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恒星の自転と「逆向き」に回る奇妙な惑星を発見

  • 2026.9.30
恒星の自転と「逆向き」に回る奇妙な惑星を発見
恒星の自転と「逆向き」に回る奇妙な惑星を発見 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

遊園地のメリーゴーラウンドでは、木馬たちがみな同じ向きに並び、同じ方向へぐるぐると回っています。

宇宙の惑星たちも、ふつうはこうした「そろった回り方」をすると考えられています。

恒星とその惑星が同じ回転するガスと塵の円盤から生まれるなら、惑星は恒星の自転と同じ向きに公転するはずだからです。

そんな中、ジュネーブ大学やロンドン大学クイーン・メアリー校(QMUL)などの国際研究チームは、小さくて温度の低い恒星「M型矮星」を回る惑星「GJ 3090 b」の軌道の向きを調べました。

この惑星は、恒星の自転に対してどちらを向いて回っていたのでしょうか。

研究内容の詳細は2026年9月1日に『Astronomy and Astrophysics』にて発表されました。

目次

  • 惑星の「回る向き」はどうやって調べるのか
  • GJ 3090 b の軌道はどちらを向いていたのか?
  • 逆走の「犯人」はどこに? 浮かび上がった2枚目の円盤

惑星の「回る向き」はどうやって調べるのか

惑星の「回る向き」はどうやって調べるのか
惑星の「回る向き」はどうやって調べるのか / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

恒星の自転軸と惑星の軌道の向きがなす角度は、惑星系がどう生まれ、どう変化してきたのかを探る大事な手がかりになります。

特に惑星が複数ある惑星系では、惑星がどんな道筋をたどって今の位置へ移ってきたのかについていくつもの説が競い合っており、それらを見分けるのにも役立ちます。

角度が小さければ向きがそろっていて、大きくなるほど惑星の軌道は恒星の自転からずれていきます。

今回の主役である GJ 3090 b は、M2型に分類されるM型矮星を回る、海王星より小ぶりな「サブネプチューン」と呼ばれる惑星です。

M型矮星は、天の川銀河の恒星の大半を占める、小さくて温度の低い恒星です。

この恒星のまわりでは複数の惑星が確認されており、GJ 3090 b はそのうち内側を回る惑星です。

ただ、M型矮星を回るとりわけ小さな惑星の軌道の作りは、これまでほとんど手の届かない領域でした。

以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(惑星と恒星の違いってなに?両方の特徴をもつ褐色矮星の軌道から形成過程が明らかに)

そこで研究チームが狙ったのが、惑星が恒星の前を横切る「トランジット」の瞬間です。

チームは GJ 3090 b のトランジットを6回観測し、近赤外線の分光器「NIRPS」と観測装置「HARPS」でデータを集めました。

分光器とは、光を波長ごとに細かく分ける装置のことです。

研究チームは、細かな波長と短い時間間隔でとらえた光から、惑星の通過によって生じる「ロシター・マクローリン効果」(自転する恒星の手前を惑星が横切るとき、恒星の光の波長がわずかにずれて見える現象)を解析しました。

さらに「RMレボリューションズ」と呼ばれる手法を使い、軌道の向きを3次元で割り出そうとしたのです。

以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(「宇宙には好みの向きがある」銀河の分布に非対称性を検出)

GJ 3090 b の軌道はどちらを向いていたのか?

GJ 3090 b の軌道はどちらを向いていたのか?
GJ 3090 b の軌道はどちらを向いていたのか? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

解析の結果、GJ 3090 b の軌道と恒星の自転軸のずれは、3次元で約136度(プラス24度、マイナス18度の幅)と求められました。

この角度は、GJ 3090 b が恒星の自転とは逆向きに公転する「逆行軌道」を回っていることを示していました。

恒星がくるりと回る向きに逆らうように、惑星が反対回りで周回しているというわけです。

研究の主要著者の一人であるロンドン大学クイーン・メアリー校のアンドリュー・ウィンター博士は「この惑星系が際立っているのは、惑星が恒星に対して単に傾いているのではなく、逆向きに回っているからです。そうなると、こんな変わった軌道がどうやってできたのかという疑問がすぐに湧いてきます」と話しています。

