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名湯ここにあり 台灣温泉

  • 2026.8.4

世界でも希に見る温泉の宝庫と言われる台湾。その中心地に住む歌人、作家、実業家であり温泉ソムリエの資格も持つ小佐野彈氏に導かれ美麗なる島ならではの極上の出湯を巡る。

※掲載情報は2023年7月当時のもの。台湾ドル NT$1=約4.6円。ホテルは1室2名で利用の場合の室料(税・サ別)。台湾は「先住民」でなく「原住民」が定着しているため「原住民」と表記


烏來(ウーライ)温泉「ボランド」の露天風呂。湯船を囲む庭園の向こうには翡翠色に澄む神秘的な川が広がる。

スコールに

濡れてきらめく

椰子の葉の

間(あはひ)に白い

湯煙ゆれる

小佐野 彈

小佐野彈さんが暮らす台湾は、世界有数の温泉大国でもある。

コロナ禍が明けて、多くの人が再び海外へ出かけるようになった。海外旅行先として人気第一位となったこともある台湾にも、日本人観光客の姿が戻りつつある。故宮博物院や九份などの名所散策、夜市のB級グルメから高級レストランまで、僕の暮らす台湾は観光資源の宝庫だ。

しかし、「台湾の温泉」を目的に訪れる観光客は、実はそんなに多くない。日本が世界屈指の温泉大国なのは周知の事実だが、同じ環太平洋造山帯に位置する台湾もまた、豊富な温泉資源に恵まれている。面積あたりの源泉の数で言えば、台湾は日本を抜いて世界一と言われている。

台北市中心部から地下鉄や車で1時間足らずで行ける名湯も多い。日本統治時代に開発された温泉地やマレー系の台湾原住民の人々の間で古来親しまれて来た古湯、山奥の川沿いに滾々(こんこん)と湧く野湯など、そのバラエティーは日本を凌ぐほどである。

単純硫黄泉や微量の放射能を含んだ強烈な酸性泉など3種類の異なる泉質の温泉が湧く台北市北部の北投温泉は、都心部からの近さと相まって有馬温泉や箱根を彷彿とさせるし、烏來温泉や礁溪温泉、中部の泰安温泉など台湾に最も多くみられる炭酸水素ナトリウム泉は「涼の湯」とも言われ、湯上がりのさらりとした涼感は、1年を通じて温暖な台湾にぴったりだ。アルカリ度が高く、美肌効果も期待できる湯も多い。

かつては水着着用の温泉が主流だったが、日本式の温泉入浴がブームとなった90年代以降は、男女別で裸で入浴できる温泉が格段に増えた。日本の高級旅館とは趣の異なる、ラグジュアリーな温泉宿も年々増えている。

日本各地の空港からフライトがあり、東京からであれば3時間ほどの台湾はまさしく「通える海外」だ。ぜひ湯巡りという新しい旅も楽しんではどうだろうか。(文=小佐野彈)

◆烏來(ウーライ)温泉 大自然と伝統文化が息づく台湾屈指の温泉

烏來は台湾北部、南勢渓(ナンシーシー)の岸に佇む湯郷。ウーライとは当地に住むタイヤル族の言葉で、熱い湯があるから「気をつけて」を意味するという。

「台北市内から車で1時間と近いですが、豊かな自然やタイヤル族の人たちの文化に親しめる。温泉は美人湯。ヌメヌメとした感触で、日本の基準だと単純温泉でしょうか」と小佐野氏。

ここではボランドでの滞在を小佐野氏は薦める。厳格な審査を経たホテルやレストランのみが属する「ルレ・エ・シャトー」の一員であり、もてなしの評判も高い宿だ。

「美しい景色のもと、原住民文化の展示やマインドフルネス系のプログラムも充実。心身をデトックスできます」

客室露天風呂も温泉掛け流し。
貸切個室風呂。
レストラン棟。
体験プログラムでは、原住民・パイワン族が受け継ぐ祝福の歌も披露される。
「儀式」というプログラムでは水上に響く鐘の音が気持ちを静める。

ボランド|Volando(馥蘭朵烏來渡假酒店)

所在地 新北市烏來區新烏路五段176號
料金 NT$18,000~朝・夕食、軽食込
https://www.volandospringpark.com/jp/

◆北投(ベイトウ)温泉 青湯と白湯を一度に愉しめる

源泉である地熱谷の放つ湯煙と硫黄のにおいが立ち込め、温泉街らしい趣に満ちた北投。日本統治時代から発展を重ねてきた名湯は、意外にも台北市内に位置する。小佐野氏は当地によく通い、その泉質と上質な宿に酔いしれるという。

「北投には日本の玉川温泉とほぼ同じ泉質の酸性泉である“青湯”と、お肌にやさしい白濁した単純硫黄泉の“白湯”が湧き、両方を堪能できる。ここは5室という隠れ家のような高級宿なので、台湾の著名人も数多く訪れます」

隣接する地熱谷。
こちらの宿もルレ・エ・シャトーの会員。
青湯と、奥には白湯が。
北投温泉 ヴィラ32。

ヴィラ32|Villa32

所在地 台北市北投區中山路32號
料金 NT$19,404~朝食込(税・サ込)
https://www.villa32.com/jp

◆礁溪(ジャオシー)温泉 リゾート気分満点の湯どころ

台北から13キロにも及ぶトンネルを抜け東海岸へ。火山島の亀山島が沖に浮かぶ海辺に礁溪はある。台湾では珍しい平地に湧く温泉だ。小佐野氏によれば「台湾三大美人湯のひとつであり、おそらく炭酸水素塩泉。肌の蘇生効果が高く、きめを整えてくれると言われます」。温泉リゾートとして人気を高める当地ではホテルの進出も続く。なかでもこちらは開放感溢れる入浴を屋上で愉しめる稀少なホテル。「デザインも現代的で快適です」と小佐野氏。

