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のん、「植物のために身を削っている」“これから”について考えるきっかけになった出来事を語る

  • 2026.9.11

これまで数々の作品で魅力を放ってきたのんさん。近年は、俳優だけでなくアーティストとしても活動し、幅広く活躍している。最新出演作の映画『平行と垂直』では、安田章大さん(SUPER EIGHT)演じる自閉スペクトラム症(ASD)の兄を持つ日向大貴の妹・希を演じた。インタビューでは、障がいのあるきょうだいを持つ役柄に向き合った想いや、撮影現場で安田さんと作っていった兄と妹の関係、さらに自身の家族への想いなどを語ってくれた。

映画『平行と垂直』でASDのきょうだい児を演じたのんさん
映画『平行と垂直』でASDのきょうだい児を演じたのんさん

愛おしい兄妹の心温まる物語に感銘を受けた

――最初に原案・脚本を読まれたとき、どんな印象を持ちましたか?

【のん】大貴と希という兄と妹の日常が続いていく中で、小さなことでけんかしたり、さまざまな問題に直面したりしながらもそれを乗り越えていく姿がすごく愛おしくて、第一印象は心温まる物語だということでした。

これまでASDについて調べたり、ASDの方を描いた作品を観たことはあったんですけど、そのきょうだいや家族にフォーカスした視点は、あまり持ってなかったんです。今回の作品にはそれがしっかり描かれていて、「こういう課題もあるんだ」とハッとさせられました。

安田さん演じる大貴が一生懸命に生きている姿や、支え合う兄妹の姿をたくさんの人に見てもらうことには、すごく意義があると思いましたし、私自身も台本を読んで感銘を受けました。

――役作りにあたって、ASDのきょうだいを持つ方々にもお話を聞かれたそうですね。

【のん】障がいのあるきょうだいを持ち、カウンセラーをされている方々にお話を聞きました。ASDと一括りに言っても特性は一人ひとり違いますし、もちろん性格も違うので、同じ質問をしてもそれぞれ違う答えが返ってきたんです。

たとえば、大貴のように独り立ちしようとしているきょうだいに対して、「自立してくれたらうれしい」という方もいれば、「自分が気にかけなくても生きていけるようになったら、心にぽっかり穴が開くかもしれない」と話す方もいました。

――そういったお話を実際に聞いて、印象に残ったことはありますか?

【のん】特に印象的だったのが、「きっとこう思っているはずだ、と自分の中で断定しながらコミュニケーションを取っている」という言葉です。

相手が自分の気持ちを言葉にしにくい中で、表情などから「きっと今こう思ったんだ」と想像しながら接している。それが日常になっているんですよね。

私も普段、「この人はこう思っているのかな」と想像しながら人と接していますけど、家族間でも、そういうコミュニケーションを日常的に取るのが当たり前なんだということが、希という人物像を作っていくうえで大きなヒントになりました。

初共演の安田章大は「周りを安心させながら、現場全体の意識を高めてくださった」

――希は兄を大切にしたい一方で、結婚して自分の人生も進めたいという葛藤を抱えています。彼女の気持ちをどう捉えたのか、詳しく教えてください。

【のん】結婚という大きな決断をするにあたって、希はまず大貴のことを考えなきゃいけない、ということがあります。希にとって、大貴はずっと一緒に日常を過ごしてきた当たり前の存在です。でも、ほかの人にとってはそうではないこともわかっている。

大貴がホームに入っていたことや、一人暮らしを始めたこと、職場での出来事や警察沙汰になった経験など、2人でいろいろなことを乗り越えてきたはずです。だから、ASDの方と接したことがない人が大貴をどう見るのかということには、希はすごく神経質になっていると思います。

同時に、自分が結婚して生活が変わることで、大貴がどう感じるのかも、彼女にとっては重要なことです。決めたことや約束を守ることを大切にしている大貴に、希の人生が変わっていくことをどう受け入れてもらえばいいのか。その2つの軸で悩んでいるんじゃないかなと。

さらに、2人は小さいころにお母さんを亡くしていて、それなのにお父さんはどうしようもなくて…(苦笑)。希にとって、大貴は唯一の家族と言っていい存在なんじゃないかと思います。だから、いざとなれば結婚をあきらめなければいけないかもしれない。一方で、それでもどうにか自分の人生も進めたいと葛藤しているんじゃないかなと解釈しました。

――兄と妹の距離感について、どのように役を作り上げていったのでしょうか?

