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不安な自分の殻を破る。一歩踏み出した、初めての海外ひとり旅の記録

  • 2026.8.31

社会人4年目が終わりを迎えようとする春、筆者は、初の海外ひとり旅に出た。

学生時代から一度はやってみたかった海外ひとり旅。身近に世界一周経験者やバックパッカーが多かったからか、憧れの存在であり、いつかできればいいなと思っていた。けれど常に何かしら言い訳を考え、目をそらしてきた。お金がない、時間がない、英語に自信がないなど、もっともらしい言い訳は身近にたくさんあったから。

だが、この度転職をすることになり、次の職場まで3週間ほどの空白の時間が生まれた。まだ十分とはいえないけれど、一度は長期の旅ができるほどの貯金も溜まってきた。英語は得意ではないけれど、全く話せないということはない。

エッフェル塔に階段で登れるのも、体力のある今だけかもしれない

だとすると、チャンスは今しかない。働き始めてからは、まとまった休暇を取ることは容易ではないだろうから。そんな不安とワクワクを胸に、思い切って18日間の気ままな旅に出た。そして帰国後3か月経過して思うのは、道中での数々の出来事を通して、縮こまっていた自分の殻を小さく、けれど確実に破れた気がしている。

そんな私の海外ひとり旅の中で、とくに心を動かされた場面をいくつかピックアップしてみたい。

旅の計画

今回の旅では、フィンランド・ヘルシンキの空港からヨーロッパ入りし、エストニア、スウェーデン、デンマーク、ドイツを経て、フランス・パリの空港から出国する。現地ツアーに参加することも検討したが、せっかくならすべて自由度の高い旅にしたいと思い、最終的にすべて自分の手で予約した。チェックポイントがてら道中の宿は事前に予約しているが、それ以外の予定はぱらぱらと入れる程度。余白を多くとり、その日の気分で決められるようにした。

また、今回の旅の移動では船や鉄道を使うことに決めていた。ヨーロッパでは5日間、7日間など指定された期間中、圏内の鉄道に乗り放題となる「ユーレイル グローバルパス」が販売されているが、27歳までならユース価格で購入でき、さらにそれがセール期間中であることが決め手だった。ただし、例外としてヘルシンキ~タリン(エストニア)やタリン~ストックホルム(スウェーデン)は鉄道だと非常に遠回りになり、船での移動が有名であるため、そちらを使うことにした。

ヘルシンキからタリンまで乗船した「ヴァイキングライン」

船や鉄道に揺られながら、ぼんやりと過ごす

飛行機だとすぐに着いてしまう目的地も、鉄道や船だとなかなかたどり着かない。しかし、その代わりに流れゆく景色をぼんやりと眺めたり、次に訪れる街で訪れたい場所を考えたりしながら、ゆったりとした時間を過ごすことができる。

フィンランド国鉄の車内。相席になると向かい合わせで若干気まずい

雄大な自然をぼんやりと眺める

ヨーロッパの鉄道は日本の鉄道と比較して駅間距離が長いためか、特急列車はもちろんのこと、快速列車であっても次の駅がなかなか見えてこない。街から街へ移動する際に見える雄大な自然の風景や、時折視界に入るレトロな小都市の街並み。

それらは地域ごとに全く異なる色を見せており、長時間眺めていても飽きることはない。ちなみに、日本では少なくなってしまった寝台列車もヨーロッパでは健在。三段寝台(クシェット)にゴロンと寝ころび、カタタン、カタタン……という走行音にまどろんでいれば、気づけば朝になっていた。

旅の楽しみのひとつ、寝台列車。この日は4両と短い編成だった

コペンハーゲン空港駅にほぼ定刻に到着し、ベルリンへ向かう

細い廊下を進む。右側には寝室が並ぶ

思い返せばこの「ゆったり過ごす」「自分の直感で明日を決める」という時間を取ることは、日々の生活では簡単なようで案外難しい。休日も気づけばすぐに予定が埋まってしまい、なかなか余白を取れない生活。

ひとり旅のゆったりとした時間の中で、感じていることをリアルタイムで日記に書いたり、何気ない瞬間を写真に収めたり。何かに焦ることなく、時間に追われることもなく、自分の「今これがやりたい」という気持ちにに正直になれる時間が心地よかった。

ヘルシンキとストックホルムを結ぶ豪華客船「シリヤセレナーデ」。船内には多くの免税店が並び、買い物も楽しめる

船内から眺めた夕陽

一期一会の出会いで、何気ない会話を交わす

言語の壁は、この旅でもっとも不安なことだった。仲間との旅であれば、お互いに感じたことを馴染みのある日本語で簡単に共有できるし、相手の英語が聞き取れなくてもお互いに補い合えることも多い。しかし、今回はひとり旅だ。コミュニケーションはすべて自分で行わなければならない。

不安に溢れていたが、いざ行ってみると意外となんとかなった。宿泊先や商店での会話は中学英語で通じるし、どうしても困ったら翻訳アプリが役に立つ。

そして偶然かもしれないが、今回の旅で出会った方はフレンドリーな方が多かった。

例えば、ヘルシンキで宿泊したホステルのサウナで出会った方。恐る恐るサウナ室に入室したら、さっそく先客から話しかけられる。「どこから来たの?」「この後の旅の予定は?」飾らない会話の中では、うまく英語を話そうとする必要はなかった。

なぜ自然と仲良くなれるのだろう。その秘訣は彼曰く”Sauna makes friendship.”とのこと。何気ない会話の中の一場面ではあるけれど、この言葉が今でも印象に残っている。きっと、現地ならではの環境も後押ししてくれているのだろう。

