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「韓国文化通信」Vol.42 〈Oilje〉オーナーシェフ・Shin Dong-hun

  • 2026.8.6

今、最も“要注意”すべき韓国カルチャーを牽引するキーパーソンにインタビューし、その変化を定点観測していく本連載。第42回は、ソウルの三角地(サムガッチ)にあるスープ店で、ミシュランガイド韓国の2026年ビブグルマンにも選ばれた〈Oilje(オイルジェ/오일제)〉オーナーシェフのシン・ドンフンさん。

text: Keiko Kamijo / translation & coordination: Hyojeong Choi (KACHI MEDIA)

Oiljeオーナーシェフ・Shin Dong-hun
BRUTUS

ミシュラン星の絶品ワカメスープ

──もともと「食」には興味があったのでしょうか?

子供の頃からキッチンで遊ぶのが好きで、2歳上の姉と一緒にサンドイッチの具材を考えたり、今までにないスンデポックム(スンデ炒め料理)を作ってみたりして、友達に食べさせたりしていました。最初は料理を作ること自体にハマっていたのですが、作っているうちに食べてくれる人のフィードバックを受けて修正していく、そのアイデアが広がり新しいことに挑戦する過程が面白くなりました。

高校3年生で進路を決める時に料理にしようと考えて、大学受験の塾ではなく、韓国料理の資格を取る塾に通い、卒業後すぐに就職。約1年間、西洋料理を学ぶ中で「もっと深く勉強したい」という思いが強くなり、ホテルの調理学科へ進学。大学院の修士課程まで、仕事と学業の両立生活をスタート。そして、通算15年くらいイタリアンやフレンチレストランに勤めていました。

──その後独立されるきっかけが何かあったのですか?

コロナ禍が一つのきっかけにはなりました。コロナ禍で韓国の外食産業には大きな変化がありました。私が勤めていたレストランでもリストラをせねばならない状況で。当時、レストランの中でも私は一番高給のシェフだったので、ほかの人を辞めさせないという条件で自分が辞めるという選択をしました。

その時に感じた確信は、今後も外食産業に携わっていく中で、流行を追っていたら決して長続きはしないということ。そのうえでどうしたら食への喜びを感じてもらえるかを突き詰めて考えました。

──お仕事では西洋料理を担当されていたのに、韓国料理、しかもワカメスープだけにしたのはなぜですか?

最初から韓国料理で、しかも家庭料理であるワカメスープにしようと思っていたわけではありません。流行の移り変わりが速い韓国において、何度も食べたくなるメニューってなんだ?とずっと考えていました。その時にずいぶん前からいい産地のワカメを活用したいなと考えていたことを思い出したんです。

ワカメスープは韓国人にとって誕生日に食べる思い出深い料理。私が幼稚園の時に初めて作ったスープもワカメスープでした。誰かのために作る料理といえば、やっぱりワカメスープなんです。

ワカメをエゴマ油とゴマ油で丁寧に炒め、牛骨のスープで煮込んだワカメスープ(15,000ウォン)。

──〈Oilje〉の定食のこだわりを教えてください。

まずはお店は自分一人で始める予定だったので、たくさんのメニューを扱うのは難しいと考えました。なので、ワカメスープ一品で勝負をしようと決めました。

主役のワカメは韓国の南の方で採れるワカメの新芽を使うことを決めていて。一緒に食べるのに一番ふさわしい塩辛、辛子菜のキムチ、釜で炊くお米を全国の産地で探しました。選ぶ基準としては、ワカメスープに合うこと。そして、少ないおかずだけどそれぞれが際立つクラシックな定食が完成しました。

──お店のインテリアなどへのこだわりを教えてください。

店で炊きたてのご飯が振る舞えるよう、キッチンにこだわりました。ワカメスープに欠かせないのがおいしいご飯です。

普通の食堂では、ご飯を炊いて保温しておきますが、そうすると水分が飛び少し味が劣化してしまう。参考にしたのは韓国の精進料理で有名なジョングァン僧侶のキッチンです。

──〈Oilje〉の名前の由来を教えてください。

ワカメスープを作る時に、エゴマ油とゴマ油でワカメをよく炒めてから煮るのですが、その「オイル(油)」という意味と「ジェ(釜)」という言葉を合わせた造語です。

──今後やりたいことは?

おかげさまで国内ではたくさんの人に店を知ってもらうことができたので、日本を含め海外の人たちにも味わっていただきたいですね。海外でのポップアップなども積極的にしていきたいです。

また、私はイタリア料理の経験もありますので、今後は別のスタイルの食堂に挑戦してみたい気持ちもあります。楽しみにしていてください。

Shin Dong-hunが選ぶ、今の韓国を知るショップ

釜山のトッカルビ専門店ソン内香米
ソン内香米(ソンネヒャンミ)  「釜山(プサン)にあるトッカルビ(韓国式ハンバーグ)の専門店で、店内は6席しかありません。メニューも1種類。この店主とは価値観が似ていると感じていて、釜山の〈Oilje〉だと思っています。予約の取れない店なんですが、今後、一緒にポップアップの企画を考えています」。Instagram:@sonnaehyangmi

profile

Shin Dong-hun(〈Oilje〉オーナーシェフ)

シン・ドンフン/イタリア料理店、フランス料理店にて約15年の経験をし独立。2023年にワカメスープの専門店〈Oilje(オイルジェ/오일제)〉をオープンする。ミシュランガイド韓国の2026年ビブグルマンにも選出され、予約の取れない店に。
Instagram:@oilje_official

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