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ネアンデルタールの男性の骨盤は「現代人の女性」に似ていた

  • 2026.8.18
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

私たち現代人の男女では、骨盤の形に大きな違いがあります。

一般には、女性の骨盤は出産に適応して幅広くなり、男性の骨盤はそれとは異なる形をしています。

では、その「男性らしい骨盤」は人類の祖先から受け継がれてきた基本形なのでしょうか。

新たな研究は、この常識をひっくり返す可能性を示しました。

男性ネアンデルタール人の骨盤を調べたところ、歩行に関わる複数の特徴が現代男性よりも、むしろ現代女性に近かったのです。

しかし研究者らは、ネアンデルタール人の骨盤が特殊なのではなく、現代人の男性の骨盤こそが進化の途中で大きく作り変えられた可能性を指摘しています。

研究の詳細は、イスラエル・テルアビブ大学(Tel Aviv University)により、2026年7月31日付で学術誌『Scientific Reports』に掲載されました。

目次

  • ネアンデルタール男性の骨盤は現代女性に近かった
  • 現代男性の骨盤には「バネ」が組み込まれた?

ネアンデルタール男性の骨盤は現代女性に近かった

ネアンデルタール人の骨盤は、以前から現代人とは少し違った形をしていることが知られていました。

そのため長年、「なぜネアンデルタール人は特殊な骨盤を持っていたのか」という方向から説明が試みられてきました。

そこで研究チームは、イスラエルのケバラ洞窟とスペインのシマ・デ・ロス・ウエソス遺跡から見つかった、ほぼ完全な男性の骨盤2点を現代人の骨盤と比較。

ネアンデルタール人の男性の骨盤の画像がこちら

すると意外なことに、ネアンデルタール男性の骨盤は、多くの測定値や比率で現代男性より現代女性に近い特徴を示しました。

特に重要だったのが、太ももの骨がはまり込む「寛骨臼(かんこつきゅう)」、つまり股関節の位置です。

現代男性では寛骨臼が骨盤の前方に寄っています。

これに対して現代女性と男性ネアンデルタール人では、より後方に位置していました。

つまり、「ネアンデルタール人だけが変わっていた」と考える必要はありません。

むしろネアンデルタール人と現代女性が祖先的な配置を比較的保ち、現代男性だけが股関節を前方へ移動させる方向に進化した可能性があるのです。

ただし、これはネアンデルタール男性の骨盤全体が「女性そのもの」だったという意味ではありません。

今回の類似は、主として歩行の力学に関係すると考えられる特定の形態に見られたものです。

現代男性の骨盤には「バネ」が組み込まれた?

では、なぜ現代男性だけ股関節の位置を変えたのでしょうか。

チームが提案したのが、歩行時の衝撃を吸収し、エネルギーを再利用するためだったという生体力学モデルです。

人は歩くたびに身体の重心が上下します。

一歩を踏み出して重心が下がれば、次の一歩では再び身体を持ち上げなければなりません。

研究者らによると、現代男性のように股関節が前方にあると、骨盤周辺の筋肉や腱に力がかかり、それらが一時的にエネルギーを蓄える「バネ」のように働く可能性があります。

重心が落ちる際の衝撃をやわらげ、そのエネルギーの一部を次の一歩で返すことで、長距離歩行を効率化できたかもしれないのです。

一方、女性では出産のために十分な産道を確保する必要があります。

研究者らは、この制約によって骨盤を男性型へ全面的に変化させることが難しく、祖先的な配置がより強く残った可能性を考えています。

とはいえ、この「天然のバネ」が実際に長距離歩行の消費エネルギーを減らしていることまで今回の研究で実証されたわけではありません。

著者ら自身も、このモデルが正しいか、また長距離歩行で正味の利益をもたらすかについては今後の実験的検証が必要だとしています。

ネアンデルタール人の骨盤は、長い間「奇妙なもの」として眺められてきました。

しかし比較対象を変えると、奇妙に見えるのはむしろ私たち現代男性のほうだったのかもしれません。

絶滅した人類の身体を調べることが、現代人の身体に隠れていた進化上の工夫を浮かび上がらせたのです。

参考文献

Male Neanderthal pelvises resemble those of modern females, challenging decades-old assumptions
https://phys.org/news/2026-08-male-neanderthal-pelvises-resemble-modern.html

元論文

Neandertal pelvis reveals specialized walking apparatus in human males
https://doi.org/10.1038/s41598-026-59915-8

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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