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地上波ドラマで“描きにくい”ネトフリドラマ「正直見るか迷った」配信前の“予想と違った”8月配信の話題作

  • 2026.9.3

Netflixシリーズ『SとX』が、8月20日より配信開始となった。
多田基生の漫画を原作とする本作は、発表時から大きな注目を集めていた。その理由は、レス問題、バーチャルでの性行為、性依存など、日本の地上波ドラマではなかなか正面から描きにくい題材を扱っているからだ。作品概要だけを見て、かなり刺激的な作品を想像した人も多かっただろう。

しかし、実際にふたを開けてみると、本作は、性を見せもののように扱う作品ではなく、人には言えない真剣な性の悩みを抱えた人たちと、彼らに向き合う主人公の誠実さが印象に残るものだった。
主演を務めるのは中島健人。セックスセラピスト・霜鳥壱人という難しい役柄に挑み、性の悩みを決して茶化さず、怖がらず、真正面から受け止める人物を繊細に演じている。

“理解できない”から始まるからこそ、視聴者も一緒に向き合える

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Netflixシリーズ『SとX〜セラピスト霜鳥壱人の告白〜』世界独占配信中

本作の主人公は、セックスセラピストの霜鳥壱人(中島健人)。彼が営むクリニックには、誰にも打ち明けられない性の悩みを抱えた人々が訪れる。

夫婦間のレス問題と性衝動を止められない依存症、二次元を愛する女子高生、バーチャル上での性行為にのめりこむ男性、さらに、盗撮を止められない男性など、視聴者によっては一見すると理解しがたいと感じるケースも登場する。けれど本作は、それらを“変わった悩み”として奇異な目を向けないことに特徴がある。

世間から理解されにくい悩みでも、本人にとっては日常を大きく揺るがす真剣な悩みだ。誰にも言えず、恥ずかしいことだと思い込み、ひとりで抱え込んできたその悩みに耳を傾けるところから、霜鳥のセラピーは始まる。

本作が巧みなのは、霜鳥のクリニックで働く看護師 ・犀川(三浦獠太)がまだ新人で、こうした一般的ではない性の悩みに慣れていない設定にしている点だ。

犀川は、依頼者の悩みに対して時に「理解できない」と反応する。その感覚は、多くの視聴者にとっても近いものだろう。だが霜鳥は、なぜその人はそう感じるのか。なぜその行動に至ったのか。背景にある孤独や傷、思い込みを一つひとつ解きほぐしていく。そのプロセスに犀川を巻き込んでいき、疑似的な体験をさせることで、視聴者にも理解を促していく。

視聴者の戸惑いを代弁する存在を物語の中に置き、その人物とともに“わからなさ”から出発できる構造になっているのだ。
性の悩みを特別なものとして隔離するのではなく、人間関係や自己肯定感、過去の傷と地続きのものとして描き、視聴者にも理解と共感を促す作りになっている点が本作の秀逸な点だ。

Xでも、こうした姿勢に反応する声が上がっている。「こういうことを『恥ずかしいこと』にせず、ちゃんと向き合って、学んで、解決していく」「性のことを学ぶ場所が必要」といった投稿もあり、本作が単なるドラマの枠を超えて、現実の悩みと接続して受け止められていることがうかがえる。

中島健人が見せた“誰も見捨てない”セラピスト像

本作の大きな魅力は、やはり中島健人の存在だ。
霜鳥は、どんな悩みに対しても真摯に向き合う。相手の悩みを先回りして決めつけることもなければ、驚いた顔をすることもない。言葉を選びながら、しかし必要な問いは避けずに投げかける。その眼差しは常に真剣だ。

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Netflixシリーズ『SとX〜セラピスト霜鳥壱人の告白〜』世界独占配信中

だからこそ、性的な題材を扱っていても、いやらしさよりも安心感が感じられる。中島健人の持つ物腰の柔らかさが題材の緩衝材となっている。
Xでも「ケンティーと新木優子ちゃんだからいやらしさや生々しさもなくちょうどいい温度」「タイトルも事前情報も正直見るか迷ったけど、見てよかった」「凄く優しく丁寧に創られたヒューマンドラマだった」といった声が寄せられている。

新木優子の演技も非常に繊細だ。新木演じる市之瀬佑美は、霜鳥にとって過去と現在をつなぐ重要な存在であり、彼の葛藤を引き出す人物でもある。強さと脆さを併せ持つ佇まいが、物語に恋愛ドラマとしての切なさを与えている。

“性に悩んでいない人はいない”

霜鳥は「性に悩んでいない人はいない」と言う。その言葉通り、彼自身も性に対する深いトラウマを抱えている。これも本作の大きなポイントになっている。程度や形は違っても、誰もが身体や欲望、愛し方、愛され方について、何かしらの戸惑いや傷を抱えている。霜鳥自身の物語が、そのことを体現している。

性を扱う作品は、ともすれば刺激や笑いに寄りやすい。だが『SとX』は、性を人間の尊厳に関わるものとして描き、“何も馬鹿にしない姿勢”を大事にしている。性の悩みを軽んじる人や恥ずかしいと思っている人ほど、学びがある作品と言えるかもしれない。性に対する色眼鏡や偏見を持つ人こそ、見てほしい作品だ。


Netflixシリーズ『SとX〜セラピスト霜鳥壱人の告白〜』世界独占配信中

ライター:杉本穂高
映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。X(旧Twitter):@Hotakasugi

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