【のん】安田さんとは、役柄や物語について話し合うことはあまりなかったです。実際に演技をしながら積み上げていった感じですね。

段取りをしてみて、違和感があれば「こうしようか」と調整していく。多くは語らず、その場で演じながら関係を作っていきました。

――初共演の安田章大さんは、どのような方でしたか?

【のん】こまめにコミュニケーションを取ってくださる方でした。毎シーンといっていいほど、「何かあったら言ってやー」と、現場にいるみんなに声をかけている人でしたね。

周りを安心させながら、現場全体の意識を高めてくださっていた印象です。撮影の合間には、安田さんの地元のお話や、12月の撮影だったのでクリスマスの話もしました。

――社会的なテーマのある作品に出演することについて、どんな想いがありますか?

【のん】私は一役者なので、オファーをいただいたときは、その作品に自分が関わる意味があるのかをまず考えます。ただ、社会的な意義を先に考えるというよりは、シンプルに作品をおもしろいと思えるかどうかを大切にしています。映画や映像作品は、まず娯楽として存在しなきゃいけないものだと感じているので。

そのうえで意義のある作品に出合えることは、すごくうれしいですし、なかなか巡り合えるものでもない。今回はすごく特別な作品になったなと思います。

プライベートでの大きな出来事は「植物の存在」

――大貴と希は、互いに支え合う関係です。のんさんは、本作を通して“人を支えること”についてあらためて感じたことはありますか?

【のん】家族のつながりって、本当にありがたいことだとあらためて感じました。もちろん、家族との関係はいろいろあると思いますけど、ちゃんと育ててもらって家族との関係が続いていると、支えてもらえることを当たり前のように感じてしまうんですよね。

仕事で何かを決断したときに応援してくれたり、一人暮らしをしてみて「これもあれもやってもらっていたんだ」と気づいたり。たまに実家に帰ってお世話してもらうと、ラクすぎて「ありがとうございます」っていう気持ちになります(笑)。

自分の人生を無償で応援してくれる存在がいることって、すごくありがたくて貴重なことなんだなと。この作品を通じてあらためて家族のありがたみを実感して、以前よりも家族に素直に感謝するようになりました。

――大阪・堺での撮影で印象に残っていることはありますか?

【のん】撮影の合間に、よくお散歩をしていました。ウサギの彫刻がたくさんあるかわいい公園があって、そこがすごく印象に残っています。街の人は話してみるとチャキチャキしているんですけど、街並み自体は道がゆったりしていて、空も広い感じがして、すごくリラックスできて、過ごしやすい雰囲気でした。

――演じる希は結婚という出来事を通じて、自身の“これから”を考えます。のんさんご自身は最近、“これから”について考えるきっかけになったことはありますか?

【のん】そんなに大きなことではないんですけど、ここ5カ月くらいで家に植物を置き始めたんです。「こいつが生き続ける限り、私は水をあげたり、日光に当てたりしなきゃいけないんだな」と考えるようになりました(笑)。

もともとは家の中の空気をよくしたくて、「光合成で酸素を出してくれるみたいだから、家の中の酸素を増やそう」くらいの感じで始めたんです。面倒を見ているうちにだんだんかわいく思えてきて、ちゃんとお世話しています。

――植物を育てることは、生活にどんな影響を与えましたか?

【のん】今は植物を育てられていることがけっこう自信につながっています。「私って、植物のお世話をできたんだ」と、ちょっと感動するくらいで。

以前はずっと遮光カーテンを閉めていて、朝も昼も絶対にカーテンを開けない生活をしていたんです。部屋の中で光を感じるのが苦手だったのですが、植物を置いてからは部屋に光を入れなきゃいけなくなったんです。自分はカーテンを閉めていたいけど、「植物は光がないと生きられないから」と思いながら開けています。植物のために身を削っているんですよ(笑)。これは自分の中ではけっこう大きな出来事でした。

撮影=TOYO

取材・文=イワイユウ

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