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「カゴ見りゃわかるだろ。袋いるに決まってんだろ!」若い店員を怒鳴った客。だが、列に並んだ子供の疑問で状況が一変

  • 2026.7.22

カゴいっぱいの客と、若い店員

その日、私が並んだのはいちばん奥のレジでした。夕方でどの列も詰まっていて、進むのを待つしかありません。

二人前に立っていたのは、五十代くらいの男性です。惣菜や飲み物がぎっしり積まれたカゴを、台にどんと置きました。

レジにいたのは、入って間もなさそうな若い女性店員でした。商品をひとつずつ丁寧に通していきます。

「レジ袋はいかがなさいますか」

その一言で、空気が張り詰めました。

「カゴ見りゃわかるだろ。袋いるに決まってんだろ!」

怒鳴り声でした。両隣の列の人まで、動きを止めてそちらを見ています。

「申し訳ございません。ご確認させていただく決まりになっておりまして」

「そんなもん聞かなくていいんだよ。こっちは急いでるんだ」

店員は謝りながら、何度も頭を下げます。声が震えているのが、離れた場所からでも分かるほどでした。

誰も止めに入りません。私も口を開こうとして、結局は閉じただけです。あの剣幕に向かう勇気が出ませんでした。

母親に向けた、ひとつの確認

静けさを破ったのは、後ろに並んでいた親子でした。小学生くらいの男の子が、母親の袖を引いて聞いたのです。

「ねえ、袋いりますかって、聞かなきゃいけない決まりなんでしょ」

子どもの声というのは、よく通ります。責める調子はまったくなく、教わったことをそのまま確かめただけの言い方でした。

母親も、普通に答えました。

「そうよ。お店の人は、聞かないといけないの」

「じゃあ、あの人ちゃんとしてるじゃん」

その瞬間、列のあちこちで小さくうなずく人がいました。私の前の女性も、隣の列の男性も。声を出した人はいません。

怒鳴っていた男性の肩が、目に見えて下がりました。

「……別に、そんな話は」

言いかけて、そのまま黙り込みます。後ろを振り返ろうとして、途中でやめたのが分かりました。

そこから先は、あっという間でした。男性は財布を出し、金額も確かめずに札を渡します。

袋を抱えると、足早に出口へ消えていきます。誰とも目を合わせないままでした。

男性がいなくなると、列の人が順番に声をかけました。

「大変でしたね」

「気にしなくていいですよ」

店員は目を伏せたまま、小さくお礼を言いました。私の番になったとき、私も伝えました。

「さっきのは、あの人がおかしいですから」

店員は少しだけ顔を上げて、袋を差し出しながら答えました。

「ありがとうございます。次の方にも、ちゃんとお伺いしますね」

その言い方がおかしくて、思わず笑ってしまいました。後ろでは、あの男の子が母親のカゴを一緒に持っています。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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