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70万円の輸入車を買った44歳男性→納車2ヶ月で修理49万円も…6年間手放せなかった“意外な理由”

  • 2026.8.13
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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

約70万円で購入した中古の輸入コンパクトカー。納車1週間で20万円の修理費がかかり、その後の総額は約49万円に達しました。普通なら手放したくなる車ですが、知人のAさん(44歳)は「失敗ではなかった」と語るそうです。

なぜそこまでお金がかかる車を嫌いになれなかったのか。私が彼から聞いた、合理性だけでは測れない愛車との6年間のエピソードをご紹介します。

壊れていると錯覚するほど重いハンドル。「一乗り惚れ」から購入までの衝動

2018年春の夜、Aさんは知人が所有するスポーティーな輸入車のコンパクトカーを運転させてもらう機会がありました。ドアを閉めた時のしっかりとした剛性感に感心しつつキーを回すと、重厚な音が響き渡ります。そして走り出し、最初に彼を驚かせたのはステアリングの重さだったそうです。

あまりの重さに、最初は「パワーステアリングが故障しているのではないか」と疑ったほどだといいます。しかし、その戸惑いは長くは続きませんでした。ワインディングロードに差し掛かった途端、ノーズが吸い込まれるように素早く曲がり、まるで車と一体になったような感覚を味わったからです。

さらにアクセルを踏み込むと、車体前方から響くスーパーチャージャーの独特な音も相まって、「単なるかわいい車」という印象は「大人の遊び道具」へと完全に変わってしまったそうです。この一乗り惚れの体験がすっかり頭から離れなくなった彼は、すぐに行動を起こします。

翌日には中古車サイトを検索し、深いブルーの個体を見つけ出しました。走行距離は約7万キロで、車両価格は約70万円。古い輸入車は維持が大変かもしれないという知識は頭の片隅にあったものの、あの夜の感動が理屈を上回ってしまい、勢いのままに購入を決意したのだそうです。

納車からわずか1週間。突然の警告灯と「20万円」という現実

愛車を手に入れた喜びはとても大きく、用事もないのに遠回りをして帰る日が続いたといいます。駐車場に停めた後も、つい振り返ってブルーのボディを眺めてしまうほど、Aさんはこの車を気に入っていました。

ところが、その高揚感は長くは続きませんでした。納車からわずか1週間、走行距離が約200キロ増えた頃に、最初の試練が訪れます。通勤で高速道路の入り口に差し掛かり、加速しようとアクセルを踏み込んだ瞬間に、黄色いエンジンチェックランプが点灯してしまったのです。

それと同時にエンジンの吹け上がりが重くなり、楽しみにしていたスーパーチャージャーの音も鈍く感じられたといいます。急いで安全な路肩に車を止め、販売店へ連絡して診てもらうことになりました。

数日後に出た診断結果は、スーパーチャージャーのプーリー劣化によるベルトの滑りでした。交換や調整を含めて約20万円の修理費がかかると告げられます。70万円で買った車でいきなり20万円の出費がかさみ、彼は「購入判断を間違えたのではないか」と深く落ち込んだそうです。それでも、これが古い輸入車と付き合うということなのかもしれないと少しずつ現実を受け入れ、直して乗り続ける覚悟を決めました。

「次こそ最後」の期待は外れ続け、膨らんでいく修理代と愛着

痛い出費でしたが、最初の修理を終えて本来の走りを取り戻したことで、「これで悪い部分は直った。しばらくは安心して走れるだろう」と胸を撫で下ろしていたそうです。

しかし、そのささやかな期待は、2か月後の猛暑日に再び打ち砕かれます。エアコンをつけて走っていると水温計が上昇し、またしても警告灯が点灯したため、レッカーで運ばれる事態になってしまったのです。原因はウォーターポンプの故障で、さらに約15万円の修理費がかかりました。

