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じわじわと忍び寄る日常に潜む恐怖…多数のホラー漫画を描く押切蓮介による、自身の経験や知人から聞いた「ゆる怖」話をまとめた短編集【書評】

  • 2026.9.5

【漫画】本編を読む

『コワイかもしれない 押切蓮介ホラー短編集』(押切蓮介/竹書房)は、多くの人気ホラー漫画を手がける押切蓮介氏が、自身が体験したことや知人から聞いた話をもとに描いた短編集である。幽霊や怪異などが登場するものではなく、「もしかしたら本当にあったのかもしれない」と思わせる現実感が絶妙な恐怖を伝えてくる作品だ。

本書には、コミック誌『増刊 本当にあった愉快な話』や『怪談コミック サムケ』(どちらも竹書房)などに掲載された全14作品を収録。どの話も派手な演出で驚かせるものではなく、日常のすぐ隣に潜む違和感を少しずつ積み重ね、気づけば背筋が寒くなっているような読後感を味わえる内容だ。押切氏がネットで知り合った漫画家志望の青年のホームページの話や、アシスタントが住む家の隣人の話など、どこにでもありそうな日常から、いつの間にかヌルッと恐怖の世界に入り込んでしまう押切ワールド全開の短編が収録されている。

そして、押切作品の魅力は、恐怖の正体をすべて説明しないことである。「あれは何だったのか」「気のせいだったのかもしれない」と解釈や考察の余地を残すからこそ、読み終えたあとも頭の中で物語が繰り返されてしまうのだ。実体験や伝聞をもとにしていることも相まって、「完全な創作」と割り切れない薄気味悪さがじわじわと広がっていくだろう。

また、本書では各作品に押切氏自身のコメントが添えられており、執筆当時の心境やエピソードを知ることができるのも興味深い。さらに、呪物蒐集家・田中俊行氏との怪異対談では、怪談を「語る側」と「集める側」、それぞれの視点から恐怖の本質が語られ、短編集とはまた違った面白さと恐怖を味わえる。

絶叫系のホラーではなく、日々に潜む「違和感」がゆっくりと恐怖へ変わっていく。本作は、読み終えたあとにふと暗い廊下や静かな部屋が気になってしまうような、「ゆる怖」の魅力を存分に味わえる作品である。

文=馬風亭ゑりん

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