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一筆球論【第2回】 プロのスカウトたちから見た 横浜高校 織田翔希のすごさ

  • 2026.8.21

夏といえば甲子園。高校野球の取材に行くと、ネット裏のスタンド席の階段を上ったり、下りたり…の繰り返しになります。そこには当然ながら、高校生の逸材たちに鋭い目を光らせるプロ野球のスカウトたちがズラリ。ちらちらと見知ったスカウトの座っている位置を確認しながら、まずは、話を聞けるタイミングを見計らいます。

チャンスは、前の試合が終わった直後から、次の試合のシートノックが始まるまでの十数分間。あるいは打順一回り、3回裏の時点でお眼鏡に叶う選手がいないと、次の試合まではコーヒーブレークの時間となったりするから、そのくつろぎのひと時。最近だと、5回終了後のクーリングタイム中も絶好の取材タイムになります。

要は、スカウトたちがグラウンドを “見なくていい時間” を狙うわけです。

「あ、久しぶりですね」。これが会話の糸口。そこから「あの選手、どうですか」。

こうしたやり取りを通して、こちらは10月のスカウト会議へ向けての、球団の指名方針を掴もうというわけです。そんな中で、他球団が地方大会で熱心に追いかけていた選手のことなど、スポーツ紙やネット上の情報だけでは分からない “裏話” も、こっそりと教えてくれたりするから、こまめな取材は欠かせません。

今コラムでは、8月10日、大会6日目の第2試合に焦点を移しましょう。

横浜高の初戦は昨夏の甲子園優勝校・沖縄尚学との激突。横浜の右腕・織田翔希がどんなピッチングを見せるのか。スカウト陣は甲子園に来る時点で、高校生のチェックはほぼ終わっているのですが、甲子園という大舞台で、全国レベルの強豪相手にどんなパフォーマンスを見せるのかを見ています。大舞台で活躍できる選手というのは、スター性も度胸も十分というわけで、そうしたプラスアルファの要素もプロには不可欠なのです。

その “スカウト探し” のネット裏で、思わぬ方に再会しました。

先にお伝えしておきますが、残念ながら、その肩書も所属も明かせません。ご本人の承諾を得たのは、日米の球団で合わせて20年近い所属経験があり、日本の野球事情にも精通している、メジャー球団のある関係者というバックグラウンドのみ。もちろん、今回のメインターゲットは横浜のエース・織田。先月の神奈川県大会から密着マーク中で、甲子園でも登板日に合わせての視察ですから、それこそ獲得へ向けて “本気モード” なのです。

「匿名でなら、お話できますよ」

というわけで、少々ぼんやりとした書きぶりになるかもしれませんが、メジャーの “織田評” を聞いてみましょう。まず、どこを注目しているのですか?

「足首ですね」

ひょっとして、アメリカンジョークでもかまされたか? 二の句を継ぎ損ねた私に、その方は丁寧に “解説” してくれました。

織田の公称サイズは、身長1メートル86、体重80キロ。それらの数字を見ても分かるように、長身で、すらっとした体型です。その恵まれた体躯を生かした角度のあるストレートは今大会、甲子園大会での高校生最速となる「156キロ」もマークしました。

ところで、その超高校級、本格派右腕の “注目点” が、なぜ足首なのか?

「ぎゅっと締まっているでしょ?」

引き合いに出したのは、東北高時代のダルビッシュ有、花巻東高時代の大谷翔平でした。彼らに共通するのは、高校時代はどちらかといえば、ひょろりとした細身の体型と、引き締まった筋肉質の足なのだそうです。

ダルビッシュが日本ハムの1年目、2005年の時点だと、身長1メートル95、体重85キロ。これが40歳になった2026年、1メートル96、100キロ。大谷の日本ハム1年目、2013年は身長1メートル93、体重86キロ。これが今、身長は変わらないものの、公称の体重は95キロ。実際には、100キロを超えているという情報も伝わってくる。今やがっしりとした〝筋肉の鎧〟をまとった2人だが、下半身に視線を移すと、ふくらはぎから足首にかけてのラインは、今も当時も変わらず、ぎゅっと引き締まっている。

