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「インタビューには応じません」。『ヒンド・ラジャブの声』監督の返答

  • 2026.8.21

イスラエル国防軍が、6歳の少女ヒンド・ラジャブが乗っていた車への発砲を初めて認めた。取材依頼が殺到した映画の監督カウテール・ベン・ハニアは、それを一枚の画像で断り、そこに短い声明を載せた。(フロントロウ編集部)

2年半の沈黙のあとで、認められたこと

9月4日の日本公開を前に監督が来日し、新宿の舞台挨拶で少女の母親からの言葉を紹介したのが、今週のはじめ。その直後に、映画の外側で事態が動いた。

配給のスターキャットアルバトロス・フィルムによると、2026年8月19日、イスラエル国防軍(IDF)がヒンド・ラジャブとその家族が乗っていた車への発砲を初めて認め、刑事捜査を開始するという声明を発表した。ヒンド・ラジャブが亡くなったのは2024年1月29日。事件から2年半あまりが経ってからの表明だった。

これを受けて、映画『ヒンド・ラジャブの声』の監督・脚本を務めたカウテール・ベン・ハニアが、8月21日付で声明を出した。発表の形は、自身のInstagramに投稿された英文の画像1枚である。

「この発表は煙幕に過ぎません」

声明は、取材依頼への断りから始まる。

「イスラエル軍がヒンド・ラジャブ氏の殺害事件について刑事捜査を開始すると発表したことを受け、多くのジャーナリストから連絡がありました。インタビューには応じたくありませんが、これだけは言いたいと思います」

そのうえで、ベン・ハニア監督はこう書いた。「この発表は煙幕に過ぎません」。

理由として挙げられているのは、証拠がとうに揃っていたという事実だ。「2年以上もの間、証拠は存在していました。独立した調査、衛星画像、弾道分析などです」。そして、それらより決定的なものがあったと続ける。「ヒンド自身の声——彼女を取り囲むイスラエル軍の戦車について語っていたその”声”です」

この映画そのものが、その声で成り立っている。日本版予告でも使われている実際の通話音声を軸に、89分間、救助を求める少女と人道支援組織「赤新月社」のスタッフのやりとりを追う構成だ。監督は、映画の素材として世界中に届けたものが、そのまま最も強い証拠だったと指摘している。

「これ以上、何が必要だったというのでしょうか?」と監督は書き、こう続けた。「これらの事実がようやく真剣に受け止められるようになるまで、本当に、容疑者側が自ら(そう、”自ら”です!)捜査を行うと決めるのを待たなければならなかったのでしょうか?」

カウテール・ベン・ハニア監督が2026年8月21日に発表した声明
画像提供:スターキャットアルバトロス・フィルム

「他の犠牲者たちはどうなのか」

声明の後半で、監督は問いの向きを変えている。今回イスラエル軍が言及することを選んだ事例は、まさに国際世論によって無視できなくなった事例に他ならない、という指摘だ。

その先に置かれたのが、名前の残らない人々への言及だった。「では、他の犠牲者たちはどうなのか? 彼らの死が国際社会の無関心の壁を打ち破ることができなかったため、その名前が永遠に知られぬままとなる人々は?」

監督は、イスラエル軍がガザでパレスチナ人を殺害し続けており、ヨルダン川西岸地区ではさらなる占領が進んでいるとも記した。そして声明を、「今必要なのは、広報活動ではありません。今必要なのは、ヒンドと、ガザでのジェノサイドのすべての犠牲者に対する(独立した機関による)正義なのです」と締めくくっている。

ヒンド・ラジャブの母親であるウィッサム・ハマダも、8月20日にInstagramで声明を発表している。

9月4日、日本公開

『ヒンド・ラジャブの声』は、第82回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員大賞・グランプリ)を含む8冠を獲得し、第98回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた。監督・脚本のカウテール・ベン・ハニアは『Four Daughters フォー・ドーターズ』(2023年)、『皮膚を売った男』(2020年)で知られるチュニジア出身の映画作家で、製作総指揮にはブラッド・ピット、ホアキン・フェニックス、ルーニー・マーラー、ジョナサン・グレイザー、アルフォンソ・キュアロンが名を連ねている。

映画が描いているのは、2024年1月29日にかかってきた1本の電話だ。赤新月社のボランティアスタッフたちは、ガザ地区から助けを求める6歳の少女の声を受け取る。電話をつないだまま救出の手段を探すが、状況は刻一刻と悪化していく。上映時間は89分。出演はサジャ・キラニ、モタズ・マルヒース、アメル・フレヘル、クララ・フーリ。

『ヒンド・ラジャブの声』は9月4日(金)より、新宿武蔵野館、Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下、シネスイッチ銀座ほか全国で公開される。

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