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『君は1000%』の次の曲、覚えてる? 新しい歌声が引き継いだ“オメガトライブの夏”

  • 2026.9.15
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カルロス・トシキ-1991年2月撮影(C)SANKEI

1986年の夏、富士フイルム「フジカラー」のCMから流れてきたのは、1986 OMEGA TRIBEの明るいサビだった。画面には南野陽子。写真と夏の光景に重なるその声は、軽やかで、どこか甘く、それまでのオメガトライブとは少し違って聴こえた。

高音へ向かっても力まず、丸みのある声がすっと抜けていく。過去の歌声との違いを意識させながら、それ以上に「この声で聴く新しい夏」を印象づける。その軽やかな存在感こそ、この曲の入口だった。

1986 OMEGA TRIBE『Super Chance』(作詞:売野雅勇/作曲:和泉常寛)ーー1986年8月7日発売

高い音でふわりと浮かびあがる声

1985年12月24日、杉山清貴&オメガトライブは解散した。プロデューサーの藤田浩一はブラジル出身の日系人カルロス・トシキを新しいボーカルに迎え、翌年「1986オメガトライブ」として再始動する。『君は1000%』に続く2作目が、この曲だ。

カルロスの声は、輪郭で聴かせる声ではない。角の取れた発音で、語尾は柔らかく着地し、高い音に差しかかっても喉に力が入らない。日本語の歌詞から英語のタイトルの一節へ移るときも同じ温度のまま歌うので、言葉が切り替わる場所で曲の体温が下がらない。少し甘く、少し湿った、それまでのこのバンドにはなかった声質だ。

サビで旋律が高いほうへ上がる瞬間、この声は張るのではなく浮かびあがる。声が光の中へ吸い込まれていくように聴こえるから、夏の音を看板にしてきたバンドが、光の質を変えずに声だけを入れ替えられたのだと映る。恋の駆け引きを歌っているのに、駆け引きが苦手な人の告白に聴こえてくるのも、この声のおかげかもしれない。

跳ねたあとの小さな下降が残す夏の影

音の土台は、この時期のオメガトライブらしい、きらきらしたシンセサイザーの明るさと軽く跳ねるリズムだ。編曲の新川博は小林麻美の『雨音はショパンの調べ』を手がけた人で、光る音色を声の前に出さず、声の周りに敷く。作曲の和泉常寛は少年隊の『星屑のスパンコール』も書いた作曲家で、旋律に口ずさみやすい跳ねを仕込んでいる。

サビの頭で旋律が一段高く跳び、タイトルの言葉を繰り返す部分でカルロスの声にコーラスが重なる。ひとりの歌が数人の合唱に膨らむ瞬間があって、そこが曲でいちばん明るい場所だ。ところが跳ね上がった旋律はそのまま居座らず、少し下がって切なさを残す。この下降が、つかみそこねた夏の機会という歌詞の主題と手をつないでいるように聴こえる。強い光の写真ほど影が濃く写るのと同じで、明るさが強いぶん、ほんの一瞬の下がり方が胸に残る。

タイアップは富士フイルムのフジカラーのCMで、出演は南野陽子だった。放映日に間に合わせるためサビを先に録音し、あとからAメロとBメロを足した。CMの短い枠で使えるのは曲の一部だけだから、サビだけで夏の明るさを言い切る必要があり、その求めに旋律が素直に応えているように聴こえる。

ヒット曲の言葉が新しい声を支えた

作詞は売野雅勇。中森明菜の『少女A』や郷ひろみの『2億4千万の瞳』だけでなく、チェッカーズの『涙のリクエスト』『ジュリアに傷心』なども手がけている。アイドル歌謡からバンドの楽曲まで、1980年代のポップスを幅広く支えた作詞家だ。

『Super Chance』でも、耳に残る英語のタイトルと恋のすれ違いを結びつけ、明るいサウンドの中にわずかな切なさを置いている。華やかな言葉をフックにしながら、その奥に満たされない感情を残す書き方が、サビの高揚と下降する旋律によくなじんでいる。

カルロスの声も、完成された歌謡曲の世界へ突然入り込んだ異物というわけではない。売野の言葉、和泉常寛の旋律、新川博の編曲がつくる当時のポップスの中で、その柔らかな高音が新しい輪郭を与えている。この曲の新しさは、異質な要素をぶつけたことではなく、ヒット曲を知る作家陣が新しいボーカルの持ち味に合わせ、オメガトライブの夏を更新したところにある。

午後の光がもう傾いている夏の歌

発売は8月7日、暦の上では夏の盛りだ。それなのにこの曲は、聴き終えたあとに夏の終わりの匂いを残す。理由は音の明るさそのものより、明るさの使い方にあると感じる。

サビは開放的で、コーラスは厚い。けれど歌の主人公は、目の前のチャンスをつかめずにいる。音が笑っていて、言葉が迷っている。この温度差が、8月の午後の光がもう傾きはじめている感じを、曲の中に呼び込んでいる。

写真のCMに乗って届いたことも、この曲の時間の感じ方に効いている。写真は撮った瞬間から過去になる。写真のCMから流れてきた明るいサビが、すでに終わりかけた夏の記録のように聴こえるのは、偶然ではない気がしてくる。

2作目で形になった新しいオメガトライブ

『君は1000%』に続く2作目の『Super Chance』は、新しいボーカルを迎えた1986 OMEGA TRIBEが、一作限りの話題ではなく、新たなグループとして進み始めたことを印象づけた曲だった。

聴きどころは、サビでカルロスの高音にコーラスが重なる瞬間だ。柔らかな声を中心に据えながら、きらびやかなシンセサイザーと軽やかなリズムで、オメガトライブらしい夏のイメージを組み直している。前の時代をなぞるのでも、すべてを変えるのでもない。その間に見つけた新しいバランスが、『Super Chance』には刻まれている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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