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「上司にしたい有名人」1位の元タカラジェンヌ。同じ年、パート主婦を演じていた…20年後は“監督”の顔も

  • 2026.10.3
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黒木瞳-2006年12月撮影(C)SANKEI

20年前の2006年9月、「上司にしたい有名人」アンケートで、女性部門の総合1位に輝いたのは黒木瞳だった。2位には天海祐希が続き、宝塚歌劇団出身の2人によるワンツーフィニッシュとなった。

当時の彼女は、まさに世の憧憬を集める存在だった。妻、母、恋人と、あらゆるランキングの常連だったのである。

だが、その同じ年の春、彼女が連続ドラマで演じていた役柄をご記憶だろうか。画面の中にいたのは、華やかなオーラを脱ぎ捨て、ハンバーガーショップでパートに励みながら、もう一度バレエを習い始める、ごく平凡な主婦だった。

頼られる完璧な上司像と、一から教えを乞うパート主婦。2006年の黒木瞳を振り返ると、この鮮やかな対比が実に興味深い。

母性の黒木と男前の天海

なぜ当時の人々は、彼女たちを「上司」として求めたのだろうか。

当時のアンケート結果を振り返ると、1位の黒木と2位の天海は「相反するキャラクター」として対比されていた。宝塚時代に“天性の男役”と称された天海祐希が体現する、男性的な強さ。それに対して黒木瞳が放っていたのは、芯の強さを持った母性的なリーダーシップだった。

男性から見れば母親のような黒木、女性から見れば男前な天海。女性の上司に求められていたのは、厳しさよりも頼りがいだったのかもしれない。様々なアンケート調査でも黒木は上司にしたい女性ランキングでトップを記録していた。2000年代半ば、「理想の上司」の筆頭席は、間違いなく黒木瞳の“指定席”だったのだ。

頼られる存在から教わる側へ

そんな頼れる完璧な女性という世間の視線と、見事なコントラストを描いていたのが、2006年4月期に放送された主演ドラマ『プリマダム』(日本テレビ系)だ。

黒木が演じた主人公の佳奈は、どこにでもいる40代の主婦。昼間はハンバーガーショップでパートに励み、家事とパートに追われている。子どもの頃にバレエを習いながらも、家の経済的な事情で諦めざるを得なかった過去を持つ彼女が、パート先の向かいにできたバレエ教室をきっかけに、胸の奥に閉じ込めていた夢ともう一度向き合っていく物語だった。

そこにいたのは、世間が抱く頼れる上司の貫禄とはまるで対極にある、ごく普通の女性だった。

しかもこの作品は黒木自身にとって、宝塚を退団してから初めて挑むクラシックバレエだった。最終回のクライマックスでは、都内のホールから劇中の発表会シーンを生放送するという試みも行われた。

完璧な女性の枠を飛び越えるバイタリティ

もちろん、当時の彼女の華々しさはドラマの中だけに留まらない。同じ2006年、黒木は「ベストドレッサー賞」と「ベストスマイル・オブ・ザ・イヤー」を受けている。洗練された装いと人を惹きつける笑顔で、世間が抱く理想の女性のイメージを裏付ける栄誉が重なった。

一方、舞台では、2000年から自身のオリジナル作品として続けてきたシリーズ『mama loves MAMBO Ⅳ』のステージに立ち、秋にはドラマ『遙かなる約束(アベシャーニェ)〜50年の時を越えた運命の愛〜』(フジテレビ系)で阿部寛と主演した。

与えられたポジションに収まるのではなく、自ら舞台を立ち上げ、新しい表現へと挑み続けるバイタリティ。人々が彼女に「理想の上司」を見出したのは、単なる美しさだけでなく、自らの足で道を切り拓いていく表現者としてのタフネスを敏感に感じ取っていたからではないだろうか。

受け継がれるバトンと心地よいずれ

その後、「理想の女性上司」の座は、翌2007年に篠原涼子へと移り、2009年には黒木の宝塚同期である真矢ミキが首位に立つ。さらに2010年からは天海祐希が7年連続トップを記録するなど、振り返ればこの20年、篠原を除いて「理想の女性上司」の中心にはたびたびタカラヅカOGたちの姿があった。

そして2026年の今も、黒木瞳の歩みは止まらない。

今年2026年8月には『おしゃれクリップ』(日本テレビ系)の真矢ミキの回に、宝塚の同期生としてコメントした。9月には、常間地裕と共同で監督を務めた映画『指飛行機の行方』がなら国際映画祭で上映され、監督としての顔も見せている。

さらに2026年11月には、映画『月がみている』が公開される。かつて日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に輝いた『失楽園』と同じ渡辺淳一の原作を、渡辺の実娘である渡邉直子監督が映画化した作品だ。かつてスクリーンでセンセーショナルな愛に生きた彼女が、今度はヒロインの母・日野佳子を演じる。

妻、母、恋人、そして理想の上司と、20年前、世間は彼女に都合のいい完璧な女性像を重ね合わせ、ひとつの枠に収めようとしていたのかもしれない。だが、彼女は、世間が思い描く黒木瞳のイメージを、軽やかに裏切っていくように見える。世評と、本人が演じる役との心地よいずれがあるから、黒木瞳が次にどんな役を演じるのかが気になってくる。


※記事は執筆時点の情報です

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