この足首が引き締まった「足」を、メジャーでは「サラブレッド型」と分類する。

「ダルビッシュも大谷も、高校の時にはムチムチの体じゃない。それが、あそこまで大きくなる。織田君も、ダルビッシュや大谷と “同じ足首” です」

つまり、鍛えれば、ダルビッシュや大谷のような体になれる可能性を秘めているというわけだ。体が大きくなれば、出力はもっと上がる。つまり、高校3年生、体も成長途上の状態で「156キロ」が出せるのだから、近い将来に「160キロ=100マイル」は夢ではなく、むしろ現実の目標になり得るどころか、もっと出せるかもしれない。その期待を盛り込んだ未来図が描けるのは、引き締まった〝サラブレッドのような足〟の持ち主だからだ。

その “足首論” には、中日・永野吉成チーフスカウトも同じ見解だった。

「ダルビッシュも大谷も、ぎゅっとアキレス腱のところが締まっていたんですよね。あのサラブレッド型の足首だと、蹴る動きが強いんです」

同チーフが例えに出したのは『魚』でした。

「魚が泳ぐとき、尾びれがグググッと、左右にしなやかに動くでしょ? あの感じです」

投球動作を起こすのは、軸となる右足の蹴りからだ。振り上げた左足を踏み出し、軸足にためたパワーを、右腕の振りに伴って、踏み出した左足に移していく。その一連の動きの中では、しなやかな足首の動きが、蹴りの強さにつながってくる〝必須の動作〟なのだ。

広島・白武佳久球団本部スカウト統括部長も、「そりゃもう、素材はドラ1よ」と織田が見せ続けている今大会での投球内容を高く評価した。

「フォークじゃろ、140キロ台のカットボールじゃろ。まず変化球がええ。そこは春から大きく成長したところよ。あの変化球は、高校生では打てんよ。まだ力んだ時、ストレートがちょっと高めに浮く。これが低めに行くようになればもっとええよ。まだまだ体は細いし、これから1年、2年と鍛えれば、それがグッと低めに来るようになるわな」

この夏の成績も圧倒的。準々決勝までの4試合では、24回3分の2を投げ、失点は1回戦の沖縄尚学戦での2失点のみ。被安打14、奪三振33、防御率0・73。準決勝の智辯和歌山戦で敗れたものの、甲子園でも圧倒的ともいえる結果を見せつけた。

ソフトバンク・永井智浩スカウト部部長も、手放しでの大絶賛だ。

「球速帯、投げているボール、すべてがもう『プロ』ですよ。細かい部分をいえばいろいろあるけど、素材としては、この大会でももう、頭ひとつ抜けていますね」

沖縄尚学戦でも、午後1時半プレーボールの猛暑の中、9回2死まで139球。「こんなに暑い中でも、あれだけ投げられる。肩、ひじも柔らかいんでしょうね」と永井部長。その逸材は福岡・北九州出身。ホークスのまさしくご当地選手でもある。

ソフトバンクが昨年、ドラフト1位指名した米スタンフォード大・佐々木麟太郎は、最終的にマイアミ・マーリンズの8巡目指名を受け、メジャー挑戦を選択した。この “日米争奪戦” が、織田を巡ってこの秋、再び起こる可能性があります。仮に織田がメジャー挑戦を打ち出した場合でもプロ志望届は提出するため、日本の球団もドラフト指名に問題はないのですが、厳しい争奪戦を覚悟せざるを得ません。織田を1位指名しながら、もしもメジャーに行かれるようなことが起これば、ソフトバンクにとっては2年連続の “惨劇” になります。

そのリスクを、果たしてどう考えるのか。

「もう一回、巻き込まれる、かな?」

永井部長の “つぶやき” は、さて、本気なのか、煙幕なのか。

ダルビッシュや大谷と同じ “サラブレッド型の足首” を持つ逸材を巡っての、来るべき秋の闘いは、日米の複数球団が入り乱れた大争奪戦の予感が漂っています。

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