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「来年の3月には手が回るんで」伸びた庭木を切ってくれなかった隣人。だが、手入れできなかった理由を知った瞬間

  • 2026.9.1

掃いても掃いても、次の日にはまた積もっていた

裏のお宅の庭は、以前はきれいに手入れされていました。

松の枝ぶりは整えられ、つつじも季節ごとに丸く刈り込まれています。買い物の行き帰りに、塀ごしに眺めるのが楽しみなくらいでした。

ところが、ここ何年かで少しずつ様子が変わりました。枝は伸びたままになり、そのうち何本かが、うちの敷地まで張り出すようになったのです。

秋になると、その枝から落ちた葉が庭にたまります。朝に掃いても、翌日にはまた同じくらい積もっていました。夏になると伸びた草の周りに蚊も増え、掃除をしているあいだに腕を何か所も刺されることもありました。

さすがに困り、一度だけ裏のお宅へお願いに行きました。

「すみません。うちのほうまで伸びている枝を、少し切っていただけませんか」

すると、裏の方は申し訳なさそうな顔をしました。

「そのうち切りますわ。来年の3月には手が回るんで」

嫌な顔をされたわけではありません。事情があるのだろうと思い、私は「お願いします」とだけ言って帰りました。

けれど、3月になっても枝はそのままでした。

しばらく待ってから、もう一度声をかけると、裏の方は困ったように言いました。

「すんません。もう少し待ってもらえますか。今年中には何とかしますんで」

責めるつもりはありませんでした。それでも、お願いするたびにこちらが催促しているようで、だんだん声をかけること自体がしんどくなっていきました。

頼むのをやめて、自分の側だけを掃くことにした

その年の秋、私はもう催促するのをやめました。

落ち葉が気になった朝だけ、自分の庭に落ちている分を十分ほど掃く。それだけにしました。

不思議なことに、「いつ切ってくれるのだろう」と考えなくなると、気持ちは少し楽になりました。相手が動く日を待ちながら掃除をするより、自分でできる範囲だけ片づけるほうが、私には合っていたのだと思います。

それから何週間かたった朝、塀の向こうから声をかけられました。

「3月にはって言うてたのに、遅なってすんまへんな。明日、業者が来ますわ」

私は思わず、「そうなんですか」と聞き返しました。

「毎朝、掃除までさせてしもうて。気にはなってたんですけど、なかなか段取りがつかんかったんです」

翌日、本当に業者の方が来て、うちの敷地まで張り出していた枝を切っていきました。伸びていた草も一緒に刈られ、久しぶりに庭がすっきりしました。

作業が終わったあと、裏の方がぽつりと言いました。

「ちょっと体を悪くしてましてな。前みたいには自分でできんようになって」

そこで初めて、庭の手入れができなくなっていた事情を知りました。

だからといって、落ち葉や蚊に困っていたことがなくなるわけではありません。それでも、何度頼んでも動いてもらえなかった理由が分かり、少しだけ気持ちの置き場所が変わりました。

それ以来、大きな枝がこちらへ伸びてくることはなくなりました。私も今まで通り、気になった朝だけ自分の庭を掃いています。

相手がいつ動くのかを待ち続けていたころより、自分でできることだけをするようになってからのほうが、ずっと気持ちは軽くなりました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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