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「玄関の前で、水が止まらなくて」家の前で困り果てていたご夫婦。だが、通りかかった私がそっと手を貸した結果

  • 2026.8.13

帰り道に聞こえた、いつもと違う水の音

その夏の日、仕事を終えて自宅へ向かっていると、住宅街の一角から勢いよく水が流れる音が聞こえてきました。

何だろうと思って見ると、隣に住む高齢のご夫婦が、玄関脇の小さな庭で困ったように立っています。

屋外の蛇口からは水が出たままで、足元には小さな水たまりができていました。

「どうされたんですか?」

私が声をかけると、奥さまがほっとしたような表情を浮かべました。

「庭に水をやっていたら、水が止まらなくなってしまって」

旦那さまも蛇口の前にしゃがみ込みながら、困ったように言います。

「閉めようとしてるんやけど、ハンドルが固うてなあ」

見ると、昔ながらの屋外蛇口で、ハンドルはかなり固くなっているようでした。

旦那さまが何度か回そうとしたものの、手に力が入りにくいのか、ほとんど動きません。

水の勢いはそれほど激しくありませんでしたが、このまま流し続けるわけにもいきません。

普段、ご夫婦とは道ですれ違ったときに挨拶をする程度の間柄でした。それでも、目の前で困っているのを見て、そのまま家へ帰る気にはなれませんでした。

「私もやってみますね」

そう声をかけて、私は鞄を濡れない場所に置きました。

固かったハンドルが動いた、そのあとのこと

蛇口のハンドルを両手でゆっくり回してみると、最初はびくともしません。

無理に力を入れて壊してしまってはいけないと思い、いったん手を離しました。

それから角度を変え、少しずつ力をかけてみます。

すると、固まっていたハンドルがわずかに動きました。

「あ、動きました」

そのまま慎重に回していくと、水の勢いが少しずつ弱まり、やがて完全に止まりました。

「よかった…」

奥さまが胸をなで下ろします。

旦那さまも蛇口を確かめながら、何度も頭を下げてくれました。

「助かったわ。ありがとう」

私は「閉まってよかったです」と答えましたが、念のため、また同じことが起きるようなら無理に使わず、一度見てもらったほうがいいかもしれませんね、と伝えました。

その日はそれだけで、自宅へ戻りました。

ところが数日後、玄関のチャイムが鳴りました。

扉を開けると、そこにはあのご夫婦が立っていました。奥さまの手には、小さな紙袋があります。

「この前のお礼。ほんの少しだけやけど」

中には、近所のお店で買ったという焼き菓子が入っていました。

「そんな、わざわざいいですよ」

私が恐縮すると、旦那さまが笑って言いました。

「いやいや、本当に助かったから。今度はそっちが困ったとき、遠慮せず声かけてな」

その言葉が、思いのほか心に残りました。

それまで私は、ご近所付き合いは挨拶くらいで十分だと思っていました。深く関わりすぎないほうが、お互い気楽だとも考えていたのです。

けれど、何か特別な付き合いをしなくても、困ったときに少し手を貸すだけで関係は変わるのだと気づきました。

それから、ご夫婦とは顔を合わせれば以前より少し長く話すようになりました。

「今日は暑いですね」

「雨、降りそうですね」

そんな何気ない会話ばかりです。

それでも、すぐ隣に顔を知っている人がいると思うだけで、以前よりこの場所が少し安心できる場所に感じられるようになりました。

あの日、聞こえてきた水の音を素通りしなくてよかった。今でも、ときどきそう思います。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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