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「警備員に従いUターン」で違反切符?自宅前の工事で“逆走”強いられた理不尽すぎる体験

  • 2026.8.9
自宅前の道路が工事車両でふさがれ、日常生活に支障(画像はイメージ)
自宅前の道路が工事車両でふさがれ、日常生活に支障(画像はイメージ)

7月のある日、自宅前の一方通行の道路が、また工事車両でふさがれました。電気設備の取り替え工事だといいます。6月、7月と2カ月連続です。

交通量の多い道で、警備員は走ってくる車を次々とUターンさせています。しかし、一方通行でUターンをすれば、その先は逆走。住民は、違反せざるを得ない状況に置かれていました。

車を出したのは通院のためだった

近所の用事なら、私は歩くか自転車で済ませます。車を出すのは、必要なときだけ。私の車は、高齢になる父の通院に使っています。足腰が弱く、送迎は欠かせません。一度目から、私は工事業者に事情を伝えていました。後部座席に高齢の父がいること。近くに住む住民であること。

それでも作業スタッフは車をどかしません。「皆さんにご協力いただいています」と言うばかりでした。「みんなやっている、だからあなたも」という理屈です。私は言われるまま逆走し、500メートル進んで大通りに出ました。

二度目は、違いました。父を示して通行を求めると、スタッフはこう言い放ちました。

「皆さんにご協力いただいています。あなただけのわがままは許されません」

通院の送迎だと伝えても、です。しかもこのとき、後ろには別の車がつかえていました。逆走できる状態ですらありません。示された唯一の逃げ道すら、ふさがっていました。繰り返し移動を求めて、動いたのは30分後。予約の時間には、間に合いませんでした。従業員の舌打ちが、耳に残りました。

その間、もう一つの光景を見ています。区の清掃車が、一方通行を逆走していったのです。道沿いには、ゴミの集積所が数カ所あります。普段なら、清掃車を集積所の前に横付けします。だが、工事でそれができません。

清掃員は、生ゴミの袋を、離れた車まで手で運んでいました。夏で臭いも相当だったはずです。それでも運び切れなかったのでしょう。最後は、車が一方通行を逆走していきました。工事現場は、住民だけではありません。区の公用車も、清掃業務も、巻き込んでいたのです。

警察に確認すると現場の説明とは違っていた

ふに落ちず、帰宅後に警察へ確認しました。担当者の説明は、現場の話とまるで違いました。この工事に、道路を封鎖してよいという許可は出していないと。Uターンも逆走も、交通違反であり、違反すれば、反則金を払うのは運転手。事故のときも同じだといいます。

指導は明快でした。車が来たら、その都度車両をどかして通します。それが本来の運用だ、と。あくまで、私が警察から受けた説明です。

ここが核心です。道路で工事をするには、道路交通法に基づく道路使用許可が必要です。しかしこれは、「道路を通行以外の目的で使ってよい」という許可にすぎません。一般の車に逆走や通行禁止違反をさせてよい、という許可ではありません。

では、一方通行で工事をして、住民が逆走しなければ出られないとき、どうするのでしょうか。業者が何らかの許可を取れば、通りかかった車に逆走させてよくなるという仕組みはありません。通行禁止の道路を通る許可(道路交通法8条2項)という制度はありますが、これは通行する側が自分の車について事前に申請するものです。工事業者が代わりに取れるものではありません。

結局、答えは警察が言った通りです。車が来たら、その都度どかして通す。道をふさぐ側が、通行を妨げないよう運用する。それしかありません。迂回(うかい)路の確保や住民への周知も含め、所轄警察署と事前に調整しておくのが本来の筋です。それをせず、現場の判断で住民に逆走させていたのなら、不適切な運用ということになります。

従った住民がすべての責任を負う

もう一つ、見過ごせない問題があります。交通誘導の権限です。警備員の誘導には、法的な強制力がありません。警備業法は、警備員に特別な権限を与えていないと明記しています。信号や標識と違い、警備員の「こちらへどうぞ」は、任意のお願いにすぎません。

従うかどうかは、運転者が決めます。警察官の交通整理とは、重みがまるで違います。この違いが、住民に牙をむきます。誘導に従って逆走し、切符を切られても、事故を起こしても、責任を負うのは運転者本人。「警備員に言われたから」は、通用しません。

実際、東京地裁は2003年、次のような判断を示しています。交差点の信号が「直進と左折のみ可」を示す中、警備員が右折の合図を出し、それに従って右折した車が対向車と衝突した事故。裁判所は、警備員の誘導ミスを認めつつも、信号表示に反して右折した運転者自身の義務違反は重いとして、運転手7・警備員側3の過失割合としました(東京地裁2003年9月8日判決、自動車保険ジャーナル1546号)。

ふさいだのは事業者。なのに、違反の責任だけが、たまたま通りかかった住民に転嫁されます。加害と負担が、きれいにねじれているのです。

電気工事は必要です。現場で働く方々には、敬意を払います。だからこそ、手続きと運用は正しくあってほしいです。「許可の範囲を守る」「車が来たらどかし逆走させない手続きを踏む」というだけのことです。

逆走の反則金を自分で払うか、30分足止めされて、親の通院を諦めるか、どちらを選んでも、私たちは「違反者」か「わがままな住民」にされてしまいます。これは今日も、どこかの街で起きています。だからこそ、変わってほしいと強く思います。

コラムニスト、著述家 尾藤克之

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