最初のトラブルでは青ざめていたAさんですが、2回目となると驚きよりも先に、「今度はそこか」という苦笑いが漏れてしまったと振り返ります。その後も試練は途切れることなく続き、エアコンコンプレッサーの交換に約8万円、フロントサスペンションアームの交換に約6万円と、出費はどんどん重なっていきました。

気がつけば、主な修理費の合計は約49万円に達していました。「直すたびに完璧な状態に近づいている」と信じたい気持ちは、何度も裏切られます。それなのに不思議なことに、お金と手間をかければかけるほど、この車を手放すという選択肢は遠ざかっていったそうです。故障を繰り返すたびに、少しずつ故障への耐性と、手のかかるパートナーへの愛着が深まっていくのを感じていたと語ってくれました。

財布への負担を忘れさせてしまう、理屈を超えた走りの魅力

これほどまでに高額な修理費を支払いながらも、彼がこの車に乗り続けた最大の理由は、やはりその特有の走りの魅力にあったようです。

修理費の請求書を見るたびにため息をつき、「もう手放そうか」という思いが頭をよぎることもあったといいます。しかし、いざエンジンをかけてハンドルを握ると、その迷いは風のように吹き飛んでしまったそうです。エンジンが温まった後に響く甲高い音や、アクセルを踏んだ瞬間に空気が力へと変わるようなダイレクトな加速感は、他の車ではなかなか味わえないものだったのでしょう。

さらに、重いステアリングから伝わる路面の豊かな感触や、コンパクトなボディが機敏に向きを変える感覚は、休日の山道や深夜の空いた道で格別の楽しさを教えてくれたようです。

車の価値というものは、燃費の良さや故障の少なさといった、数字で見える経済的な指標だけで測れるものではないのかもしれません。手がかかる車だからこそ、単なる移動の道具という枠を超えて、深く向き合う存在になっていったのだと考えられます。「直してよかった」と心から思える瞬間がある限り、彼にとってそれらの出費は決して無駄ではなかったのでしょう。

新たなオーナーへのバトンタッチと、今も心の隅に残る未練

そんな愛憎入り交じる濃密な日々も、2024年に一つの区切りを迎えることになります。Aさんはついにこの愛車を手放し、車の整備を趣味として楽しむ若い男性へ譲り渡しました。

自分が幾度となく苦労した故障箇所も、新しいオーナーにとっては、愛車とじっくり向き合うための楽しい時間になり得ます。この車の少し気難しい性格をよく理解し、面白がってくれる相手に託せたことで、手放す寂しさはありつつも、安心感のほうが大きかったそうです。

手放したことで、突然の警告灯に怯える日々はなくなり、財布の状況もすっかり平穏を取り戻しました。次に車を買うときは、維持費や故障のリスクを慎重に確認するはずだと彼は笑って話します。

それでも、かつてのように駐車場で自分の車を愛おしく振り返ることは減ってしまったそうです。今でも中古車サイトで深いブルーの似たような個体を見かけると、修理履歴を確認するよりも先に、つい写真を拡大して当時の興奮を思い出してしまうといいます。財布には少し厳しい車だったかもしれませんが、それ以上に走る喜びと、忘れられない豊かな時間を与えてくれた素敵な一台だったのだと思います。



ライター:Masaki.N
自動車メーカーで車体開発エンジニアとして設計・先行開発に携わった後、マーケティング/市場リサーチ領域で商品導入・訴求設計にも従事。さらに自動車サブスク系ITベンチャーでマーケティングを担当し、ユーザー視点のコミュニケーション設計を経験。現在は自動車ライターとして、新車情報、技術解説、モデル比較、中古車相場、維持費、業界動向まで幅広く執筆。SEO記事・コラム・インタビューなど媒体横断で制作し、専門知識を生活者の言葉に翻訳して「買う/持つ」の判断を支援します。加えて、カスタムを含む実車取材・体験を通じて得た一次情報を記事に落とし込み、机上の知識にとどまらない“現場感”のある解説を強みとしています。

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