GJ 3090 b は、M型矮星のまわりで見つかった初めての逆行惑星となりました。

天の川銀河の恒星の大半を占めるタイプの恒星のそばで、「逆走」する惑星が初めて確認されたことになります。

さらに GJ 3090 b は、M型矮星を回る惑星で3次元の軌道の傾きが測られたものの中では、もっとも小さな惑星でもあります。

今回の成果は、近赤外線の観測にこの解析手法を組み合わせることで、これまで手の届かなかった小さな惑星の軌道も探れることを示しています。

では、この惑星はどうして恒星と反対向きに回ることになったのでしょうか。

逆走の「犯人」はどこに? 浮かび上がった2枚目の円盤

逆走の「犯人」はどこに? 浮かび上がった2枚目の円盤
逆走の「犯人」はどこに? 浮かび上がった2枚目の円盤 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

惑星の軌道をひっくり返す方法として、よく挙げられるのが重力による影響です。

外側に十分重い惑星や、連れ添う恒星(伴星)があれば、その重力が長い時間をかけて軌道を大きく傾けることがあります。

逆行惑星の説明にはこうした相互作用がよく持ち出されるため、研究チームは GJ 3090 のまわりに、遠く離れた伴星や、極端な傾きを説明できるほど重い外側の惑星がいないかを探しました。

ところが、そうした重い相手がいる証拠は見つかりませんでした。

ジュネーブ大学の博士課程の学生ヤン・カルトレ氏は「この惑星をこれほど極端な軌道へ追いやれるような重い伴天体を探しましたが、その証拠は見つかりませんでした。この惑星系が変わった作りを手に入れた経緯について、考え方を変える必要があるのかもしれません」と述べています。

研究チームによると、この結果は重い天体の重力で乱されたというシナリオには不利で、むしろ惑星が生まれる円盤そのものが最初からずれていた可能性を指し示しています。

GJ 3090 b の惑星系は、確認済みの複数惑星系のうち、重い仲間が知られていないのに軌道が大きくずれている初めての例にもなりました。

そこで研究チームが最も有力な仕組みとして提案しているのが、「2枚目の円盤」という考えです。

恒星が後になってまわりからガスと塵を取り込み、元の円盤とは傾いた新しい円盤ができたというものです。

以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(原始星系の円盤が異なる角度で傾いているのを発見!未知の惑星がある証拠)

この新しい円盤は、恒星の自転軸と向きがそろっているとは限りません。

新しい材料から生まれた惑星がその向きを受け継ぎ、さらに円盤の働きで移動したなら、今の姿を説明できるといいます。

この場合、後から激しい出来事が起きたと考えなくても説明がつき、逆向きの軌道はこの惑星の生い立ちをそのまま記録していることになります。

ジュネーブ大学のヴァンサン・ブーリエ助教は「惑星系が、向きの違う2枚目の円盤から作り直されうるという考えは特にわくわくします。若い恒星のまわりの環境が、惑星の配置を決めるうえで、私たちが思っていたよりずっと大きな役割を果たしうることを示しているからです」と語っています。

ただし、これはまだ提案の段階です。

本当に傾いた2枚目の円盤から生まれたのか、そしてほかにも同じように極端な軌道をもつ惑星系があるのかを確かめるには、さらなる観測が必要とされています。

以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(2つの惑星が同じ軌道を公転する「トロヤ惑星」を発見!)

惑星が恒星と同じ向きに回るのは当たり前だと思いがちですが、その向きは惑星が生まれた環境しだいで描き直されることもあるのかもしれません。

参考文献

This Strange Planet Is Going Backwards – and Scientists Don’t Know Why (SciTechDaily)
https://scitechdaily.com/this-strange-planet-is-going-backwards-and-scientists-dont-know-why/

元論文

Upside down: GJ 3090 b the first retrograde exoplanet around an M dwarf detected with NIRPS
https://doi.org/10.1051/0004-6361/202661989

ライター

天道銀河: 科学、歴史、心理、宇宙、生き物、テクノロジーなど、気になるものにはジャンルを問わず首を突っ込む雑食系ライターです。ひとつの分野を深く極めるというより、さまざまな知識を広く集め、意外なつながりを見つけるのが好きです。専門家ほど深くはなくても、好奇心の広さなら負けません。「こんな世界もあるのか」と思えるような、面白くてわかりやすい話題を届けていきます。

編集者

ナゾロジー 編集部

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