1. トップ
  2. エンタメ
  3. メタリカもスレイヤーも何者でもなかった頃。ベイエリアの数年間が映画になる

メタリカもスレイヤーも何者でもなかった頃。ベイエリアの数年間が映画になる

  • 2026.8.21

いま名前を出せば誰もが知っているバンドにも、誰も名前を知らなかった数年間がある。1980年代のサンフランシスコでスラッシュ・メタルが生まれた瞬間を、本人たちの証言だけで組み立てたドキュメンタリー映画『マーダー・イン・ザ・フロント・ロウ〜俺たちのベイエリア・スラッシュ物語〜』が、9月25日よりシネマート新宿、池袋シネマ・ロサ、シネマリスほかで全国順次公開される。(フロントロウ編集部)

不況の町で、少年たちが海の向こうのテープを回していた

配給のキングレコードによると、舞台は1980年代初頭、不況にあえぐアメリカ・サンフランシスコ。労働者階級の少年たちが、海の向こうのイギリスからテープ・トレードを通じて手に入れた新しい音楽のうねりに、心を撃ち抜かれるところから物語は始まる。

もっと速く、もっと激しく。彼らはその衝動のままにギターをかき鳴らし、夜な夜な集まっては、まだ誰も聴いたことのない音の可能性を追いかけた。華やかさとは一切無縁の、ニキビ面の少年たちの剥き出しな日々。そこから、それまでまったく存在しなかった新しい音楽——スラッシュ・メタルが生まれた。

スラッシュ・メタルは、数あるヘヴィ・メタルのサブジャンルのなかでも、群を抜く過激さとスピード、そして商業的な成功で知られる。本作はその爆心地となったベイエリア・シーンの、濃密な数年間だけを切り取ったドキュメンタリーだ。

『マーダー・イン・ザ・フロント・ロウ〜俺たちのベイエリア・スラッシュ物語〜』場面写真
©2019 Bonded By Blood, LLC All Rights Reserved.

殿堂入りした面々が、目を細めて若気の至りを語る

出演するのは、デイヴ・ムステイン(メガデス)、カーク・ハメット、ジェイムズ・ヘットフィールド、ラーズ・ウルリッヒというメタリカの3人、ゲイリー・ホルト(エクソダス)、トム・アラヤ(スレイヤー)、チャーリー・ベナンテ(アンスラックス)、アレックス・スコルニック(テスタメント)、ラリー・ラロンデ(ポゼスト)。メタリカ、メガデス、スレイヤー、アンスラックスのいわゆるBIG4に、シーン最重要バンドのエクソダスらが加わる顔ぶれで、いまや全員が音楽界の殿堂入りレベルの大御所だ。

その大御所たちが目を細めながら話すのは、うまくいっていた頃の武勇伝ではない。狭すぎるライブハウスにセットが入りきらなかったという珍しい話。長期ツアーで空き家になったライバル・バンドの家に住み着いていた話。ホームシックの寂しさを紛らわすために送りあった絵ハガキ。ルックス重視の派手なメイクと衣装でロサンゼルスから意気揚々と乗り込んできたある大物バンドが、ベイエリアで一喝された逸話まで出てくるという。

客が頭上を飛び交ったという伝説のライブハウス、ルーシーズ・イン。メンバーが共同生活していたメタリカ・マンション。そして絶頂期にあったメタリカを襲ったツアー・バスの悲劇。上映時間92分は、そうした知られざるエピソードで埋まっている。

『マーダー・イン・ザ・フロント・ロウ〜俺たちのベイエリア・スラッシュ物語〜』場面写真
©2019 Bonded By Blood, LLC All Rights Reserved.

セックス、ドラッグ、ロックンロールと言われたL.A.メタルとは対極の、体育会系のジャンル。過激なスピードと暴力性を持ちながら、どこか汗と笑顔が似合うその音楽は、たった数年でヘヴィ・メタルの世界地図を塗り替えた。ライバルでありながら時に助け合っていた彼らだけが知る話は、そのまま青春群像劇になっている。

同じ日に、もう1本のメタル映画も封切られる

公開日が9月25日に設定されたのには理由がある。メタリカ、スレイヤー、メガデスらが歴史的名盤を送り出した「奇跡の1986年」から、今年でちょうど40年。そしてスラッシュ・メタルから派生したデス・メタルの生みの親が世を去ってから、四半世紀にあたる年でもある。

そのため同じ9月25日には、1983年にフロリダで結成されたバンドDEATHを率いたチャック・シュルディナーの生涯を追う『デス・バイ・メタル〜デス・メタルを作った男〜』も同時に封切られる。配給側は、世界的にも異例のピンポイントな2作同時劇場公開だと説明している。片方でジャンルが生まれ、片方でそこから枝分かれした先が描かれる、という組み合わせだ。

『マーダー・イン・ザ・フロント・ロウ〜俺たちのベイエリア・スラッシュ物語〜』は、9月25日よりシネマート新宿、池袋シネマ・ロサ、シネマリスほか全国順次公開。作品の詳細は公式サイトで確認できる。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