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「1回使っただけだから、全額返金してくれ」泥だらけの工具を持ち込んだ客。だが、店長が販売履歴を確認した結果

  • 2026.8.16
「1回使っただけだから、全額返金してくれ」泥だらけの工具を持ち込んだ客。だが、店長が販売履歴を確認した結果

レジに置かれた泥だらけの工具

定年を迎えたあと、近所のホームセンターで働きはじめて三年目になります。

その日は平日の夕方で、レジには私と若い社員の二人が入っていました。

買い物客が増えはじめたころ、紙袋を提げた六十歳くらいの男性が、まっすぐ私のレジへ歩いてきました。

男性が袋から取り出したのは、電動ドライバーでした。

「これ、不良品だった。1回使っただけだから、全額返金してくれ」

本体を受け取ると、手のひらにざらりとした感触が残りました。

グリップの溝には乾いた土が入り込み、側面には泥がこびりついています。先端の金具も、角が丸くなるほどすり減っていました。

一度使用しただけとは思えない状態でしたが、私は決めつけずに確認します。

「恐れ入ります。レシートなど、当店での購入を確認できるものはお持ちでしょうか」

「そんなもの、とっくに捨てたよ」

男性によると、購入したのは半月ほど前だということでした。

不良品と主張する客

拳で叩かれたレジ台

「申し訳ございません。購入履歴を確認できない場合、その場での返金はいたしかねます」

そう説明すると、男性の表情が一変しました。

「客が買ったって言ってるんだ。俺を疑うのか」

男性の拳がレジ台に落ち、置かれていた電動ドライバーが小さく跳ねました。

後ろに並んでいたお客さまたちが、一斉にこちらを見ます。

「店長を呼べ。話にならない」

私は若い社員にレジを任せ、店長を呼びに行きました。

その間にも列は伸び続け、売り場の通路まで達していました。

怒る客

店長が確認した販売履歴

店長は男性の前に立つと、まず深く頭を下げました。

「お待たせいたしました。商品の状態と購入状況を確認させてください」

男性は腕を組み、同じ主張を繰り返します。

「半月前にここで買った。1回使ったら動かなくなったんだ」

店長は反論せず、本体に記載されたメーカー名と型番をメモしました。

そして、レジ横の端末で当店の販売履歴を調べます。

しばらく画面を確認したあと、店長は静かに男性へ向き直りました。

「こちらの型番ですが、当店では昨年に取り扱いを終了しております」

男性の眉がわずかに動きました。

客に告げた事実

「最後に販売した記録も、八か月前です。半月前に当店で販売した記録はございません」

「そんなはずないだろ。同じような店がいくつもあるから、記録が分からないだけだ」

「ほかの店舗で購入された可能性はございます。ただ、当店で購入された商品として返金することはできません」

店長は電動ドライバーを男性の前へ戻しました。

「故障の確認をご希望でしたら、メーカーの点検窓口をご案内いたします」

「点検なんていい。金を返せば済む話だろ」

「購入店舗や購入日が確認できないため、返金はできません」

店長の答えは変わりませんでした。

男性が持ち帰った電動ドライバー

男性は何か言い返そうとしましたが、後ろに並ぶお客さまたちの視線に気づいたようでした。

列の先頭にいた女性が、小さくため息をつきます。

立ち去った客

男性は店長と端末の画面を交互に見たあと、電動ドライバーを紙袋へ押し込みました。

「もういい。二度と来ないからな」

そう言い残し、男性は早足で出口へ向かっていきました。

店長はその背中を追いかけることなく、列に向かって頭を下げます。

「長らくお待たせして、申し訳ございませんでした」

そして私の隣のレジを開けると、いつもと変わらない声で呼びかけました。

「こちらのレジもご利用ください」

感情的な相手に対しても、事実を一つずつ確認し、できることとできないことを明確に伝える。

店長の落ち着いた対応を見ながら、接客で本当に必要なのは、声の大きさではなく冷静さなのだと感じました。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、60代以上・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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