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【団地のふたり】第4話 森山さん(ムロツヨシ)はなぜ前を向けた?母世代(丘みつ子、由紀さおり)のコミュ力がすごい

  • 2026.8.26

【団地のふたり】第4話 森山さん(ムロツヨシ)はなぜ前を向けた?母世代(丘みつ子、由紀さおり)のコミュ力がすごい

一昨年、NHK BSで大きな話題を呼んだ「団地のふたり」が、NHKドラマ10で地上波放送に。小泉今日子と小林聡美が演じる50代の幼なじみと、団地に暮らす人々との何気ない日常を、やさしいまなざしで描いた名作です。もう一度楽しみたい人も、初めて見る人も、その見どころを振り返ります。 ※ネタバレあり

同じ間取りで素敵な部屋作りをしているお宅をのぞいてみたい

団地で起こったボヤ騒ぎをきっかけに顔見知りになった“ボヤ男君”こと、森山さん(ムロツヨシ)との交流が軸になっていく今回のストーリーは、お互いの「勘違いと思い込み」からくるズレた会話のキャッチボールをきっかけに相手との距離が近づいていくところが見どころだ。

ただ、近所の人と仲良くなるとき、いきなりお互いのプライベートな問題にまで立ち入ることはない。たとえば自分が同性を好きになるということは慎重に相手を選んで言うし、時間をかけて信頼関係を築いてから伝えるだろう。

今回は、ときに“コント風のノリ”で登場人物が勘違いをし続け、そこで両者が急接近するのだが、正直、短時間で描くにはむずかしいテーマだという感想を持った。とはいえ、実は身近なところに当事者がいるわけで、ドラマでも当たり前に出てくるようになってほしいと思う。

森山さんとのやりとりは妙な形で始まった。ボヤ騒ぎを起こした人(森山さん)が最近、ふたりの視界に入ってくる。そこには、ただならない空気が漂っていて、実は彼、ふたりの関係を誤解して同居している同性パートナーと思い込んでいた。

この人たちになら自分の話ができると考えた森山さんは、思い切ってふたりを自宅に誘う。パートナーから一方的に別れを告げられてショックを受けているので、相談に乗ってほしい、と。

このあたりまでくると、ふたりが森山さんの事情に気づかないことにヤキモキするのだが、その前段に、なっちゃん(小林聡美)のお気に入り映画が『ブエノスアイレス』だということが分かる場面があって、ここは皮肉めいている。レスリー・チャンとトニー・レオンの恋愛模様を描いている作品を何度も見ているわりに、こういったことは「お話の世界」として理解しているのか、目の前のことを察知するには至らない。

性の多様性については、いまどきの若者のほうが学校でも勉強しているから理解が深いと思う。

さて、森山さんが失恋したことを聞いた後、ふたりの頭の中に自分の苦い記憶がよみがえる。若さゆえに好きな相手に一途だった時代を語り合い、そしてマザコンの夫やダメな男を思い出して「別れてよかった」としみじみとする。

こんな自分たちが果たして恋愛相談にのれるのか?と悩むが、最終的には森山さんがSNSで発信している情報が決定打になって家に行くことを決める。同じ間取りに住んでいる団地の住人としては、素敵な部屋作りをしているお宅をのぞいてみたいのだ。

森山さんと出会えてよかったのは女性たちのほうかも

森山さんの家に行ったふたりは、そこでようやく誤解が解け、その後はノエチ(小泉今日子)の小さなおせっかいの先に新たな交流が始まる。このときの佐久間のおばちゃん(由紀さおり)やノエチのお母さん(丘みつ子)のコミュニケーション力がすごい。

森山さんを勇気づけるつもりなのに話題の方向は微妙にズレて、自分たちの話が始まる。ノエチの父のことを「無難な結婚相手」だったとか、お見合い結婚の自分は恋愛してみたかったとか。この国では同性婚の制度も整っていないけれど、そんなことは話題にのぼらない。こんな調子だと、森山さんは嫌な気分になるかと思いきや、結果的に彼女たちからパワーをもらって、前向きな行動に出ているから驚きだ。

でも本当のところ、森山さんと出会えてよかったのは女性たちのほうかもしれない。これまで娘にも言ったことのないような、初恋の相手との思い出を、ノエチのお母さんは喫茶店で情熱的に語り出した。そしてノエチやなっちゃんも自分たちの恋愛について熱く語り合っている。みんな森山さんとの交流がきっかけで、自分の歴史を振り返る貴重な時間をもらっている。

最終的に、フラワーデザイナーとして成功している森山さんが団地に住み続け、フラワーアレンジメントの教室を開くという展開はちょっと「でき過ぎ」ではあるが、この森山さん、おだやかに住人たちと交流しながら、案外したたかに次なるビジネスチャンスをつかんでいるかもしれない。

そして今回もやはり後半、シニアの女性たちの存在感を見せつけられた。

好き勝手に自分たちの言いたいことをしゃべっているだけじゃない。若い世代の人たちがうまくつながっていけるように、そこにはちゃんと思いやりや配慮がある。

親世代を見守っているつもりのノエチたち、実はこちらもしっかり見守ってもらっている。こういったところが、この団地の住み心地のよさにつながっているはずだ。

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