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80代女性「髪も短く切らなきゃだめかしら」入浴が負担になり…長い髪を大切にしている利用者に、介護士が考えた“方法”とは

  • 2026.9.14
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

年齢を重ね、今までできていたことが難しくなったとき、その人が大切にしてきた習慣まで諦めなければならないのでしょうか。有料老人ホームで出会ったのは、長い髪を大切にしている80代の女性。

介護士が女性の思いを知り、考えたこととは。

長い髪を大切にしていた女性利用者様

これはわたしが有料老人ホームで働いていたときの出来事です。

80代の女性利用者様で、髪を胸元まで長く伸ばしている方がいらっしゃいました。

髪が長いため、髪を洗うにも乾かすにも時間がかかっていました。

そのため、入浴やドライヤーが身体の負担になっているのではないかと、スタッフの間で意見が出ていました。

ある日、女性の入浴介助をしていたときに尋ねてみました。

「いつも素敵な髪ですね。昔から長くされていたのですか?」

すると女性は、懐かしそうに話してくださいました。

「若いころからずっと長かったの。自分の髪を手入れしている時間が好きだったわ」

「休日にサロンで髪を整えてもらうのが、ご褒美だったのよ」

その表情を見て、長い髪は女性にとって単なる髪型ではないのだと気づきました。

大切な習慣を続けるのが難しくなり…

女性には、加齢に伴う腕のしびれがあり、ご自身で髪を手入れすることが難しくなっていました。

ご家族は遠方に住んでおり、なじみのサロンへ出かけることも簡単ではない状況でした。

髪を手入れすることは、女性が長年大切にしてきた習慣です。

その時間に喜びを感じていた一方で、思うようにできない現状に寂しさやもどかしさを抱えていたのかもしれません。

その後、女性には血圧の変動や足腰の衰えがみられ、長時間の入浴が難しくなりました。

「お風呂も短めにしてと病院で言われたの。髪も短く切らなきゃだめかしら」

そう話すと、女性は少しうつむきました。

身体に負担のない方法を選んでいくことは、何よりも大切です。それでも、長い髪を大切にしてきた女性の思いも、できる限り尊重したいところです。

長い髪を保ちながら、どうすれば無理なく手入れを楽しんでもらえるだろうか。スタッフは、その方法を考えました。

大切な時間を取り戻すために

そこで、髪を整える時間を「女性が楽しめるひととき」にしようと考えました。

入浴後、体調に気を配りながら、乾かした髪にお持ちのヘアクリームを丁寧になじませます。

その後、ゆっくりと髪をとかし、身だしなみを整えました。

ときには、ご家族からプレゼントされたヘアゴムで髪を結ぶこともありました。髪の手入れをしながら、若いころのことや、サロンに通っていたころの思い出を聞かせていただきました。

「さっぱりしたわ。きれいにやってもらって、ありがとう」

鏡を見た女性には、以前のような笑顔が戻っていました。

できる形で“好き”を支える介護

介護の現場では、身体の状態が変化すると、「もうできないから」「危険だから」と、それまでの習慣をやめたり制限したりすることがあります。安全を守るために、必要な判断もあるでしょう。

しかし、できなくなったことだけを見るのではなく、「なぜ続けたいのだろう」と考えることも大切です。

そこには、その人らしさや生きる喜びにつながる理由が隠れているかもしれません。

以前とまったく同じ方法では難しくても、かたちを変えれば続けられることもあります。

利用者様が、好きなことを好きなままでいられるように支えること。

それも、「その人らしい毎日を支える」介護士の大切な役割なのだと感じた出来事でした。


文:しまむら けいこ/介護福祉士・Webライター 

介護福祉士として10年以上、デイサービスや入所施設などさまざまな介護現場で経験を積む。現在も介護職として働くかたわら、Webライターとして活動。介護や暮らし、働き方について発信している。二児を育てるワーキングマザー。


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