客室にも美人湯。
屋上の温泉プールで日光浴も。
ウェルスプリング・バイ・シルクス。

ウェルスプリング・バイ・シルクス|JIAOXI WELLSPRING by SILKS(礁溪晶泉丰旅)

所在地 宜蘭縣礁溪鄉溫泉路67號
料金 NT$5,800~朝食込
https://jiaoxi.wellspringbysilks.com/jp/

◆泰安(タイアン)温泉 山々を越えて辿り着く秘境の温泉

「客室、露天風呂の質ともにここが台湾ナンバーワンかもしれない」と小佐野氏。この評価に頷く台湾の人は多い。

台北から泰安へは高速鉄道や車で約2時間の道程。3000メートル級の山が連なる雪山山脈も間近な川の畔で、宿は深い緑に覆われて建つ。

「とても癒やされるところです。温泉は水着着用と裸で入れるエリアに分かれ、その敷地はあまりに広大。湯量たっぷりで部屋のお風呂でも存分に愉しめる。推測するに炭酸水素塩泉の美人湯ですね」

古来、ここ苗栗(ミャオリー)県はタイヤル族や大陸由来の客家の人々が暮らす地。宿でも地元に根差す多様な文化を取り入れ泰安の魅力を伝える。台湾温泉の神髄に感じ入る秘湯だ。

原始林も迫る敷地には山の湧水を満たすプールや露天風呂が連なる。
客室の風呂も源泉掛け流しで圧倒的な湯量。台湾は水風呂の併設も多い。
建築は自然との共存がテーマ。
水着着用の温泉エリア。湯温別に仕切られ、山の絶景と長湯を満喫できる。
客室。

オンセン・パパワカ|Onsen Papawaqa(泰安觀止溫泉會館)

所在地 苗栗縣泰安鄉錦水村圓墩58號
料金 NT$8,500~朝食込
https://www.papawaqa.com.tw/

〈番外編〉 台湾の美食 “火鍋”も愉しむ

無類の火鍋(鍋料理)天国でもある台湾。小佐野氏の盟友であり、台北に移住した音楽プロデューサーのTAKUYA氏。「温泉と鍋は合う。どちらも湯につかるだけ」と火鍋の極意を伝授する。

火鍋のタレは醬油やごま油など自分の好みで調合する。長年、火鍋を愛するTAKUYA氏の指南が始まる。

◆無老鍋(ウーラオグォ)台北西門町店

究極の火鍋が味わえるラグジュアリーな高級店。7年ほど前、小佐野氏に同店に案内され、TAKUYA氏は「人生で一番美味しい鍋だ!」と驚いた。以来、火鍋の虜に。ひとつの鍋でたっぷりの漢方香辛料が入ったピリ辛の無老辣香鍋と、豚骨や鶏ガラ出汁の麵包豆腐白湯鍋を味わう。「具材は一級品ばかり。お薦めはすり身や練り物、海鮮。台湾は野菜の味も濃くて美味しい」。ご指南通り、魚介を白湯にサッとくぐらせて口に含めば、ほとばしる旨みが心身に染み渡る。

「当店の鍋は健康志向。赤い麻辣も適度な辛さです」とスタッフ。予算は1名 NT$850~。
無老鍋(ウーラオグォ)台北西門町店。

無老鍋(ウーラオグォ)台北西門町店

所在地 台北市中正區中華路一段55號2樓
営業時間 11:30~翌2:00
定休日 無休
https://www.wulao.com.tw/jp/

◆松江自助火鍋城(ソンジャンズーヂェホゥグォチォン)

「無老鍋がよそいきのトップだとしたら、庶民派な店のトップはここ」とTAKUYA氏。行列の絶えない人気店は、奥の壁一面が冷蔵庫。そこに食材がずらりと並ぶ。まずスタッフが鍋の出汁のベースとなるスルメと肉を石鍋で炒め、あとは客が具材を選ぶ。「さらにどの旨みを加え、何を食べるかがミソ。誰一人同じ鍋を食べていないでしょう」と、TAKUYA氏が5年掛けて辿り着いた“僕の味”を披露する。出汁にもなるトマトをたっぷり入れ、椎茸や練り物、豚肉の唐揚げ、小籠包、蛤も投入。タレは特製の沙茶醬を使う。鍋とお玉でポーチドエッグをつくり、麺やご飯にかけて。火鍋の至福は尽きることがない。

火鍋奉行いわく「素材が新鮮だからか、最後まであんまりアクが出ない。この鍋の七不思議です」。
松江自助火鍋城の火鍋。
松江自助火鍋城。

松江自助火鍋城(ソンジャンズーヂェホゥグォチォン)

所在地 台北市中山區松江路315號1樓
電話番号 886-2-2501-2063
営業時間 11:00~23:30
定休日 無休
https://www.facebook.com/songjiangbuffethotpot/

※初出:文藝春秋 2023年8月号
※記載内容は変更されている場合もあります

冒頭文=小佐野彈 取材=上保雅美 写真=佐藤 亘

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