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「神が人間宣言を出した世界」で盛隆二&太田緑ロランス&入手杏奈はどう生きる?/劇団papercraft『神のみぞ知る死』インタビュー

  • 2026.8.19
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(左から)盛隆二、太田緑ロランス、入手杏奈 クランクイン!

新進気鋭の劇作家・演出家として注目を集める海路(みろ)が主宰を務める、劇団papercraftによる新作公演『神のみぞ知る死』が、9月6日より東京・シアタートラムにて上演される。SFと不条理が混在した奇妙な世界が現代口語で紡ぎ出されていくことで、物語が進むにつれ観ている側の現実と虚構の境界が曖昧になってゆく作品を多く手掛ける海路。新作は「神が人間宣言を出した世界」で恋人が死神だった女性を描いた作品だ。実は神は実体を持った人間であると神々がカミングアウトを始めたことをきっかけに、人間は神と共生することを意識するようになり始める、という物語が展開される。今回の出演者で、劇団papercraftおよび海路作品への参加は初となる、盛隆二と太田緑ロランス、そして2024年の劇団公演『空夢』に出演した入手杏奈に、作品へ挑む思いを聞いた。

【写真】『神のみぞ知る死』への思いを語る盛隆二&太田緑ロランス&入手杏奈

――盛さんと太田さんは劇団papercraftの公演には初めての出演ですが、これまで海路さんの作品はご覧になったことはありましたか。

盛:僕は観たことありました。不思議な話だな、という印象がまずあって、その不思議な中で、物語が日常の会話として進んで行くのが面白いな、と思いました。僕が所属している劇団も不思議な話をやることが多くて、具象よりは抽象の舞台セットの方が可能性が広がると思うので、その可能性にチャレンジしているところとか、共感する部分が多かったです。あと、すごく上から目線になってしまうんですけど、もっとやりようがあるのにな、というのも感じていました。内容はすごく面白いんだけど、「もったいないな」と思ってしまう部分もありました。だから今回参加できることになって、僕の感じたことや考えていることをいろいろ話したり、そこから一緒に考えたりしていけたらいいなと思っています。

太田:私は拝見したことがなかったので、今回のお話を頂いてから、映像で拝見しました。会話がテンポよく流れていく後ろで、すごく不穏な何かが起きている。その様子に、まるで世界が壊れていく音が地響きのように鳴っている印象を受けて、面白かったです。作品に非常に跳躍力を感じて、その世界観に興味を覚えましたし、自分の年下の世代の創り手の方と舞台作品でご一緒する機会があまりなかったので、オファーを頂いたことが素直にうれしくて、本作に参加させていただきたいと思いました。

――入手さんは『空夢』にご出演されましたが、その時の印象を教えてください。

入手:今回もそうなんですけど、派手な演出があるとかではなく、会話とかやりとりを大事に作るという印象がありました。稽古でも、会話のやりとりをメインに進めていたので、そういうところに集中できるのは、舞台に立つ人間としては非常にいい環境だなと思いました。

――今回の台本について、現段階での率直な感想をお聞かせください。

盛:死ぬことであるとか、すごく身近なものをテーマにしていて、神様という存在を「僕らはこれをどう見たらいいんでしょうね」と伝えている感じがします。作品全体的に「こういうことが起きてしまっているけれど、それって何なんですかね」いうことが書かれているような印象を受けました。「神様」って結構気軽に頼ることが多いじゃないですか。「神様お願いします!」とかって口にしたり。でも、「神様」って実際なんなんでしょうね?ということが描かれているのかな、と思ったりします。

太田:この作品に描かれている「神」はすごく日本的な神様で、絶対的な存在ではなくて、実はすごく無力な私たちの日常と地続きにある「八百万の」神様、というところがとても面白いなと思いました。「神」と、「民」と呼ばれる人間との間に分断が起こるんですが、何かで区分して対立構造を作るということは、ここ何年も現実に起きていることで、自分たちの生活と紐づけて、具体的に想像できるテーマだと思いました。「神」と「民」の立場が状況によって揺れ動いたりする展開もすごく面白くて、いろいろ考えさせられます。

入手:「神」というと、目には見えないけど、祈ったりすがったり、心が動かされるものだな、と思っています。日本は宗教に対する温度差が人によって違う気がしていて、どこかタブーな話題のように感じられて、あまり気軽には会話に出てこないじゃないですか。「神」には崇高なイメージがあるのに、昨今は宗教に絡んだ事件も起きてしまっていて、実は人間のダークな部分と隣り合わせの紙一重な感じがしています。本作もそんな狭間にいる人々が描かれていて、「神」とか「死神」とかが人に与える影響の大きさみたいなものを感じながら読みました。

◆「一緒にいると相手が死んでしまうかも」――自分がもし死神だったらどうする?

