かったですね。大丈夫でした?」

責任者は少し疲れたように息をつき、メモを閉じた。

責任者は、日付と時刻を上から順に読み上げた

これで終わったと思い、私は冷めたお茶を一口飲んだ。

ところが十五分ほどして、同じ番号が画面に表示された。2度目の入電だった。

一瞬、受話器を取る手が止まった。すると、それに気づいた責任者がこちらを見た。

「さっきの方だよね。私に回して」

対応を引き継ぐと、男性はすぐに話し始めた。

「さっきの説明なんですけど、やっぱり納得できないんですよ」

「承知しました。では、これまでにどのようなご案内をしているか、一度確認しますね」

責任者は応対履歴の画面を開いた。

「先月十二日の十四時二分に、書面の五ページ目をご案内しています。十八日の十時四十分にも、お電話で同じ内容をお伝えしています」

そこで少し間を置き、今日の記録へ目を移した。

「本日も十五時十一分から、担当が言い方を変えながら三度ご説明しています。十五時二十六分からは、私がお話を伺っています」

向こうから何か返ってきたらしく、責任者は一度だけ「はい」と答えた。

「納得できないというお気持ちは分かります。ただ、同じご質問であれば、こちらからお伝えできる内容も変わらないんです」

責任者は画面に並ぶ履歴を見ながら、落ち着いた声で続けた。

「またお電話をいただいた場合も、この記録を確認したうえで、同じご案内をすることになります」

受話器の向こうが静かになった。

しばらくして、さっきまでとは違う低い声が返ってきた。

「…分かりました。もういいです」

それだけ言って、通話は切れた。

同じ番号から電話がかかってくることは、その日はもうなかった。

責任者は席へ戻る前に、私の机の端へメモを置いた。日付と時刻、伝えた内容、相手から言われたことが簡潔に並んでいる。

「一生懸命、ずっと言い方を変え続けなくてもいいんだよ」

私が顔を上げると、責任者はメモを指で軽くたたいた。

「きちんと残しておけば、『前にもこうお伝えしています』って、落ち着いて話せるから」

その日の応対記録を、私はいつもより少し丁寧に書き残した。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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