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「今、暇だから話せるよ」新幹線の指定席で15分続いた通話。だが、乗務員に声をかけられた男性の反応

  • 2026.9.12

座るなり、大きな音で動画を流し始めた

孫の顔を見に行くため、久しぶりに新幹線の指定席を取りました。膝の上で文庫本を開いたところでした。

発車して間もなく、通路をはさんだ向かい側の席に五十代くらいの男性が腰を下ろしました。

男性は荷物を置くと、すぐに携帯を取り出してテーブルに立てかけます。

次の瞬間、動画の笑い声や効果音が大きく響きました。

思わず顔を上げると、前の席の人もちらりと振り返っています。

男性は気づいていないのか、そのまま画面を見続けています。

「結構、聞こえますね…」

近くの女性が、誰に言うでもなく小さくつぶやきました。

私は「そうですね」とだけ返し、文庫本に目を戻しました。

しかし、文字を追っても内容がなかなか頭に入りません。

しばらくすると、男性の携帯に着信がありました。

「もしもし。おう、どうした?」

男性はそのまま席で電話に出しました。

相手から何か聞かれたのでしょう。

「いや、大丈夫、大丈夫。今、暇だから話せるよ」

「まだ話してる……」と思ったころ

最初はすぐに終わるのだろうと思っていました。

ところが男性の声はどんどん弾んでいきます。

「いや、それ俺も思ったんだよ」

「だろ?だからさ、来週また集まろうって話になってて」

時折、大きな笑い声まで混じります。

私は何度か本を開き直しましたが、やはり集中できません。

ふと腕時計を見ると、電話が始まってから15分ほどたっていました。

斜め後ろから、小さなため息が聞こえます。

「まだ話してる……」

誰かがぼそっと言いましたが、男性には聞こえていないようでした。

私も「少し声を落としてもらえますか」と言おうか迷いました。それでも、知らない相手に声をかけるのは勇気がいります。結局、言葉を飲み込んでしまいました。

乗務員が足を止めた

そのとき、連結部の扉が開き、乗務員が通路を歩いてきました。

男性の席の横まで来ると、一度足を止めます。

「お客様、恐れ入ります」

男性は電話を続けたまま、少し驚いた顔で見上げました。

「はい?」

「お電話はデッキでお願いしております。ご移動をお願いできますか」

男性は一瞬、周りを見回しました。

そこで初めて、何人もの人が自分のほうを気にしていたことに気づいたように見えました。

「あ…そうですね。すみません」

先ほどまでの大きな声が、急に小さくなりました。

「ごめん、ちょっと車内だから。またあとでかけるわ」

電話を切ると、男性は携帯を伏せてテーブルに置きました。

「ご協力ありがとうございます」

乗務員が一礼して歩き出します。

その瞬間、近くにいた女性が小さく息を吐きました。

「……やっと静かになりましたね」

私も思わず笑ってしまい、「ですね」と小さく返しました。

男性はそれ以降、携帯から音を出すこともなく、静かに窓の外を眺めていました。

走行音だけが聞こえる車内で、私はようやく文庫本を開き直しました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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