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「指図するな、俺が先だ」レジ応援の列に割り込んで注意された客。だが、周りの空気を察して離れた

  • 2026.8.12

応援に開けたレジ

もう四十年も前のことになる。今でも混み合った夕方のスーパーに立つと、あの日の店内のざわめきが、ふと耳の奥によみがえってくる。

当時二十歳そこそこの私は、地元のスーパーでレジ打ちのアルバイトをしていた。

夕方の書き入れ時だった。一台のレジに客の列が長く伸び、カゴを抱えた人たちが、じりじりと苛立ちはじめている。

見かねた私は、隣で閉じていたレジの明かりを慌てて灯した。まだ働きはじめて数ヶ月、応援に入るのも慣れないころだ。

「次にお待ちのお客様、こちらへどうぞ」

正しく列の先頭に立っていた主婦らしき女性へ、私は手のひらで台を示した。ところが、その列にすら並んでいなかった年配の男性が、横からすっと割り込んできたのだ。七十歳くらいだろうか。

「恐れ入ります。あちらの最後尾にお並びいただけますか」

できるだけ角が立たないよう、私は元の列の後ろを指した。すると、男性の目の色がみるみる変わった。

「指図するな、俺が先だ」

ぴしゃりと言い放たれ、私は言葉に詰まってしまった。

二十歳の私に、客へ強く出る度胸などあるはずもない。周りの人たちも、気まずそうに視線をそらしていく。

周りが動かした空気

だが、その瞬間だった。割り込まれた列に並んでいた人たちが、いっせいに男性のほうへ視線を向けたのだ。

誰ひとり声を荒らげはしない。ただ、冷ややかな目だけが、静かに男性の背中へと集まっていく。

「……みんな、ちゃんと並んでますよ」

列の中ほどにいた中年の男性が、ぽつりとつぶやいた。その一言で、あたりの空気がぴたりと固まる。

「そうよ、順番でしょう」

すぐ後ろにいた別の女性も、静かに言葉を重ねた。責める調子ではない。それがかえって、ずしりと重かった。

年配の男性は、きょろきょろと辺りを見回した。自分に注がれる無言の視線に、ようやく気づいたのだろう。何か言い返そうと口を開きかけて、そのまま飲み込む。かごを持つ手が、力なく下がった。

そして彼は、ばつが悪そうに顔を伏せると、何も言わずに列から離れ、そのまま人混みの奥へと消えていった。

「お待たせしました。どうぞ、こちらへ」

私は先頭の女性を、あらためて台へと案内した。女性は小さく笑って、頷いてくれた。

強い言葉で言い返したわけでも、誰かが怒鳴ったわけでもない。ただ、正しく順番を守っていた人たちの静かな視線が、あの男性を退かせたのだ。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、60代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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