1. トップ
  2. エピソード
  3. 「アンタのゴミ袋、やましい物が入ってるのか」他人のゴミ袋をチェックしていた女。非常識な行動に恐怖した瞬間

「アンタのゴミ袋、やましい物が入ってるのか」他人のゴミ袋をチェックしていた女。非常識な行動に恐怖した瞬間

  • 2026.7.28

夜の集積所にいた人影

一人暮らしを始めて二度目の秋だった。翌朝が収集日だったので、前夜のうちに集積所へゴミを出しに行った。

街灯だけがぽつんと照らす暗がりに、しゃがみ込んだ人影があった。50代半ばくらいの女性が、積まれたゴミ袋の口を一つずつ開けては、中をのぞいている。

近所の家から出された袋だ。

何をしているのだろうと立ち止まった私に、その人は勢いよく振り向いた。

「アンタ、あそこのアパートの子か」

知らない名前を挙げて、まるで犯人でも見つけたような目で私を見た。人違いですと答えても信じてもらえず、しばらく押し問答が続いた。ようやく誤解が解けたと思ったら、今度はその見知らぬ「犯人」への不満を、暗がりの中で一方的にまくし立て始めた。

その人の話では、同じ通りに住む誰かがルールを無視して好き勝手に物を捨てるのだそうで、だから自分が毎晩こうして袋の中身を確かめているのだと、まるで正義のように語った。

夜の集積所で、他人のゴミを一つずつ検分する。それを当然だと思っている口ぶりに、私は返す言葉を失った。

凍りついた一言

語りながらも、その手は他人の袋を探るのをやめない。私はただ、自分のゴミ袋を提げて立ち尽くしていた。早くこの場を離れたい。そう思った矢先、女性の目が私の袋に向いた。

「それ、こっちのネットに入れといてあげるよ」

妙にやさしい声だった。けれど、他人の袋を平然とあさる人にだけは、自分のゴミを触らせたくない。

とっさに「自分で出します」と一歩下がった。すると、女性の表情が一変した。

「アンタのゴミ袋、やましい物が入ってるのか」

暗がりに響いた大声に、心臓が縮み上がった。何も入っていない、ただの生活ゴミだ。それなのに、疑われているのはこちらのほうだった。むしろ、他人の袋を勝手に開けていたのはその人のほうなのに、なぜ私が問い詰められているのか。

理屈が通じる相手ではないと悟り、私は言葉を返せないまま、袋を胸に抱えて足早にその場を離れた。角を曲がるまで、背中に視線が刺さっている気がしてならなかった。

走って帰った部屋の鍵を、いつもより念入りに確かめた自分を、今でも覚えている。その日から私は、収集車が来る直前を狙って外へ出るようになった。誰かのゴミを毎晩あさる人が、同じ通りで息をひそめている。

そう思うと、ゴミを出すたびに玄関の外をそっとうかがう癖がついてしまった。引っ越すまでの数か月、その癖が抜けることは一度もなかった。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