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「今は無理。お願い、帰って!」隣室から響いた男女の言い争い。翌朝、私が見たものと隣人の様子

  • 2026.9.14

深夜1時、隣の玄関から声がしていた

五十代になった今でも、以前住んでいた集合住宅での、あの一晩のことは妙にはっきり覚えている。

隣には独身の女性が住んでいて、廊下で会えば挨拶をする程度の付き合いだった。ときどき、親しい様子の男性が部屋を訪ねてくるのを見かけることもあった。

その日はなかなか寝つけず、何度も枕元の時計を見ていた。深夜1時を回ったころ、共用廊下のほうから男性の低い声が聞こえてきた。

「いるんだろ。ちょっと開けてよ」

少し間があって、隣の部屋から女性の声が返った。

「もう遅いから。今日は帰って」

「話するだけだから。すぐ終わるって」

「今は無理。お願い、帰って!」

私は布団の上に起き上がり、電気もつけないまま玄関のほうへ耳を澄ませた。

しばらくすると、男性の声が強くなった。

「なんで開けてくれないんだよ」

「もう帰ってって言ってるでしょ」

「…開けろよ」

その直後、隣の玄関あたりから、扉を強く叩くような鈍い音が三度続いた。

ドン、ドン、ドン。

思わず体が固まった。

このまま続いたら、どこかに連絡したほうがいいのかもしれない。そう考えているうちに、声は途切れた。

やがて廊下を歩く足音が聞こえ、少しずつ遠ざかっていった。

隣からは、それきり何も聞こえなかった。

翌朝、隣の扉が開いた

ほとんど眠れないまま朝になった。

いつもの時間に玄関を開けると、隣の扉の前に置かれていた小さな玄関マットが大きくずれていた。

昨夜の音を思い出し、私は思わず隣の扉を見た。

声をかけたほうがいいのだろうか。

そう迷っていると、ちょうど内側から鍵の開く音がした。

扉が開き、隣の女性が出てきた。

一瞬、何と声をかければいいのか分からなかった。

向こうも私の顔を見ると、少し気まずそうに立ち止まった。

「…昨日、うるさかったですよね。すみません」

私は慌てて首を振った。

「それはいいんですけど…大丈夫でした?」

女性は少し間を置いてから、小さくうなずいた。

「はい。もう大丈夫です」

詳しいことを聞いていいのか分からず、私も「そうですか」とだけ返した。

女性はずれていた玄関マットを足で元の位置に戻すと、「ご心配かけました」と小さく頭を下げて、階段のほうへ歩いていった。

結局、あの夜に二人の間で何があったのか、私は知らない。

ただ、玄関越しに聞こえた「帰って」という声だけは、今でも妙にはっきり覚えている。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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