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スピード感あふれる推理劇であると同時に主人公の成長描く人間ドラマ/劇団アレン座『大正浪漫探偵譚 -エデンの歌姫-』ゲネプロレポ

  • 2026.9.7
劇団アレン座 舞台『大正浪漫探偵譚 -エデンの歌姫-』ゲネプロの様子 クランクイン! 写真:双海しお width=
劇団アレン座 舞台『大正浪漫探偵譚 -エデンの歌姫-』ゲネプロの様子 クランクイン! 写真:双海しお

劇団アレン座の10周年記念興行として上演される舞台『大正浪漫探偵譚 -エデンの歌姫-』が、東京・光が丘IMAホールにて開幕。作・演出は同劇団の鈴木茉美。主人公の探偵・東堂解役は、劇団所属の栗田学武が務め、木崎茂役では劇団を主宰する來河侑希も出演する。初日を前に実施されたゲネプロの様子をレポートする。

【写真】舞台『大正浪漫探偵譚 -エデンの歌姫-』ゲネプロの様子

◆主人公の心の移ろいを見せる栗田学武の芝居に惹きこまれる

連続殺人事件と、その背後に見え隠れする謎の組織「エデン」。その真相にせまる、王道の骨太ミステリーだ。大正という時代の気品を舞台美術や衣裳に宿しながら、思想が人の運命を左右しえたこの時代ならではの空気を、事件の背景にも、登場人物一人ひとりの生き様にも色濃くにじませていく。そうして立ちのぼる大正浪漫の香りが、物語に独特の陰影を与えていた。

物語の主軸を貫くのは、謎解きのスリルだけではない。事件を追う探偵・東堂解の、人間的な成長を描くドラマとしての側面が、作品を静かに、しかし太く貫いている。

時は大正。探偵業を始めたばかりの東堂は、大学時代の友人・北原以外とはうまくコミュニケーションがとれない変わり者だ。そんな東堂のもとに、北原が同居人兼助手として破天荒な南条を連れてくる。南条や、事件を追う中で出会う人々の言葉や想いに触れるうち、ひとり思考の世界に閉じこもっていた東堂は、少しずつ外の世界へと踏み出していく。その心理的な壁を越える瞬間を、セットを用いて視覚的に見せる演出が巧みだ。鈴木茉美の演出の妙が光る。

演出面では、暗さの使い方も印象的だった。あえて表情を読み取らせない場面がいくつかあり、それぞれが自分の正しいと信じた道を進んだ果てに、何を思うのか。観る者に想像を促す余韻が、随所に仕掛けられていた。

物語の中心に立つ東堂を演じるのは、栗田学武。探偵ゆえに膨大なセリフを担いながら、ひと言、ひとつの仕草で「変わり者」と伝わる台詞回しが見事だ。序盤の東堂はうつむきがちで表情が見えず、どこか無感情にすら映る。だが、人と関わるうちに、次第に感情の波が立ち、温度を帯びていく。その移ろいこそが、本作最大の見どころだろう。栗田は、成長を見せるという難役を堅実な芝居で務め上げている。

その東堂を、静と動の両側から引き立てるのが北原(三浦海里)と南条(新井雄也)の2人の存在だ。あたたかく見守る北原のやわらかな友愛と、台風のように賑やかに東堂の懐へ入り込んでいく南条。この静と動の対比が、2人自身の魅力はもちろん、真ん中に立つ東堂の個性をくっきりと際立たせていた。

◆推理劇であると同時に、ひとりの男が世界と出会い直していく物語

事件を追う東堂たち探偵、暗躍する組織エデン、そして真相を追う警察。三者が交錯する構図も、本作の骨格を成している。とりわけ、ベテランならではの深みをたたえた刑事・沼井一三(近童弐吉)と、若く希望にあふれた島田二郎(伊万里有)のコンビが、物語に緊張感と瑞々しさの両方をもたらしていた。

そして忘れてはならないのが、歌姫・西宮愛里を演じる水越里歌の歌声だ。彼女の歌は事件を解く鍵であると同時に、彼女の生き様そのものを映し出す。確かな歌唱力があってこそ成立する存在であり、連続殺人という暗い物語の中で、鮮やかなスパイスとして響いていた。

もう一組、心に留めておきたいのが、しょうた(亀田結心)とねずみ(西岡諒佑)という孤児の子どもたちだ。彼らの存在は、この先の時間軸を描く物語への伏線にもなっている。やがて東堂の頼れる仲間となっていく——その萌芽をここに見出せるのは、シリーズを追うファンにとって何よりの喜びだろう。

思想が人を動かし、時代を揺るがした大正。本作は、その時代を舞台に描かれる高密度でスピード感あふれる推理劇であると同時に、ひとりの男が世界と出会い直していく物語だ。事件の真相と、東堂という人間の行方。その両方を、ぜひ劇場で見届けてほしい。(取材・文・写真:双海しお)

舞台『大正浪漫探偵譚 -エデンの歌姫-』は、9月12日まで東京・光が丘IMAホールにて上演。

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