――本作の中で、自分と一緒にいると相手が死んでしまうかもしれないから恋人と別れるべきか、と死神が悩むという描写が出てきますが、自分がもし死神だとしたらどうすると思いますか。

盛:きっと「まあ、大丈夫だろう」とそのまま一緒にいると思います。恋愛してる最中ってエネルギーがすごいから、無敵感があって「俺とだったら死なない」と考えちゃうと思います。それで結局恋人が死んじゃったら「あ、バカだな俺」ってものすごく後悔する、みたいな感じかもしれないです。結構そういう「なんであのとき、あんなことしちゃったんだろう」と反省しながら生きてるタイプなので(笑)。

太田:私は「ダメだダメだ」と言いながら、一緒にいてしまうかもしれません。家族だったら「離れる」と苦渋の決断をすると思うのですが、恋愛だと割と自分のエゴが強く出てしまうと思うので、「もう別れる、もう会わない」と言いながら、また会っちゃったりするのかな、と思いました。

入手:私は盛さんと一緒かな。「大丈夫じゃない?」って思い込む感じで。他の死神に殺されてしまうくらいだったら、私が引き受けます、みたいな。

盛&太田:あーーー! なるほど!

盛:すごい! それいいな。

太田:なんか、武士みたいですね、かっこいい。

――台本を読んで、小説を書いている登場人物が「自分がどういう人間か分かれば小説が書けるのに」と言うところが非常に印象に残りました。こういう感覚というのは、俳優にも共感する部分はあるものなのでしょうか。

盛:お仕事をするという面では、自分がどういう人間かは理解していた方がいいと思います。でも俳優として役と向き合ったときは、「自分はこういう人間です」と思わない方がいいと思います。例えばアメリカ人の役をやるときに、「いや、俺は日本人だから」という意識が出てしまうと、障壁になると思います。でも、何を支えにして舞台に立っていればいいのか理解ができていないと、自分で自分を支えるために、自分を持っていないと舞台に立っていられないんですよね。舞台経験を積んでいく、あるいは年齢を重ねて行くことで、支えをどこに見い出すか、もしかしたら支えなんかなくたって舞台上に立っていられるかもしれない、という可能性にも気づけるようになって、そうすると今度は、自分というものがどれだけいらないか、と思えるようになってくるんです。俳優は、自分がなければないほど、何にでもなれるじゃないですか。

太田:深いですね。芝居に限った話ではないんですが、自分のことって、理解しているようで、「え、自分こんなことしちゃうんだ!」とか、自分でも知らなかった自分がどんどん更新されていくし、そうやって発見していくのが人生だと思っています。だから、芝居で役を演じることによって、自分が耕されていくという感覚なのかもしれない、と今の盛さんの話を聞いて思いました。役を演じるためには、まずは役と自分の違いを認識しなければならなくて、その中で自分が耕されていって、アップデートされる部分もあって、自分が多面的で複雑になっていく感じがします。最終的には、本番までに自分をどんどん手放せるようになって、役と自分の違いに対して無意識でいられるようになっていけば、役の形になれていくような感覚です。

入手:すごく難しいですね。自分を理解するっていう感覚が、そもそもあんまり自分にない気がしています。私の感覚としては、自分なんてなくて、好きなものとか、出会ってきた人とか、いろんなものが継ぎはぎされて今の自分がいる感じがするんです。だから、今回こうして作品に参加して皆さんに出会って、またいろんな継ぎはぎをもらって、自分が更新されていくという感覚です。いろんな影響をどんどん受けることができるように、基本的には筒のような状態でいられたらいいな、と思っています。私の場合は「自分はこう」というのがあまり強くなってしまうと、みんなで作っていくところに一個フィルターがかかってしまう気がするので、なるべく皆さんから影響をたくさん受けて、変化していくことを恐れずにいたいな、と思います。

――お客様へのメッセージをお願いします!

盛:主人公の女性がどう成長するかの話になっていますので、自分が今何かに悩んでいたり、漠然とした不安をもし抱えていたりしたら、すごく力になる作品なんじゃないかなと思います。悩んだり迷ったりしている方の背中をちょっとだけ、いい方向にちゃんと押してあげられる作品になるんじゃないかと思うので、観ていただいて損はないと思います。きっといい体験になると思います。

太田:盛さんもおっしゃった漠然とした不安、というのは海路さんも初日にキーワードとしてお話しされていて、それは世代も性別も関係なく、今の日本で生きていたら、割とみんなが陥りやすい闇のような感じもしています。私はこの作品を観た人がどういう感想を持つのか、今は全く想像がついていません。号泣する人もいるかもしれないし、怒る人もいるかもしれないし、大笑いする人もいるかもしれない。誰に感情移入するかも人それぞれだと思いますし、すごく得体が知れないというか、他であまり見ないというか、すごく懐が深い作品だと思うので、ぜひいらしてください。そして、ぜひ感想を聞かせてください!

入手:お芝居を観る時って、観る人間がどういう状態か、もっと言えばどんな人生を歩んできたかで受け取り方が変わると思うので、この作品を最後まで観てもらったときに、劇場がどういう空気になるんだろう、とドキドキします。ラストだけじゃなくて、そこまでのそれぞれのやり取りだったり、人間関係みたいなものを丁寧に紡げたらいいなと思いますし、何か派手な演出があるような作品ではないんですけど、いい意味で上質な暗い不穏な作品になるんじゃないかなと思います。観客の体温に響いて、肌に届くような作品になったらいいなと思いますし、私たちもそういう状態でお芝居ができたらいいな、と思います。

(取材・文:久田絢子)

劇団papercraft 第13回公演『神のみぞ知る死』は、9月6日~13日東京・シアタートラムにて上演。

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