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30年前、250万超の大ヒットを記録した【カラオケのCMソング】ピアノから静かに始まる曲とは?

  • 2026.9.25
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華原朋美-1996年6月撮影(C)SANKEI

週末になると、友だちと連れ立ってカラオケに向かう。それが遊びの真ん中にあった時代だった。画面には小室哲哉の名前が並び、順番を待つあいだにも、次の曲の前奏が始まっている。テレビをつけても、同じ作家の曲が続いて聞こえてくる。

華原朋美もその熱の真ん中にいた。1stアルバム『LOVE BRACE』は週間1位に立ち、累計で250万枚を超えた。次々にヒットが生まれる季節に、アルバムの終わり近くに置かれていた表題曲が、改めてシングルとして切り出された。

急いで盛り上げる曲ではない。ピアノの音から静かに始まり、長い時間をかけて広がっていく。暑い季節に出たのに、この曲だけは熱から少し離れた場所で鳴っていた。

華原朋美『LOVE BRACE』(作詞・作曲:小室哲哉)ーー1996年7月22日発売

通信カラオケ「DAM」のCMソングにもなった。それでもこの曲の本当の居場所は、店の画面ではなく、夜にひとりで聴く時間の中にあった。

最後の手前に置かれた静かな歌

1996年の華原朋美は、同じ年の春に出た『I'm proud』で誰もが知る顔になっていた。ただ、『I'm proud』が一度聴けば口ずさめる速さで届く曲だとすれば、『LOVE BRACE』はそうではない。旋律も言葉も、ゆっくりとしか届かない。シングルとして切り出されたことで、この曲はアルバムの流れから離れ、単独で聴かれる歌になった。

アルバムで聴くと、それまでの曲を静かに受け止めながら、最後の曲へと繋いでいくように聴こえる。シングルとして聴くと、この一曲だけで一つの夜が始まり、終わる。置かれる場所で、歌の顔が変わる。

息で高さを作る声が迷いを消さずに進む

歌い出しの伴奏は、ほとんどピアノだけに聞こえる。音の数が少なく、声と声のあいだの静けさがそのまま耳に入る。そこへ弦の響きが少しずつ重なっていく。曲が進むにつれて音の幅が広がり、終わりに近づくころには、最初の静けさが嘘のように厚い響きになっている。

詞が描くのは、恋の途中にいる人だ。夜、隣で眠る人の顔を見つめる。タクシーに乗って行き先を告げ、目を閉じる。ひとりになった途端に、不安が顔を出す。誰にも自分を知られていない場所にいるような孤独が、恋の真ん中に置かれている。

そしてサビで、曲の名前が、心が揺れているという言葉と並んでそのまま歌われる。この詞は迷いを消さない。揺れたまま、短く「Carry on」と進む合図だけを置く。日本語で揺れていた心を、短い英語がそっと前へ押す。ここが、この曲でいちばん胸に残るところだ。

長い曲なのに、サビは短い言葉で覚えられる。伴奏が厚くなっても、声が届く先は最初から最後まで同じ一人に向いている。だから聴き終えたとき、大きな曲を聴いたという感じよりも、近くで誰かの心を聴いたという感じが残る。

熱が去ってから聞こえてくる細部

『I'm proud』や『I BELIEVE』が表の顔として残った。それに対して『LOVE BRACE』は、この人の曲でどれが一番いいかと聞かれたときに、迷わず名前を挙げたくなる曲だ。数字で並べれば表の顔にかなわない。だが聴き終えたあとに残るものの量では、負けていない。

今この曲を聴くと、当時は気づかなかったものが聞こえてくる。声の中の息の音。弦が入ってくる瞬間の、ほんの少しの間。派手な季節には埋もれていた細かい部分が、熱が引いた耳にはっきり届く。

日本中のカラオケで小室哲哉の曲が歌われていた夏の真ん中に世に出たこの曲は、静かに鳴っていた。熱が去ったあとに残ったのは、いちばん大きな声ではなく、いちばん近くで揺れていた声だった。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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