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お盆の高速道路で「前の車が跳ね上げたはずなんです」ナンバー控えた40代男性、保険会社が映像確認で気づいた“想定外の事実”

  • 2026.8.13
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「前の車が石を跳ね上げたはずなんです」

お盆や夏休み中の高速道路は帰省や旅行の車で交通量が増え、自然と車間が詰まります。その走行中に「パチッ」という乾いた音が響けば、まず疑うのは「前を走る車が石を跳ね上げた」ということではないでしょうか。

そして「ナンバープレートの番号さえ控えておけば修理費を請求できる」、そう考える方も多いはずです。

以前に損害保険会社で事故対応を担当していた私が、契約者のAさん(40代・男性)から受けた相談も、まさにその通りのものでした。

今回は、飛び石でフロントガラスに傷が入ったとき、前の車に修理費を請求できるのかをドライブレコーダーを使って検証した際のお話です。

高速道路上の飛び石被害

Aさんから相談が入ったのは、お盆が明けた頃でした。

Aさんが高速道路を走行中、乾いた音がしたそうです。立ち寄ったサービスエリアで確認したところ、フロントガラスの助手席側に500円玉より小さい傷を見つけました。

「前の車が跳ね上げた石だと思います。ナンバーは控えました」

Aさんの車にはドライブレコーダーが搭載されていたため、まずは映像を見せてもらうことにしました。

ドライブレコーダーを一緒に確認

映像データを送ってもらい、Aさんと電話をつないだまま確認していきます。

最初に映像の中で探したのは、石そのものです。音が入った前後の数秒を、速度を落として繰り返し再生。しかし何度スローで再生しても、高速で飛来する石がどこから来たのかは分かりませんでした。

「前の車以外に考えられません。ずっと同じ車線の真後ろを走っていたんですから」

Aさんは、そう続けました。

そこで次に確認したのは、前の車との位置関係です。Aさんの見立てが正しいなら、その車が跳ね上げた石がフロントガラスの高さまで届いていなければなりません。

映像で確認できたAさんの車と前の車との距離では、跳ね上げられた石はガラスに届く前に、車体下部やフロントバンパー付近に当たる位置関係にありました。

さらに、他に飛来元となりそうなものが映っていないかを探します。すると、被害が発生した時間帯に、対向車線を幌をかけたトラックが列をなして走行しており、幌の隙間からは、砂利のような積荷が見えていました。Aさんも、対向車線に大型車が続いていたことは覚えていたそうです。

高速道路では、対向車線から中央分離帯を越えて小石が飛来するケースもゼロではありません。飛来元を特定することはできず、前走車以外の要因も否定できない。映像からいえるのは、そこまででした。

ナンバーが分かっていても、請求ができない可能性がある

相手に修理費を求めるには、相手が特定できているだけでは足りません。その車が原因で損害を被ったことと、相手の過失を示す必要があります。今回のケースでは、映像はその裏づけにはなりませんでした。

そもそも、ナンバーが分かっていても、保険会社は警察のような権限を有していません。つまり、相手を追跡して連絡を取ることはできないのです。

この件を相手方との交渉ではなく、契約者からの相談として受けていたのも同じ理由です。請求する相手が定まっていない段階では、保険会社が交渉に入ることはできません。

「納得はできません。こちらは何も悪くないのに」

Aさんは、なかなか引き下がりませんでした。

傷が広がる前に、直すという判断

私はAさんに、ガラスの傷そのものの話をしました。

Aさんのガラスの傷は、リペアで対応できる範囲でした。一般に、修理できる傷の目安は500円玉で隠れる大きさとされており、ガラスの端やカメラの付近にあるものは交換が必要になります。

ここで問題となるのは季節です。夏場はガラスの内外で温度差が大きく、走行中の振動やエアコンの風でひびが広がる可能性があります。広がってしまえばリペアでは対応できず、ガラスの交換となることも考えられます。

リペアと交換では、10万円以上の差がつくことも珍しくありません。請求できるかどうかを考えている間に、Aさんの負担する額のほうが増えてしまうのです。

車両保険を使う手もありますが、飛び石による損害は1等級ダウン事故として扱われ、翌年の等級が下がります。そもそも、Aさんの車両保険には免責金額(自己負担額)として5万円が設定されており、修理費がその額を下回れば保険金は支払われません。

「請求を考えている間に傷が広がるのは、避けたいです」

今回のケースでは、Aさんは免責金額を考慮して保険を使わず、その週のうちに修理を済ませることになりました。

高速道路のリスクは、事前に減らせる

飛び石そのものを避けることは、かなり難しいと言わざるを得ません。跳ね上げられた石は一瞬で到達するため、見てから対応できるものではないからです。

そして今回のように、誰かに請求できないまま終わる損害もあります。ドライブレコーダーは、何が起きたかを残してはくれても、それが誰によるものなのかまでは映していないこともあるためです。

後から取り返せないのであれば、できるのは事前の備えだけとなります。

石が飛んできやすい状況に自ら近づかないこと。砂利や土砂を積んだ車両の後方や、対向車線を走る場面では、可能な範囲で車線や位置を変えてみてください。あわせて、ご自身の車がトラブルの原因にならないためにも、高速道路に乗る前に、タイヤの空気圧をはじめとした事前点検も済ませておきましょう。

お盆の高速道路は交通量が増え、走る距離も普段より長くなります。それだけ、何かが起きる確率も上がるということです。

起きてしまった損害を取り戻せるとは限りません。しかし、起きる確率を下げることは、出発前の自分だけができるのです。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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