ホステルに掲示されていたサウナガイド

また、フランクフルトで宿泊したユースホステルの食堂で出会ったご夫婦も気さくに話してくれた。相席になることは避けられず、勇気を出して「ここ空いていますか?」と声をかけると、自然に会話が始まった。日本への造詣も深く、次々と地名を出して「ここ行ったよ!」と話してくれる。所々うまく説明できない部分もあったが、うまく意図をくみ取ってくれたのがありがたかった。

楽しい時間は一瞬で過ぎ去り、部屋に戻る時間に。「日本語で”Have a good time”と”Thank you”を書いてほしい」というオーダーを受け、ローマ字で書いてあげた。なんとか発音しようとするも「発音は難しいね」と微笑む姿が印象的だった。

ユースホステルでの夕食。オプションだったので迷ったが、結果として楽しいひとときを過ごすことができた

筆者は大人数の場では人見知りを発揮してしまう性格で、日本にいても「はじめまして」で話すということが苦手だ。懇親会での立ち振る舞いもわからないし、未だに何を話せばいいのかもわからない。しかし、旅先のゲストハウスでは自然と何でも話せてしまう。一期一会の話をする時間も心地よい。それは、海外でも同じだった。いや、海外だからこそ、思い切って話ができたのかもしれない。

うまく説明できなくても、不器用だったとしても、会話の輪に入ることができる。基本的な英語でも、困った際には、助けを求めれば応えてくれる。それが分かっただけでも、不安が幾分か軽減された。

ちょっとしたトラブルを乗り越える

とはいえ、すべてが順風満帆にいくわけではなかった。旅にトラブルは付き物。大きなトラブルがなかっただけ幸いだが、ちょっとしたトラブルは何度も経験した。

ヘルシンキでは交通アプリでの決済に戸惑いつつ、なんとか購入できて一安心

例えば、タリンからヘルシンキに戻ってきた際、e-Simが急に使えなくなった。この後のストックホルム行きのフェリーは別の港からの出発で、それに乗るには移動しなければならない。その行き方がわからないとなれば、万事休すだ。幸い、周囲に地図を見つけたため九死に一生を得たが、いかに自分がスマートフォンに依存していたかが浮き彫りになった。

また、ベルリンからニュルンベルクに向かうためICEに乗車した際、車内の掲示板を見て違和感を覚えた。予定通りミュンヘン行きのはずなのに、なぜか到着時間が2時間も遅い。これではニュルンベルクでの滞在時間が僅かになってしまう。調べてみると、ベルリンからミュンヘンに向かうICEは2路線あり、遠回りな方に乗ってしまったらしい。

日本では「のぞみ」「こだま」「はやぶさ」など、方面や停車駅の違いにより列車名で判別できるが、ドイツの高速鉄道では「ICE」という名称が多方面で使われているようだ。咄嗟にEurailアプリで経路を調べ、途中で乗り換えを挟むことでなんとか1時間遅れまで食い止めることができたが、もし予定がパンパンに詰まっていたら、どれかを削らなければならなかった。

乗り間違えてしまったICE

ここまでのプチトラブルは自力で解決できたが、現地の方の助けを借りなければ解決できなかったケースもある。

例えばコペンハーゲンの電車では、車内とデッキを隔てるドアに手をかざしても扉が開かない。困っていると、車内の座席に座っていた乗客の方が、頭上で手を大きく左右に振るような仕草をしている。自分も真似をしてみると、あんなに開かなかったドアが難なく開いた。どうやら上部にドアを開けるセンサーがあり、手を振る動作でドアが開くようだ。

よくあることなのか、お礼を伝えると「慣れないよね~」というかのような笑顔を返してくれたが、もし自分一人だったら車内に入れなかった。教えてくれた方には感謝しかない

デンマーク国鉄でコペンハーゲンへ。車内ドアはその後も慣れるまで時間がかかった

こうしたプチトラブルを自力で、あるいは周囲の方の手を借りて解決することを積み重ねていく中で、不安だった旅も、少し自信がついてきた。日本にいたころよりもちょっとだけ、殻を破れた気がした。

勢いでユーロスターに乗ることを決めたが、事前に入国ビザ(ETA)が必要であることが発覚。幸いにも取得できたがヒヤヒヤした

帰国、そして前向きな一歩を踏み出す

ようやく旅に慣れてきたと感じた頃は、名残惜しくも帰国のときだった。飛行機に乗り、久々に聞く日本語を懐かしく感じながら、数か月前に買ったミラーレス一眼のカメラロールを流しつつ、この18日間のあれこれを振り返った。

いつもは見慣れたJALのマークだが、今回の旅では久々の再開にほっとした

羽田空港に降り立つと、こんなに暑かったのかというくらいムシムシした。けれど、そのムシムシさに懐かしさを覚えた。日本に帰ってきたのだという実感だった。

ひとり旅では、自分と向き合う時間が増える。いまの自分を一度リセットして、新たな環境で日常とは異なる経験をしていく中で、時に予想もしなかった自分に出会う。18日間という短くも長い期間をひとり異国の地で旅することは、図らずも自分自身の内なる願いに向き合い、不安を楽観に変える、今しか得られない貴重な時間だった。漠然と抱いていた転職先への不安も、海外をひとりで旅したことで、なんとかなるだろうという気持ちが芽生えてきた。

もし今、就職や転職などの節目にあり、少しでも海外ひとり旅を経験してみたいという願いがあるならば、迷わず飛び出してみてほしい。その旅はきっと、次のステージに進む上での自信につながると思うから。

All photos by Nakashin

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