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朝ドラ【風、薫る】亀吉(三浦貴大)の再登場「母ちゃん見習ってわがままに生きろ」に、元夫婦の間に流れた時間を感じた

  • 2026.9.14

朝ドラ【風、薫る】亀吉(三浦貴大)の再登場「母ちゃん見習ってわがままに生きろ」に、元夫婦の間に流れた時間を感じた

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。近代看護界の先駆者となった2人の女性を主役とする物語。「風、薫る」のレビューで、より深く、朝ドラの世界へ! ※ネタバレにご注意ください

「これでよかったんだよ、私とシマケンさんは」

『明治のナイチンゲール 大関和物語』(田中ひかる著・中央公論新社)を原案とし、激動の明治時代を駆け抜けた二人のナースを、見上愛・上坂樹里のダブル主人公として描くNHK連続テレビ小説『風、薫る』。

第24週のサブタイトルは「環」。そのタイトルの通り、りん(見上愛)の一人娘の環(瀧七海)を軸に描かれていく展開となった。

環はかつてりんが結婚していたモラハラ夫の亀吉(三浦貴大)との間に生まれた娘である。りんは亀吉との生活に耐えきれず東京へと飛び出し環を育てるなか、やがて捨松(多部未華子)や直美(上坂樹里)と出会い、トレインドナースへの道へと歩き出していった。

孤児として生まれ育ち〝家族〟という存在に恵まれなかった直美にとっても、環は娘のような存在としてあり続け、直美は〝第二の母〟と呼ばれたりもした。りん、直美、そして前週この世を去ったりんの母・美津(水野美紀)、看護婦会の仲間や団子屋のチュウ(若林時英)など、作中のさまざまな人に見守られながら成長した。視聴者にとっても、りんや直美の看護師としての成長とともに、環の成長は物語の中で見守り続けられてきた。

そんな環も、女学校の最上級生となり、その先の進路を考える時期にきていた。二人の「母」の背中を見て育った環は、看護婦への憧れはあり、りんの働く姿を見学したりもしていた。しかし、環の絵に対する強い思いは前週から描かれており、その道への思いもある。はっきりとした進路を決めかねる日々を送っていた。看護婦として真剣に患者と向き合う母の姿を見て、生半可な憧れだけで選んではいけない世界であることを痛感したこともまた、環の迷いにつながってもいた。

そんな環の前に現れ、道標となりそうなのが、甥っ子の進学に合わせて再び上京したシマケン(佐野晶哉)だ。現在は郵便配達夫として働いているという。髪を切り、少したくましくなったようにも見える。

環の道標としての役割はのちに記すが、まずはそんなシマケンとりんの、久しぶりの再会である。
「何も言わずに出て行って…って謝るのも違うか」
「はい…違いますね」

なんともつつましやかな、二人らしいやりとりである。シマケンは初めて身を粉にして働き、ようやく人並みになれた気がすると、少し照れたように笑う。

突然姿を消したことを責めるでもなく、事情を細かく語ったり聞いたりするでもなく、「行間」で気持ちを読み取るようなやりとりは、なんとも二人らしい。再会後、直美にどうだったか聞かれ、
「これでよかったんだよ、私とシマケンさんは」
というりん。この一言に二人の間に流れた時間、そして戻ることのできない距離が表されているようだった。

「母ちゃん見習ってわがままに生きろ」

さて、シマケンと環である。かつて小説家を目指す道の途中で夢やぶれたシマケンは、環の悩みを一番理解できるのかもしれない。シマケンもまた、環が幼いころから優しく見守ってきた存在である。

環の絵への思いは、母のりんにはっきり打ち明けたことはなかった。環にとっても理解者ということだろう、環はこれまで描き続けてきた絵をシマケンに見せた。シマケンはそんな環の描いた絵を興味深く眺め、なんともうれしそうな表情を見せる。まだまだ真似事の域だと言う環に、「クリエイトは必ず真似ごとから始まる。学ぶの語源は『まねぶ』とも」と道は違えど「クリエイト」な道を目指したからこそ分かる視点から環を勇気づける。

環にとって、シマケンと過ごした時間、シマケンから受け取った言葉が自分の絵を描く原点となっていた。シマケンは、一度でも何かを生み出す喜びを知ってしまうとそこから逃れられなくなる、それが創作の恐ろしさだと、自身の思いを重ね合わせるように環に言い、シマケンなりに背中を押す。

押された背中の勢いで、環は絵を描きたいことをりんに打ち明ける。そして、シマケンに「明光新報」の編集長・綿貫(小松和重)を紹介してもらう。

「素質はあっても、そんなやつはごまんといる」と、生きていくには過酷な道であることを告げるが、また絵を見せに来るように言う。

綿貫はシマケンがかつて小説の原稿を見てもらい、連載を目指していた相手でもある。シマケンに最終的に弱さを指摘した存在もある。そのやりとりを見るあたたかな眼差しは、自身が途中で手放した夢を託すようにも見えた。

そして、今週もうひとつの「再会」が描かれた。かつてのりんの夫、亀吉の再登場である。酒をやめ、まっとうに生きているようだ。亀吉とりんたちをつなぐのもまた、環の存在だった。亀吉の母・貞(根岸季衣)もまた、この世を去っていた。亀吉の母、環にとっての祖母は、字を知らないながらも一生懸命たどたどしく環への手紙をしたためていた。つたない文字で記された、環の幸せを願う思い、そこには嘘偽りはないのだろう。

幼いころにりんに連れられ上京し、父も祖母も自分のことなど覚えていないかと思っていた環は、さまざまな人たちの思いをあらためて実感する。亀吉にも人生の迷いを見抜かれ、おめえの母は自分勝手な女だから気にするなと言われる。

「母ちゃん見習ってわがままに生きろ」
この亀吉の言葉や態度にもまた、元夫婦の間に流れた時間を感じさせられる。

環を軸にさまざまな人々の関係性が大きく動き、環自身の人生も、大きく動き出そうとしている。物語もいよいよ終盤、いろいろな周囲の人たちの思いを背負いながら、母とは違う自分の道を歩き出そうと決意する環、そしてりん、直美、二人の主人公の歩く道はこの先どう展開し、着地していくのか。期待が高まる。

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